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第6章 あの子は身代わりプリンセス

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 翌日の混乱は、ようやくおさまり…
信子もこの状況を、ゆっくりと受け止め始めていた。
当面の間は、行きがかり上、王子のフィアンセとして、この城に
お世話になろう…と心に決める。
だけども、そのままの流れで、このまま結婚してもいいのか、
という思いは、常に彼女の中にはあったけれど、
だが現実に、他に行く当てがないのだ。

 入れ変わり立ち代わり、お城の使用人たちは、信子の処へ
やって来る。
「お姫様、おぐしはいかがいたしましょうか?」
「何かご入用なものは、ありませんか?」
思いの外丁寧な態度で、みんな親切に接してくれる。 
 だけども信子は、どんなに丁重に扱われても…
気持が晴れることはない。
1日の大半を、部屋で過ごし、気が付くと、バルコニーに立って、
森の方角を、ぼんやりと眺めている。
 時折王子が、狩りの帰りにこちらに気が付いて、信子に
手を振ってくれるけれど…
彼女のことを、ニセモノだとか、疑う様子もない。
むしろ…心の病だ…と言うわけが引っ掛かって、とても気になって
いるのだ。


「お姫様、たまには…気晴らしに、どこか外に出かけられては?」
 新しく信子付きになったメイドが、声をかけてくるけれど
「いいの、私はここで、外を眺めるのが、好きなのよ」
と、全く相手にはしない。
「姫はやはり、病気なのか?」
 王は心配して、隣国から高名な医者を呼び寄せたり、
珍しいお菓子やお花を、プレゼントしてくれたりした。
 信子としては、自分は本物のシンデレラではないので、
とても心苦しいのだ。
こんな自分には、そんな資格などあるものか…と、今ではボンヤリ
としか、覚えてはいない。
もともと出たがりな性分ではなかった…
信子は自分のことを、分析する。
でも、どこかへ行くにしても、一体どこへ行ったらいいのか、
全く見当もつかない。
(だって…私がニセモノだって、きっとすぐに、バレてしまうわ…」
誰を恐れるでもなく、信子は1日中、部屋に引きこもって、
やり過ごすのだった。


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