おかえりなさい、シンデレラ(改訂版)

第8章 私を探して…

１

　前日はあいにくの天気だったのだけれど、朝になると、すっきりとした
青空が広がっていた。
信子が言い出すとすぐに、王子があれこれと手配してくれて…
その翌日には、すっかり準備が整っていた。
「しっかり休んで、元気になって帰っておいで」
王　自らが、信子の居室をのぞきに来ると、とても気安く声をかけてきた。
「帰ってきたら…結婚式だからね！」
もちろん、この一言も、忘れずに口にする。
やっぱり、そうなるのかぁ～
わかってはいたけれど、やはり信子には、重たい事実だ。
だけどとにかく、ここから一歩前進することが出来る…と、喜んでいた。

　
　早めに朝食を済ませると、そそくさと王子が、
「さぁ、そろそろ出かけるよ、支度して」と声をかける。
信子よりも、むしろ王子の方がそわそわしている。
　この人は一体、何を考えているのだろう…
そう思うけれども、久し振りに城の外に出られることが、純粋に楽しみであった。
「もう荷物は、積み終わりました」
ドアが開くと、早速王子のお付きの者が声をかける。
「わかった、ありがとう」
あっけらかんとそう言うと、
「ボクも、別荘なんて、久し振りだよ」
まるで何だか、これからピクニックにでも行くような…
そんなウキウキとした空気が伝わってくる。

（この人って、もしかしたら…本当にいい人なのかも…）
信子はしみじみとそう思う。
　王子といったら、普通はワガママだったり、偉そうにしているイメージ
だったのだけれど…
目の前にいるこの人は、まったくそんな素振りさえ、見せてはいない。
（ま、もっとも、猫をかぶっているだけなのかも、しれないけれど）
でも何だか、よかったと思う。
　ここ数日、気が張ることばかりだったので、かなりストレスが溜まっていた。
だけどようやく、ホッとする信子だ。
「さぁ、どうぞ」
王子はさり気なく、右腕を差し出すと、彼女をエスコートするそぶりを
してみせた。