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第15章 ラストチャンスは突然に?

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 やはりこの人は、ただ者じゃない…
まとう気配にスキがなく、光る視線を向けられると、それだけで…
思わず信子は、うなづかざるを得なくなってしまう…
「もしも、もう1度、おとぎの国に戻りたくなったとしたら、
 あの靴を履くというのは、どうかしら?
 そうしたらきっと…あなたを導いてくれるはずよ」
魔法使いがそう言うと、
「忘れないでね」と言い切った。

 なんのこと?
信子は、わけがわからない。
けれども、あの靴、どうしただろう…
急に気になる信子だ。
「あっ、待って!
 私の家が、どこにあるのか、知りませんか?」
杖を手に取り、今にも姿を消しそうなその黒い後ろ姿に向かって、
信子はあわてて声をかける。
「あなたの家?」
キョトンとした顔で、魔法使いのおばあさんは、信子を見つめる。
「あ、あぁ~
 もしかして…弟さんに、会いたいのね?」
いきなりポンと言うので、信子はギョッとして、思わず飛び込みそうなくらい、
身を乗り出す。
「そう、それです!
 あの子は今…どこで、どうしているのですか?」
 いきなり記憶のフタがこじ開けられるように…
急に弟への思いが、あふれてくる。

 そう、それだ、弟だ!
 あの子は今、どこにいるのだろう?
どっと堰を切ったように、思いがあふれ出してきて、信子もろとも
飲み込まれそうになる。
こんなに気になるのに、どうして何も、思い出せないのだろう?
 1人うつむく信子を見て、
「気になるのね?」
ふぅ~とため息をついて言う。
するとおばあさんの口調が、グッと砕けて、優しくなる。
コクンと信子がうなづく。
夢の中に出て来た、あの少年が…
おそらくは、弟なのだ。
 すると魔法使いは、杖を握り直すと
「いい?じゃあ、これを見て」
いつの間に、取り出したのか
(というか、今までどこに隠していたのか、というくらいにスムーズに)
手の平に、水晶の玉を乗せた。
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