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第11章 トンネルの向こうには…

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「ほら、何にもないだろう?」
 エラの背後から、タクトの声が追いかけるようにして、聞こえてくる。
だがエラは黙って、トンネルの中に両足を踏み入れると、コツコツと
足音だけが、響いて来た。
「危ないわよ!」
ユリカさんはあわてて、彼女を追いかけて来ると…携帯電話の光で、
足元を照らし出した。
「なんだか、ずいぶん…古そうなトンネルね」
トンネルの中を見回す。
「なっ、ゾッとしないだろ?」
後ろでタクトの声がする。
「ゾッとするわよ」
そう返すと、
「仕方がないなぁ」
タクトが手に握り締めていた懐中電灯で、回りを照らし出した。
「あら、行きたくない、と言ってた割に、準備がいいじゃないのぉ」
軽口をたたいて、タクトをからかうように、ニヤリと笑う。
「そりゃあ~それくらいはするよ」
急に強い口調で、タクトが言うと
「トンネルの中は暗いから…みんなで固まって行こう」
2人に声をかけた。


 すぐに外に出るかと思いきや…向こう側の方が、まだ何も見えない。
「なんだか、雰囲気のあるトンネルねぇ」
急にユリカさんが、小声でささやいた。
さすがに少し、不気味に感じたのか…
エラはユリカさんに、くっついて歩く。
「だから、言っただろ?」
ほら、ほら!
タクトがからかうように言う。
「こんなトコ、誰も来たがらないってぇ」
その声も、岩盤に反響して、やけに響いて聞こえる。
しかも真っ暗なので、昼間である、ということも、忘れてしまいそうだ。
さすがにちょっと、腰が引けてくるのだが、せっかくここまで車で
連れて来てもらっているのだから、何とかがんばって探そう…
とエラは心に誓う。
「ねぇ~どの辺りで、落としたの?」
腕にしがみついてくるエラに向かって、ユリカさんは軽く腕をついと引いて聞く。

「え~とぉ、トンネルを抜ける所だと思う」
さすがに、こんなに暗い所ではなかった…とエラは思い出す。
ただしここまで来ても、眠っている記憶は、ピクリとも反応しない。
なのでそれが、本当なのかどうか、エラには全く自信がないのだった。

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