おかえりなさい、シンデレラ(改訂版)

第22章 最後の選択

２

　あわててハンカチの包みをとくと、中からコロリ…と、何かが
その姿を現す。
ハンカチの結び目から、まぶしい光が漏れて来る。
まさか、熱を発しているのだろうか？
だがさわってみても、少しも熱くはない。
まるで光の光源が、この中にあるかのように、まぶしい光を放っている。

「エラは、選択しました。
　あなたは、どうしますか？」
今度はハッキリと、声が聞こえる。
少し年老いた女性の声だ。
　いきなり、なんのこと？
　選択って…なにを？
信子は頭をかしげる。
（約束って、なんだっけ？）
とっさのことに、頭の中が真っ白で、何も思い浮かばない。
（何か…約束を、したっけ？）
　この世界に戻って来て、信子が今までしたことといえば、
弟のジュンヤに会ったことと、
この靴を見つけたこと。
カスミさんと、一緒に暮していることぐらいだ。

「これが、最後のチャンスです。
　あなたが、このままここで暮らしたい、と言うのなら…
　そのままでもいい。
　でもあなたがもしも、別の選択をするというのなら…
　このガラスの靴を履きなさい」
　声はするものの…魔法使いの姿は、どこにもない。
ただ声だけが、この靴を通して、信子の頭の中に、直接響いているようだ。
　そういえば、そんなことを聞いたことがある…と、信子はようやく
思いだしていた。
　この世界に戻って来る前に、おとぎの国の別荘で、怖い女の人が自分に
つかみかかってきて、魔法使いのおばあさんが、何かを言っていたような
気がする…

「さぁ、選びなさい！
　あなたは、どうしますか？」
　声は少しせっかちに、信子の答えを迫っている。
ここ数日…確かに考えていたことではあった。
　あれからもう、1か月の月日がたったのか？
信子はひどく驚いていた。
「あなたの意志にまかせます。
　好きな方を選びなさい」
さらに魔法使いの声が、信子の選択をうながしていた。