御手洗さんの言うことには…

６４

ソータローのこと…４３

「そうねぇ～たぶん、ここに戻って来た時には、もうそんなことを
　言っていたわねぇ」
　目に見えない何かを、見つめるような顔つきで、清子は空を見ながら
そう言う。

（あれ？）
　宗太郎は、何か違和感を覚える。
「清子が、ここに戻って来たのって…いつ？」
「何よ、急に…」
　まさか清子は、この食い違いには気づかないのか？
「え～と、ホント、最近よ！半年くらい前？」
「えっ、そんなもの？」
宗太郎は、何事かを考えているようだ。
「何よぉ～」
まだ清子には、わからないようだ。
「だってボクは、二年前に転校して来たんだよ」
ボソッとそう言う。
「そう…私たちって、順番に帰って来たのね」
「そう」
宗太郎は、清子の表情をチラリと見る。
「で、神林君は、今年の春…」
「へぇ～私とほとんど、変わらないのね！」
清子は嬉しそうにそう言う。
「だけど、ボクは…その噂は知らない」
じぃっと清子に、視線を向けたまま、宗太郎は言う。

あら！
清子は彼を見ると、
「だって、ソータローは、あんまり人と話をしたりしないから
　なんじゃないの？」
ズバリとそう言うけれど…
それにしては、おかしい。
「清子だって、そんなに社交的でもないだろ」
「そうだけど…うちは母さんがいるから」
「あっ、そうかぁ」
主婦の井戸端会議の延長なのか。
とすると、真実かどうかは、半々だ。
（いや、怪しいもんだ）
宗太郎は、う～んと考え込む。