おかえりなさい、シンデレラ(改訂版)

第17章 水晶玉の向こうから…

１０

　まるで、夢の中に入り込んだみたい…
信子は思わず、目を見張る。
昨晩、水晶の中で見かけた男の子が、目の前に現れた…
そんな錯覚を覚えていた。

　もっとも彼と分かれ分かれになったのが、（信じられないのだけれど）
ほんの数日前のことなのだ。
（大体、一週間くらい前のことか）
なのでとてつもなく変化するわけでもないのに、
なぜだかこの男の子が、とてもしっかりとして、たくましく育ったように、
信子には見えていた。
（あの子が本当に、あのジュンヤ？）
　自分の後ろを、いつも追いかけていた、あの幼い弟は、どこに？
信子は不思議に思う。
もっとも彼はまだ、小学生なので、いきなり大人になったわけではない
のだけれど…
それでも何だか、とてもまぶしいものを見ているような、そんな思いに
駆られていた。
　すぐにでも、彼に駆け寄りたい！
　声をかけたい！
本能的に、信子はそう思う。
勢いにまかせて、スタッと立ち上がり、まだ自分に気付いていない様子の
男の子に向かって、思いっきり手を振った。

　気配を感じて、ようやく男の子は、彼女に気付いたようだ。
目が合うと、ふいに恥ずかしそうな表情を浮かべて、こちらを見る。
「よく来てくれたわね！ありがとう」
たまらず信子は、大きな声で少年に話しかける。
「本当に来たんだ！」
少年は大きな目を見開いて、信子を見つめる。
「なんで？来ないとでも、思ったの？」
柔らかな微笑みを浮かべると、信子は出来るだけ優しく、彼を見つめ返す。
「だって、夢なのかと思った…」
思わずジュンヤがそうもらすので、
（ほぉら、やっぱり！）
信子は、魔法使いのおばあさんの方を、振り返る。

　見つめ合う信子と弟の姿を、魔法使いのおばあさんは、ニヤニヤしながら
見守っている。
「ここが、わかったのね？」
嬉しそうに、顏をほころばせた。