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第17章 水晶玉の向こうから…
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「やっぱり、夢じゃあなかったんだぁ」
思わず信子がつぶやくと…
魔法使いはフン、と胸をそらす。
「私は、約束を必ず守る人間ですからね!」
何だか得意そうに、そううそぶくと、今度はポケットから杖を取りだす。
(やはりこのポケット、一体どうなっているの?)
驚いた顔で、信子はまた魔法使いをしげしげと見つめる。
一見すると、ただの木の枝で出来ていて、タネも仕掛けもなさそうだ。
折り畳み式とか、マジックのステッキでもなくて、引っ張ると
伸び縮みするような物でもなさそうだ。
その不思議なポケットと、杖を見比べていると、
魔法使いが傍らに立ち、
「あなたに会うために、待たせてあるのよ」
そう嬉しそうに言う。
「だれが?」
はやる胸を押さえると、信子はお次はなに、と目を光らせる。
「あら」
魔法使いは信子を見返すと
「決まってるじゃない」と笑う。
「わかってるでしょ?
あなたのとっても大切な…弟よ!」
その時ようやく、その人の名前が頭に浮かんだ。
「もしかして…ジュンヤ?」
口にした途端、急に弟の顏を思い出す。
まるで禁断の…パンドラの箱を開いたかのように、記憶がゆっくりと
こぼれ落ちてくるのを感じた。
「そうそう、わかっているじゃないの」
自分でも、ひどく驚いていた。
なんでこんな大切なことを、すっかりと忘れていたのだろう…と。
母親を亡くしてからも、ずっと弟と2人で生きてきた。
(もちろん、父親もいたけれど…)
いつも浴びるように酒を飲み、日常的に暴力をふるっていた父親。
それは忘れてしまいたい、過去だったのだ…
そんなことを思っていると、まるで信子の心の内を見透かすように、
魔法使いがポンと信子の肩に手を触れる。
「さぁ、大切な人が待っているわよ!行きましょ」
信子の肩を抱いた。
うながされるまま、信子はエプロンを手に取ると、
(たまたまカスミさんが、使っているものを見付けたのだ)
台所の椅子にひょいと引っかけた。
思わず信子がつぶやくと…
魔法使いはフン、と胸をそらす。
「私は、約束を必ず守る人間ですからね!」
何だか得意そうに、そううそぶくと、今度はポケットから杖を取りだす。
(やはりこのポケット、一体どうなっているの?)
驚いた顔で、信子はまた魔法使いをしげしげと見つめる。
一見すると、ただの木の枝で出来ていて、タネも仕掛けもなさそうだ。
折り畳み式とか、マジックのステッキでもなくて、引っ張ると
伸び縮みするような物でもなさそうだ。
その不思議なポケットと、杖を見比べていると、
魔法使いが傍らに立ち、
「あなたに会うために、待たせてあるのよ」
そう嬉しそうに言う。
「だれが?」
はやる胸を押さえると、信子はお次はなに、と目を光らせる。
「あら」
魔法使いは信子を見返すと
「決まってるじゃない」と笑う。
「わかってるでしょ?
あなたのとっても大切な…弟よ!」
その時ようやく、その人の名前が頭に浮かんだ。
「もしかして…ジュンヤ?」
口にした途端、急に弟の顏を思い出す。
まるで禁断の…パンドラの箱を開いたかのように、記憶がゆっくりと
こぼれ落ちてくるのを感じた。
「そうそう、わかっているじゃないの」
自分でも、ひどく驚いていた。
なんでこんな大切なことを、すっかりと忘れていたのだろう…と。
母親を亡くしてからも、ずっと弟と2人で生きてきた。
(もちろん、父親もいたけれど…)
いつも浴びるように酒を飲み、日常的に暴力をふるっていた父親。
それは忘れてしまいたい、過去だったのだ…
そんなことを思っていると、まるで信子の心の内を見透かすように、
魔法使いがポンと信子の肩に手を触れる。
「さぁ、大切な人が待っているわよ!行きましょ」
信子の肩を抱いた。
うながされるまま、信子はエプロンを手に取ると、
(たまたまカスミさんが、使っているものを見付けたのだ)
台所の椅子にひょいと引っかけた。
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