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第14章 チェンジ!

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 そんなことを、あれこれと思っているとは露知らず…
この2人の男女は、時折 信子が自分たちの後をついて来ているかどうか、
確かめながらも、前を歩いている。
「あなたねぇ~どうするの?
 これから、あてはあるの?
やっぱり信子のことが気になるのか、大きな声で信子に聞く。
信子は「うーん」と考え込む。
何しろ何の覚悟もなく、(自分の意志とも関係なく)
ここへ飛ばされてきたのだから…
しいて言えば、この世界にいるはずの、自分の家族かなぁ~とボンヤリと
思う。
残念ながら、ここに至ってもまだ、自分の家がどこにあるのかさえ、
思い出せないでいる。
さらには、思い出せない特別な理由でも、あるのでは…とも思うのだ。
 自分のことながら、ひどくもどかしく、まるで自分の頭の中に、
砂でも詰まっているのではないか、とも思うのだ。
それでもどうにか、自分の可愛い弟のうっすらとシルエットが
脳裏に浮かぶくらいなのだが…
その弟に会いたいと思ったのだ。
「まだ、思い出せないの?」
再び カスミさんの声が響いてきた。


「おい!そんなに次々と言うなよ!
 かわいそうだろ?」
 何と答えたらいいの?
それがわからずに、黙った信子を気遣って、連れであるシューヘイが
すかさずカスミさんを遮った。
「優しいなぁ」
思わず信子はつぶやく。
 さらには、こんなにも優しくされたのは…何だか久しぶりな気がする。
「ごめんなさい」
ふと声が漏れる
「私みたいな、どこの馬の骨か、わからない者を、拾ってくれて…」
うつむきかげんで、ボソッと小さな声でそう言った。

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