おかえりなさい、シンデレラ(改訂版)

第17章 水晶玉の向こうから…

１１

　少年は、淡々とした表情で信子を見ると、
「それは来ますよぉ～
　あなたの大切な人が、ここへ来ますよ、と言われたら」
当たり前でしょ、と言わんばかりに、キッパリと言う。
「それって、夢枕なんでしょ？」
それでも思わず、信子が口を挟むと、
「そう、夢枕」
魔法使いも、真面目な顔でうなづく。
　少年は困ったように、こちらを向くと…
「だけど、夢かと思って朝起きたら…
　枕元に、手紙があったんですよ」
当惑した顔でそう言うと、信子の方に視線を走らせる。
「そうかぁ～信じてくれたんだね」
魔法使いは満足そうな顔をして、大きくうなづく。

　男の子は、昨日とまったく同じ服装で、（水晶に映っていた彼と）
信子たちの方へ近付いて来る。
（よかった！とても元気そう）
ぱっとその姿を見て取ると、思わずホッと息を吐く信子だ。
「ここへは、1人で来たの？」
思わず声をかける。
すると男の子は、まだ警戒するように、信子をじぃっと観察する。
「ね、私のこと、わかる？」
だが少年の表情をうかがうと、ひどくガッカリとした気持ちで、
少年に向かって問いかける。
男の子はけげんな顔をして、信子と目を合わせると、
少し頭をかしげた。
（やはり、わからないのかぁ）
ひどくがっかりしていると、
「ジュンヤくん、この人は…あなたの探している人よ」
確信を持った目をして、魔法使いはさらに少年に近付く。

　せっかく会えた、というのに…
当の本人に、思い出してもらえないとは！
これがマンガとか、ドラマだったのならば、顏を見合わせた途端に、
魔法が解けて、記憶を取り戻し、涙、涙の再会になるはずなのに…
だけども実際のところは、当の本人がボゥッとした顔のままで、
「あれ？ボク、なんでこんな所にいるんだろう？」
そうつぶやくのだった。