おかえりなさい、シンデレラ(改訂版)

第14章 チェンジ！

７

　するとピタリと2人の男女が足を止めると、クルリと振り向いた。
「そうなんだけど…このまんまじゃあ、夜になってしまうから…
　準備をして、また出直すわ」
ニッコリと、ユリカさんが微笑む。
「じゃあ、あなた…本当に見かけなかったのね？」
ユリカさんは、真剣な顔で、信子に向かって声をかける。
一同の視線が一斉に、こちらに向けられるので、
まさか自分と入れ違いに、姿を消しました、などとは、さすがの
信子は口には出来ず…黙って、コクリとうなづいた。
「そう…なら、しかたがないわねぇ」
寂しそうに、ユリカさんは微笑む。
「あとは、捜索願いを出すしかないのかしら…」
ふとつぶやくと、
「でも、私…名前を知らないのよねぇ」と、ポツリと言った。
「そうですかぁ～それは、困りましたねぇ」
カスミさんも、他人事とは思えない様子でうなづく。
　信子もまさか…ここを探しても、何も出てきませんよ…
とはいえないので、神妙な顔でうなづいた。

　何かあったら、また連絡を取り合いましょう…と、カスミさんたちは、
ＩＤの交換を隅の方でしているようだった。
「あなたも、lineするの？」とカスミさんが聞く。
「そう、line！スマホ、持ってる？」
「スマホ？」
「えっ、スマホ、知らないの？」
「あ、いえ、知ってます」
「それよ！」
そう言われても…信子は困った顔でうつむく。
「だから、携帯…持ってるの？」
「いえ」
ガラケーは、以前持っていたけれど、おとぎの国に飛ばされた時に、
どうやら落としたようだ。
「しかたないかぁ～中学生？」
「あ、はい」
一生懸命うなづきながらも、
「あの…まだ、持たせてもらえないんです」
ムキになったように、言い訳をした。

　半分嘘で、半分本当だ。
だけどこの女性は…私のことを、覚えていないのだろうか？
ふと、どこか見覚えのある、その人を見つめた。