おかえりなさい、シンデレラ(改訂版)

おまけの物語

３

　弱々しい…羊のような声が聞こえる。
突然、「わぁ～」とさざ波のように、周りの人の歓喜の声が聞こえる。
「おめでとう！生まれましたよ！
　可愛いい女の赤ちゃんです」
先ほどの助産師さんの声が、もうろうとしていた彼女の耳元に
聞こえてくる。

　ようやく、会えるのね？
　この日が来ることを…ずっとずっと、待ちわびていたような気がする…
周りがザワザワと、にぎやかになり、先ほどとは違った、明るくてにぎやかな
空気が流れる。
さっきまで手を握っていたカスミさんの手が、フワッと離れる。
「よかったねぇ～元気な可愛い赤ちゃんだよ」
鼻声でそう言うと…嬉しそうにエラの肩を、軽く触れた。
　エラはかろうじて、力を振り絞ると、生まれたばかりの我が子を見ようと
首を持ち上げる。
ようやく目の前に、差し出された我が子は…
御世辞にも、可愛いわけではなかったし、小さくて、ぐにゃぐにゃの真っ赤な
肉の塊だったけれども…
（生まれたては、よくサルのようだ、と言われるけれど）
それでも一瞬、自分と目が合ったような気がした。
その瞳を見た瞬間、彼女は何かに気が付いたのだった。

　そうか、この子はきっと、もう1人の私なんだ。
　この子はもっと、色んなものを見て、色んな経験をするだろう…
　この子が大きくなったら、いつか…
　この不思議なシンデレラの物語を、話して聞かせてあげよう…と。


　あなたは、知っているだろうか？
あのシンデレラの物語には、もう１つの物語があった、ということを…
舞踏会の後のシンデレラを。
そしてその後のシンデレラは、実は…
入れ替わっていた、ということを。


　これは、秘密の物語。
　誰も知らない物語。
　あなたの側にもきっと、
　シンデレラは、いるのかもしれない…