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第17章 水晶玉の向こうから…

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「いいんですか?」
 昨夜は遅くまで起きていたので、信子は眠たそうにアクビを
していると…
「まだ、ゆっくりしてていいのに」
カスミさんが笑う。
「ねぇ、夕べは眠れた?」
ふいに信子に聞く。
まさか起きていたのか…
ちょっとドキリとしていると…
「何かひとり言、言ってたみたいだから…」
気を遣うように、チラリと信子の方に視線を向けた。
(もしかして…魔法使いのおばあさんと話しているの、聞かれた?)
内心あわてる。
けれどもカスミさんは、信子の異変に気付かないようで、
「もっとも何をしゃべっているのかは、よく聞こえなかったんだけどね」
あっさりと言うので、信子は心底ホッとするのだった。
「そうなんですぅ~中々眠れなくてぇ」
甘えるような口調で言うと、
「あら、枕が変わったら、眠れないタイプ?」
のんきな顔で言う。
「いいえ、そんなこと、ないです!」
自分でも、何を言っているのか、わからないけれど…
何だか、申し訳なく思う。

「せめて、ご飯を作らせてください。
 晩御飯…何が食べたいですか?」
 信子にとって、家事はお手の物…
何しろ小学生の頃から、日常的に家の雑事はしてきたので、少しも
苦ではないのだ。
それよりも…何もしないでおいてもらうのは、心苦しいとさえ思う。
「あら、いいのよ!気を使わないで」
だけどもカスミさんにとっても、まさか中学生の女の子に、
家事をさせるなど、もってのほかだ。
大人にして、保護者の代わりとして、未成年の女の子を守らないと
いけない。
「大丈夫よ」
にこやかにそう言うと、信子は逆に信じてもらえないか、と勘違い
をして、
「でも、こう見えても私、料理が得意なんですよ」
せめてお礼にそれくらいは…と言い出す。
すると急に、昨日のことを思い出す…
昨夜、魔法使いの水晶に映っていた、自分の弟が…
今頃、何を食べているのだろう…と。
ひどく気になってきたのだ。


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