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おまけの物語
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「さぁ、お母さん!
あと、もう少しですよぉ」
足元で、助産師さんの声がする。
まさか、本当にこんな日が来るとは、思わなかった…
ようやく彼女は、覚悟を決める。
あの不思議な日々から、数年が立ち…
今度は、未知の体験をするのだ。
夜中に産気づき、あたふたと荷物を準備して…
バタバタとしているうちに、
(実はまだ、母親としての心がまえが、何一つ出来ていない、というのに…)
ついに、この瞬間を迎えてしまったのだ。
「大丈夫!私がついているからね!」
母親がいない、という彼女のために…
出産未経験で、しかもまだ独身のカスミさんが、自ら名乗り出てくれて、
なぜか彼女の手を握っている。
「安心して!
私、姪も甥も、ちゃんと育てたことがあるから!」
力づけるために、そう言うけれど…
産むのと、実家でたまにお世話をするのとでは、まったく意味が違う…
さすがの彼女も、そう思う。
だけども陣痛の痛みの前では、そんなことなどかまってはいられない。
口にする余裕さえないのだ。
「声を出したらダメ!
ほら、息を吐いて!」
早速助産師さんの声が飛ぶ。
「ほら、ひっ、ひっ、ふー!」
彼女の声に合わせて、カスミさんも一緒になって、
「ひっ、ひっ、ふー!」と息を吐く。
「なんだか、一緒に産むみたい。
私まで、お腹が痛くなってきたぁ」
カスミさんが笑いながら、そうもらすけれど。
次第に意識が、遠のいて来る彼女には、もう笑う気力すら残ってはいない。
あれからこの人には、とても助けられた。
いきなり現れた、この見知らぬ女の子を受け入れて、世話をして…
ついには新しい家族まで、見つける手助けをしてくれたのだ。
(とはいえ、出会う順番としては、彼の方が先だったのだけども)
「あのぉ~タクトは?」
ほんの少し痛みが遠のくと、ようやく彼女は、カスミさんに声をかける。
カスミさんは、ふぅ~と息を吐くと、
「あぁ、新米のパパさん?
今頃 待合室で、クマのようにウロウロしているわ」
そう言って、クスクス笑う。
「そう」
よかった…
本当いうと、彼は立ち合い出産をしたい、と言っていたのだが、
分娩台を見た瞬間、何かを察したのか、急に顔が真っ青になり、
ひっくり返ったのだ。
(まだ、始まってもいないのに?)
思わずあきれてしまう彼女だ…
あと、もう少しですよぉ」
足元で、助産師さんの声がする。
まさか、本当にこんな日が来るとは、思わなかった…
ようやく彼女は、覚悟を決める。
あの不思議な日々から、数年が立ち…
今度は、未知の体験をするのだ。
夜中に産気づき、あたふたと荷物を準備して…
バタバタとしているうちに、
(実はまだ、母親としての心がまえが、何一つ出来ていない、というのに…)
ついに、この瞬間を迎えてしまったのだ。
「大丈夫!私がついているからね!」
母親がいない、という彼女のために…
出産未経験で、しかもまだ独身のカスミさんが、自ら名乗り出てくれて、
なぜか彼女の手を握っている。
「安心して!
私、姪も甥も、ちゃんと育てたことがあるから!」
力づけるために、そう言うけれど…
産むのと、実家でたまにお世話をするのとでは、まったく意味が違う…
さすがの彼女も、そう思う。
だけども陣痛の痛みの前では、そんなことなどかまってはいられない。
口にする余裕さえないのだ。
「声を出したらダメ!
ほら、息を吐いて!」
早速助産師さんの声が飛ぶ。
「ほら、ひっ、ひっ、ふー!」
彼女の声に合わせて、カスミさんも一緒になって、
「ひっ、ひっ、ふー!」と息を吐く。
「なんだか、一緒に産むみたい。
私まで、お腹が痛くなってきたぁ」
カスミさんが笑いながら、そうもらすけれど。
次第に意識が、遠のいて来る彼女には、もう笑う気力すら残ってはいない。
あれからこの人には、とても助けられた。
いきなり現れた、この見知らぬ女の子を受け入れて、世話をして…
ついには新しい家族まで、見つける手助けをしてくれたのだ。
(とはいえ、出会う順番としては、彼の方が先だったのだけども)
「あのぉ~タクトは?」
ほんの少し痛みが遠のくと、ようやく彼女は、カスミさんに声をかける。
カスミさんは、ふぅ~と息を吐くと、
「あぁ、新米のパパさん?
今頃 待合室で、クマのようにウロウロしているわ」
そう言って、クスクス笑う。
「そう」
よかった…
本当いうと、彼は立ち合い出産をしたい、と言っていたのだが、
分娩台を見た瞬間、何かを察したのか、急に顔が真っ青になり、
ひっくり返ったのだ。
(まだ、始まってもいないのに?)
思わずあきれてしまう彼女だ…
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