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第10章 運命の歯車が回り始める

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 心配そうに、王子が顔をのぞき込んでくる。
そんな風に、あまりにじぃっと見つめられると、逆に恥ずかしい…
と、信子はさらに顔を赤くする。
目を開けると、まずは辺りを見回した。
もしかして あれは、夢の中の出来事なのではなかろうか…と
疑ったのだ。

「何を探しているの?」
 ブランコにさらに近付くと、王子はブランコのロープを揺さぶる。
「あの…おばあさんは?」
信子は顔をまだ赤くしたまま、遠慮がちに王子に聞く。
「おばあさん?
 あぁ、魔法使いのこと?
 もう、どこかへ行っちゃったよ」
ちょっぴりいたずらっぽい顔をして、ニヤッと笑いかけてくる。
それにしても、何をしても、絵になるなぁ~
思わず信子は、ぽぅっと王子の顏を見上げていると…
「さぁ、お嬢様!
 そろそろ中に、入りませんか?」
おどけた調子で、体を折ると、王子は信子に腕を差し出した。


 ここは、天国なのかしら?
まだ目が覚め切っていないのか、ぼぅっとしたまま、信子はすぐ傍らに
いる王子を見つめる。
もしかして、あのトンネルは…三途の川だったのかしら?
そんなバカなことを、考えていた。

 見たこともないような、田園風景が目の前に広がる。
おもちゃ箱のような、小さな可愛らしい家が、ポツンポツンと立っている。
今、目の前に広がるこの風景が、夢ではないとしたら、
私は一体、どこに行こうとしているのだろう?
ビルとビルの間に、ぎゅうぎゅう詰めに建物が立っている、自分のかつて
住んでいた家を思い出す。
今もまだ、信じられない気持ちで一杯だ。
さらに、あの魔法使いのおばあさんが言っていた、
『元の世界に帰る』とは、一体どういうことなのか?
(ここは、やはり知らない世界ってこと?)
未だ信子には、呑み込めないでいる。
いや、うすうすはおかしいと、わかってはいたけれど、そんな非科学的なこと、
絶対に起こるわけがない、とかたくなに、そう信じ込もうとしている。

「キミ…また、どこかへ行っちゃうの?」
 先程から、神妙な顔つきで、考え込んでいる信子に、王子は声をかけた。
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