上 下
147 / 250
第15章 ラストチャンスは突然に?

   3

しおりを挟む
「さっきの男の人と、結婚しないんですか?」
 何となく気になって、信子が思わずカスミさんに聞く。
「えっ」
彼女は言葉を詰まらせる。
「そんなこと…あるわけがないじゃない!」
すぐさま否定する。
だが…カスミさんは、うろたえたように、目を泳がせて、
頬を真っ赤に染める。
(やっぱり…大人の事情って、よくわかんないなぁ~)
信子には、お手上げだ。

 あんなにお似合いの2人なのに…と思うけれども、
どうやらそうではなさそうだ。
その間にもカスミさんは、窓を開けて、空気を入れ替えたり、
押入れの中をのぞき込んで、布団を出したり、パタパタと
忙しそうに動き回る。
「めったにないけどね、両親が来た時に、泊まる部屋がないと、
 不便でしょ?」
言い訳をするように、ヘラリと笑う。
「私のことは、気にしないでね!
 適当に使ってくれて、いいからね!」
クローゼットからシーツを取り出し、布団にふわっとかける。
「なんだか、うれしいな!
 また…おしゃべり相手が出来て!」
おそらく気を使ってくれているのだろうが、とても楽しそうに
そう言う。
それを聞くと、何だか信子まで、嬉しくなってしまう。
まるでテレビで見るような、ルームシェア(といっても、アパートの
一室だけれど)しているようで、とても楽しみだ。
(だけど早く、行き先を見付けなくちゃ!)
すぐにそう思うけれど…
もう少しこのまま、ここにいてもいいかなぁ~などと、チラリと
思ってしまう。

 そんな信子の心を読むように、カスミさんは信子を見つめると
「好きなだけ、ゆっくりしていいからね!
 明日…私は仕事に出かけるけど、逆にお留守番してくれると、
 ありがたいかも!」
そう言うと、「ちょっと待ってね!」と言いおいて、敷居で区切られた
だけの、隣の部屋に向かった。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ぼくは悪のもふもふ、略して悪もふ!! 〜今日もみんなを怖がらせちゃうぞ!!〜

ありぽん
ファンタジー
恐ろしい魔獣達が住む森の中。 その森に住むブラックタイガー(黒い虎のような魔獣)の家族に、新しい家族が加わった。 名前はノエル。 彼は他のブラックタイガーの子供達よりも小さく、 家族はハラハラしながら子育てをしていたが。 家族の心配をよそに、家族に守られ愛され育ったノエルは、 小さいものの、元気に成長し3歳に。 そんなノエルが今頑張っていることは? 強く恐ろしいと人間達が恐れる、お父さんお母さんそして兄のような、 かっこいいブラックタイガーになること。 かっこいいブラックタイガーになるため、今日もノエルは修行に励む? 『どうだ!! こわいだろう!! ぼくはあくなんだぞ!! あくのもふもふ、あくもふなんだぞ!!』

研磨職人!異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依
ファンタジー
主人公である小野田博俊(おのだひろとし)は女神ミーレヌのせいで死んでしまい、 異世界であるミストラルに転移してもらう。  そこには研磨という職業は無く、博俊は研磨でお店を開き、魔法と掛け合わせて 楽しく儲けて生活する物語。  研磨で新しい効果を生み出し、時には笑い時には悲しみありの長編小説。に、 したいとおもいます(*^-^*)

【完結】私を虐げる姉が今の婚約者はいらないと押し付けてきましたが、とても優しい殿方で幸せです 〜それはそれとして、家族に復讐はします〜

ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
侯爵家の令嬢であるシエルは、愛人との間に生まれたせいで、父や義母、異母姉妹から酷い仕打ちをされる生活を送っていた。 そんなシエルには婚約者がいた。まるで本物の兄のように仲良くしていたが、ある日突然彼は亡くなってしまった。 悲しみに暮れるシエル。そこに姉のアイシャがやってきて、とんでもない発言をした。 「ワタクシ、とある殿方と真実の愛に目覚めましたの。だから、今ワタクシが婚約している殿方との結婚を、あなたに代わりに受けさせてあげますわ」 こうしてシエルは、必死の抗議も虚しく、身勝手な理由で、新しい婚約者の元に向かうこととなった……横暴で散々虐げてきた家族に、復讐を誓いながら。 新しい婚約者は、社交界でとても恐れられている相手。うまくやっていけるのかと不安に思っていたが、なぜかとても溺愛されはじめて……!? ⭐︎全三十九話、すでに完結まで予約投稿済みです。11/12 HOTランキング一位ありがとうございます!⭐︎

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

転生少女の異世界のんびり生活 ~飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい~

明里 和樹
ファンタジー
日本人として生きた記憶を持つ、とあるご飯屋さんの娘デリシャ。この中世ヨーロッパ風ファンタジーな異世界で、なんとかおいしいごはんを作ろうとがんばる、そんな彼女のほのぼのとした日常のお話。

美しくも残酷な世界に花嫁(仮)として召喚されたようです~酒好きアラサーは食糧難の世界で庭を育てて煩悩のままに生活する

くみたろう
ファンタジー
いつもと変わらない日常が一変するのをただの会社員である芽依はその身をもって知った。 世界が違った、価値観が違った、常識が違った、何もかもが違った。 意味がわからなかったが悲観はしなかった。 花嫁だと言われ、その甘い香りが人外者を狂わすと言われても、芽依の周りは優しさに包まれている。 そばに居るのは巨大な蟻で、いつも優しく格好良く守ってくれる。 奴隷となった大好きな二人は本心から芽依を愛して側にいてくれる。 麗しい領主やその周りの人外者達も、話を聞いてくれる。 周りは酷く残酷な世界だけれども、芽依はたまにセクハラをして齧りつきながら穏やかに心を育み生きていく。 それはこの美しく清廉で、残酷でいておぞましい御伽噺の世界の中でも慈しみ育む人外者達や異世界の人間が芽依を育て守ってくれる。 お互いの常識や考えを擦り合わせ歩み寄り、等価交換を基盤とした世界の中で、優しさを育てて自分の居場所作りに励む。 全ては幸せな気持ちで大好きなお酒を飲む為であり、素敵な酒のつまみを開発する日々を送るためだ。

【完結】騙し打ちみたいで、その婚約は怒りますよ!〜両方の父親が勝手に出した婚約届け〜

BBやっこ
恋愛
男女の関係は、難しいと言うものの 急速に進むこともあるらしい。 今回は両方の父親の婚約者の届け出だけど。 想像、いや妄想していたあれこれをすっ飛ばし婚約へ? もっと恋人の時間を楽しみたかった、相手は彼で良いのだけどロマンチック不足が不満! 私が怒り出したのを恋人が、いや婚約者が諌める方法は…そして、家族は?

処理中です...