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第10章 運命の歯車が回り始める
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この女…中々の食わせ者だぞ!
その謎の女を、うまく丸め込むのは、至難の業だ…と男は悟る。
チェッと舌打ちをすると、それに気づき、女は思い切り顔をしかめる。
「あーあ、あんたに頼むんじゃあなかった!
こんなことなら、初めから私が行けばよかったんだわ」
掃き捨てるように言うと
「ホント、期待外れもいいとこ」と男をにらみつける。
もっとも…この男のおかげで、居場所を探る手間が省けたのは、
間違いがない。
「ほら、約束の金!」
金をもらわないと、王子にバラすぞ、とさらに手を突き出すので、
「わかってるわよ」
あきらめたのか、女もジロリと見返し
「だけど、これだけしか出せないわよ」
それでもしぶしぶと、約束の半分を、手のひらに乗せる。
痛い出費だ…
これで成果が出なかったら、完全に赤字だわ、と女は顔をしかめる。
だが、王子に近付くには、多少の犠牲はやむを得ない。
もったいない…
女は舌打ちをする。
「チェッ、しけてるなぁ」
どうせ、王子の愛人とかだろ、と口に出さないまでも、男は腹の中で
そう思う。
手の平に乗っている銀貨に眼をやると、男はあからさまに、顏をゆがめる。
すると女はわざと大きな声で
「あら、それでも多いくらいよ!
いらないなら…返してもらう」
そう叫ぶと、すぐさま男の手のひらから、コインを奪おうとする。
「待った、ちょっと待った!」
あわててこぶしを握り締めると、ふところにそのコインを、ジャラジャラと
音をたてて、突っ込む。
「毎度ありぃ~!」
そう景気よく叫ぶと
「また何かあったら、今度こそキチンとしてやれるよ」とヘラリと笑う。
「いいえ!けっこうよ!」
ピシャリと女がそう言うと
「じゃあ、ごきげんよう」
男をその場に取り残したまま、その場を離れる。
「ついに、見つけたわ」
女はつぶやく。
そうして思わず、ニヤリと暗い笑みを浮かべる。
「あとは、どうやって近付くかよねぇ」
そう言うと、急がしく、何事か考え始めた。
その謎の女を、うまく丸め込むのは、至難の業だ…と男は悟る。
チェッと舌打ちをすると、それに気づき、女は思い切り顔をしかめる。
「あーあ、あんたに頼むんじゃあなかった!
こんなことなら、初めから私が行けばよかったんだわ」
掃き捨てるように言うと
「ホント、期待外れもいいとこ」と男をにらみつける。
もっとも…この男のおかげで、居場所を探る手間が省けたのは、
間違いがない。
「ほら、約束の金!」
金をもらわないと、王子にバラすぞ、とさらに手を突き出すので、
「わかってるわよ」
あきらめたのか、女もジロリと見返し
「だけど、これだけしか出せないわよ」
それでもしぶしぶと、約束の半分を、手のひらに乗せる。
痛い出費だ…
これで成果が出なかったら、完全に赤字だわ、と女は顔をしかめる。
だが、王子に近付くには、多少の犠牲はやむを得ない。
もったいない…
女は舌打ちをする。
「チェッ、しけてるなぁ」
どうせ、王子の愛人とかだろ、と口に出さないまでも、男は腹の中で
そう思う。
手の平に乗っている銀貨に眼をやると、男はあからさまに、顏をゆがめる。
すると女はわざと大きな声で
「あら、それでも多いくらいよ!
いらないなら…返してもらう」
そう叫ぶと、すぐさま男の手のひらから、コインを奪おうとする。
「待った、ちょっと待った!」
あわててこぶしを握り締めると、ふところにそのコインを、ジャラジャラと
音をたてて、突っ込む。
「毎度ありぃ~!」
そう景気よく叫ぶと
「また何かあったら、今度こそキチンとしてやれるよ」とヘラリと笑う。
「いいえ!けっこうよ!」
ピシャリと女がそう言うと
「じゃあ、ごきげんよう」
男をその場に取り残したまま、その場を離れる。
「ついに、見つけたわ」
女はつぶやく。
そうして思わず、ニヤリと暗い笑みを浮かべる。
「あとは、どうやって近付くかよねぇ」
そう言うと、急がしく、何事か考え始めた。
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