御手洗さんの言うことには…

７１

ソータローのこと…５０

「ヤダッ！」
　いつもは、やけに強気な清子も、この時初めて弱みをみせた。
「あれっ？ビビッているの？」
宗太郎は、ヘヘヘッと笑う。
「そんなこと、ないわよ」
すぐに言い返す。
その割りには、わずかに清子のまぶたが、ピクピクと動いている。
「神林くんは…ここで、何をしていると思う？」
宗太郎は、清子に聞いてみる。
　よりによって、何でこんな不便で、気味の悪い所に、好んで住んで
いるのだろう。
宗太郎には、理解が出来ない。
「うーん、それはやっぱり…何か目的があるんだと思う」
例えば、何かを探しているとか？
そう言いながらも、清子自身も引っかかるものを感じる。

「だけど…あのおじいさんは、ここで何をしているんだろう？」
「噂とか、聞いてない？」
清子に聞いてみるけれど、清子はただ、頭を振るばかりだ。
「あそこには近づくな、ということだけ」
もっとも、好奇心が旺盛な子供たちだ。
大人の言うことなんて、聞いていないに違いない。
「ふーん、まぁ、そうだろうなぁ」
今は、どうなんだろう？
もっとも別な意味で、近付いたら危険なんだろうけれど。
「そこに集まっていた子供たちって、今はどうしているんだろう？」
清子に聞いた瞬間、
「さぁ？案外みんな、忘れちゃっているんじゃあないの？」
神林君の声が、聞こえてきた。