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第10章 運命の歯車が回り始める

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 なんだかひどく心配そうな顔をして、王子は信子を見つめる。
「いえ…なんで?」
あわてて信子が顔を上げると
「なんだかとても、思いつめた顔をしているから…」
心配そうにそう言うと、すぐに
「キミがいなくなると…お妃さまが、とても寂しがるからねぇ」
とだけ付け足した。
「そう?」
王子様は、どうなの、と思うけれど、それは言わない。
信子はブランコから立ち上がると
「中に、入ってもいいですか?」
ごまかすように、目の前のドアを指差した。
「あ、あぁ」「どうぞ」
 すっかり忘れていた、とばかりに、側に控えていた大臣の息子が
あわてて扉を開いた。


「小さくて、申し訳ないんだけど…」
 王子が恥ずかしそうに、信子を見ると
「好きなように、使ってもいいからね!」
にこやかにそう言う。
「なんだか、とっても可愛い家!」
嬉しそうに玄関に足を踏み入れると、白くてすべすべと光る床に、
すっかり目を奪われた。
「あっ、靴は脱がなくてもいいよ」
つい習慣で、靴を脱ぎ捨てようとするのを、大臣の息子があわてて止める。
「キミって…本当に不思議な女の子なんだね!」
笑いをこらえるように、ニヤニヤしながら、王子は信子に声をかける。
 小さいとはいっても、入ってすぐは6畳ほどの広さのあるホールだ。
しかも天井からは、シャンデリアがぶら下がっている。
シャラシャラと…風が吹くと、かすかにガラスのすれるような音がする。
何気なく上を見上げると、信子は「うわぁ」としばし見とれていた。


 別荘…と聞いていたから、すっかりログハウスのような所か…
と思っていたけれど、これだと自分の家が、優にスッポリと入りそうだ。
(残念ながら、覚えてはいないけれど)
信子はそう思う。
開けっ放しのドアの外から、一瞬視線を感じる。
「あら?やっぱりおばあさん、まだそこにいるの?」
あわてて信子がのぞき込むと、木の陰に、人影が走って行くのが、
目に入った。
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