御手洗さんの言うことには…

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ソータローのこと…７３

「なんだよ、それ！証拠は？証拠！」
　頭がおかしくなったのか…というくらい、笑い飛ばした後、ふいに宗太郎は、
キッパリと言い放つ。
「ショーコ？」
清子はすぅっと、紙のように青ざめる。
（何を並べられたって、信じられるものか！）
強い気持ちで、宗太郎は二人を見返す。

　神林君は少しも動揺することなく、平然とした態度で、
「証拠か？証拠は、おまえだ」
ピシャリと言い放つ。
「はっ？」
　何を言い出すんだ？
宗太郎は思わず、動揺する。
「おまえ…何を言っているんだ？
　その根拠は、何なんだ？」
神林君が、何を言っているのか、まったく理解が出来ない。
宗太郎のペースが狂う。
「何って、おまえ、本当のことを知りたいんだろ？
　だから、教えているんじゃあないかぁ」
いつもは、冷静かつクールな印象の神林君が、珍しく感情をあらわに
している。
「この際、ついでだから、もう一つ教えてやろう…
　お前の記憶がないのは、あの事件のせいだ。
　だから、証拠はお前自身なんだ」
　こんな突拍子もないことを、信じろと言われる方が無理だ。
清子はハラハラしながら、ことの顛末を見守る。
「もういいから…この話は止めよう」
神林君を見上げて言う。
「止める？
　だけど、宗太郎の方から、言ってきたんだぞ」
すっかり慎重さを欠いた彼を見つめる。
こんなになるほど…何かとんでもない秘密が、ここには隠されているのか？
そんな気がして、宗太郎は複雑な気分になった。