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第16章 リターン、まさかの再会
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とてもおおらかな顔の王子のひと言に…エラはこの時初めて、
張りつめていた自分の気持ちが、和らぐのを感じた。
(ここはまるで…あの森の中の自分の家と、似ているなぁ)
エラはふと思う。
お父さんとお母さんと、幼い頃に一緒に過ごしたあの家…
2人が亡くなってから、すっかり継母と姉たちに、占領されてしまったけれど…
自分はあの家のことが、本当は大好きだった。
そう思い出すと、思わず目の奥から、涙が湧きあがってくるのを感じていた。
黙ったまま、じぃっと窓の外を見ているエラに気が付いて、王子は側に
近づいて来た。
「大丈夫?何かあった?」
そう声をかけるけれど…無理に何があったのか…と、聞き出そうとはしないので、
心から、エラは感謝をするのだった。
エラは静かに頭を振ると、
「何でもないんです。
昔住んでいた家に、何となく似ているなぁ~って」
そう言うと、ジワジワと何か暖かいものが、こみ上げてくるのを感じていた。
春の野原を、母親と歩き回ったこととか、
お花をつみに森の奥に行って、迷ったこととか…
川で洗濯をしている時に、足を浸していたら、足元に小さな魚が泳いできたこととか…
そんなたわいもないことが、一気にぶわ~っと頭の中に、あふれ出るようにして、
浮かび上がってきた。
確かに、母さんが亡くなった時は、寂しかったけれども、
自分の生活が、180度変わったけれども。
確かに自分が愛されていた、ということを…
あらためて、思い出したのだった。
そうして思い出に浸っていると、じわじわと暖かな気持ちに、満たされたのだった。
「キミを育ててくれた、お父さん、お母さんに、あらためて感謝するよ」
さり気なく王子はそう言うと、エラをじぃっと見詰めた。
張りつめていた自分の気持ちが、和らぐのを感じた。
(ここはまるで…あの森の中の自分の家と、似ているなぁ)
エラはふと思う。
お父さんとお母さんと、幼い頃に一緒に過ごしたあの家…
2人が亡くなってから、すっかり継母と姉たちに、占領されてしまったけれど…
自分はあの家のことが、本当は大好きだった。
そう思い出すと、思わず目の奥から、涙が湧きあがってくるのを感じていた。
黙ったまま、じぃっと窓の外を見ているエラに気が付いて、王子は側に
近づいて来た。
「大丈夫?何かあった?」
そう声をかけるけれど…無理に何があったのか…と、聞き出そうとはしないので、
心から、エラは感謝をするのだった。
エラは静かに頭を振ると、
「何でもないんです。
昔住んでいた家に、何となく似ているなぁ~って」
そう言うと、ジワジワと何か暖かいものが、こみ上げてくるのを感じていた。
春の野原を、母親と歩き回ったこととか、
お花をつみに森の奥に行って、迷ったこととか…
川で洗濯をしている時に、足を浸していたら、足元に小さな魚が泳いできたこととか…
そんなたわいもないことが、一気にぶわ~っと頭の中に、あふれ出るようにして、
浮かび上がってきた。
確かに、母さんが亡くなった時は、寂しかったけれども、
自分の生活が、180度変わったけれども。
確かに自分が愛されていた、ということを…
あらためて、思い出したのだった。
そうして思い出に浸っていると、じわじわと暖かな気持ちに、満たされたのだった。
「キミを育ててくれた、お父さん、お母さんに、あらためて感謝するよ」
さり気なく王子はそう言うと、エラをじぃっと見詰めた。
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