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ソータローのこと…74

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 何なんだよぉ~
結局宗太郎には、何もわからないままだ。
すると、かすかに部屋の隅から声がする。

「へっ?」
 宗太郎は思わず振り返る。
「何よ、ソータロー」
清子はまだ、頬を赤らめたまま、宗太郎をかえりみる。
「いや、さっき…何か聞こえた」
老人のベッドを振り返る。
「じいちゃんが?まさか」
 ははは!
もしかして、ビビッて、幻聴でも聞こえたのか?
神林君が笑う。
「驚かそうとするなら、もう少しマシなことを言えよ」
彼の声にかぶせて、細く弱々しい声が聞こえる。
「しぃっ!」
今度は清子が、神林君を押しとどめる。
「やっぱり、おじいさんよ」
目で、ベッドの方を指し示す。
「えぇっ」
 そんなの、うそだろ?
半信半疑の神林君と一緒に、ゆっくりと老人に近付いて行く。

「すまない…」
 確かに、かすれた声が聞こえる。
「えっ?なに?」
すぐに清子は、身体をかがめて、老人の顔に耳を近づける。
 うそだろ?
神林君は、まだ疑っているようだ。
おそらく、老人の意識がもう戻ってくることは、ないだろう…
勝手にそう思い込んでいたのだ。
「じいちゃん、たまーに、目を覚ますことがあるんだ」
言い訳のように、神林君が付け足す。
でも、ここ最近は、そんなことはなかったはず…
神林君はボーッとした顔で、老人の様子をチラチラとのぞき見
している。
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