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第20章 森の奥

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 ここかぁ~
アナスタシアは、軽く息を吐く。
先ほどまでのドライブ気分は、どこかに消え…
本来の目的である、母親の捜索を思い出す。
ハンスはその間、手近の木に手綱をくくりつけると、彼女の傍らに
近付いた。

 ようやく別荘にたどり着いたものの、どこを探せばいいものか、
まったくわからない。
そうしてあの男も、その辺は何も言わない。
何か、ヒントは?
無言の男を問い詰めるような目付きで、彼女は凝視すると、
男は全く平然として、余裕の表情で2人を見比べる。
「オレが知ってるのは…ここまでだ!」
澄ました顔で、スッと右手を差し出す。
何なの?と彼女は幾分ムッとしていると、ハンスが
「またかぁ」とつぶやき、ポケットに手を突っ込む。
「えっ」
あわててその手を、アナスタシアが押さえると、男はそれをジロリと見る。
「おいおい!ここまで、案内しただろ?」
非難するように、声を上げる。

 すると背後の茂みが揺れ、ガサッと枯れ葉を踏みしめる音がする。
「おまえたち…ここで、何をしている!」
突然鋭い声が、背後の茂みの方から聞こえてきた。
 ビクッと、アナスタシアは立ち止まる。
おそるおそる声が聞こえる方に、振り向くと…
そこにはスラリと背が高く、立派な服をまとった、
端正な顔立ちの男が、腰に手を当てて、こちらを向いていた。
今にも、腰にぶら下げている剣を、抜きそうな勢いで、
目を光らせている。
その気配が、あまりにもスキがなくて、むしろ殺気すら感じる… 
 もしかしてこの人は、王子様のお付きの人なのか…と、
彼女は青ざめたまま、立ち尽くしている。
同じようにハンスも、顏を蒼白にして、腰を抜かさんばかりに、怯えていた。
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