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第18章 パン屋の王子様

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 男は彼の顔色に気が付くと、ニヤリと口元をゆがませると、
「おやおやぁ~彼氏がやきもち、妬いてるよ」
からかうように言って、笑う。
「あっ」
あわてて彼女は、手を引っ込めると、一瞬男はその手をギュッと
つかんだ。
「いけないなぁ~女の子が、こんな怪しい男に、声なんかかけちゃあ」
ヘラリと笑うけれども、ハンスの目線に気が付くと
「おっと、いけない!なんだったっけぇ?」
笑ってごまかそうとする。

 明らかに、様子がおかしいのだが、ここでひるむわけにはいかない。
「母さんが…どこにいるのか、教えてください」
それでもすがり付くように…
アナスタシアは目をうるませて、男を見上げる。
「おやおや、そんな顔をしてぇ~いけないなぁ」
それでも男はからかうように、目を光らせて、彼女を見ると…
ちょっともったいぶった顔つきになる。
「そうだなぁ~王子の別荘ならば…この森を抜けた所にあるよ」
と言うと、クルリと振り返る。
「連れて行ってあげようか?」と、彼女を見つめる。
 するとハンスがあわてて、彼女の隣りに立つ。
「案内してください。
 後をついて行きますから」
自分の荷馬車を指差した。
「あぁ~なるほど」
男はヘラリと笑う。

 彼女は急に、自分の乗って来た馬車が、恥ずかしくなってきた。
ところがハンスは、そんな彼女の気持ちなど、まったく気づく様子がない。
「お礼は後で…」
男に向かって、ハッキリと言う。
すると男は、鼻をフンと鳴らすと
「そんなもの、いらないよ。
 ただの道案内だから」
眉間にシワを寄せて、自分の馬車に近付いて行った。
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