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第1章 トンネルの向こうには…
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ようやく女の子は、ホッとした顔になる。
でも、すぐに警戒した表情になる。
その様子に気付いた彼は、苦笑いを浮かべて
「大丈夫だよ!
子供相手に、何もしないよぉ」
ほら、と手を差し伸べる。
子供?
その言葉に、引っかかりを覚えるけれど、まだ疑いつつも、
ぎこちなく微笑んでみせる。
「立てるかい?」
出来るだけ、穏やかな笑みを浮かべて、タクトは彼女に聞く。
「うん」
ようやく返事をすると、その少女は立ち上がった。
その女の子は、ヒョロヒョロと骨ばった体つきをしている。
(やれやれ、また余計なものを、拾ってしまったぞ)
タクトは大きなため息をついて、その女の子を見つめた。
思えば、小さな頃からそうだ。
途方に暮れた顔の小さな犬や、
ミーミーと弱々しい声を出してなく、捨てられた子猫や、
ゴミ捨てに置かれたダンボールに入ったひよこにさえ…
どうしても彼は、放っておくことが出来ないのだ。
だが、どうする?
相手は動物などではなく、人間だぞ、と思うけれども…
すでに彼女は、チョコマカと、距離を少しあけたままとはいえ、
自分の後ろをついて来ている。
クルリと振り向くと、少女の方を向いて、
「今日だけだぞ!
朝になったら、帰ってもらうからな!」
わざと顔をしかめて、声音を変えて言ってみる。
すると女の子は、少し怯えた顔になる。
(ダメだぞ、そんな顔をしても…その手には乗らないからな!)
彼は、気持ちを引締めた。
(だが、今日はまぁ、いいかぁ~
遅くなったし、疲れたし、これから探すのも、メンドーだし)
後ろを気にしながら、ゆっくりと歩き始める。
彼の気持ちに、気付く様子もなく、女の子はその後ろを、フラフラ
しながらも、ついて来ている。
やけに危うい歩き方に、
「大丈夫か?」
時折幾度も振り返りながら、歩く。
すると彼女は、フラリ…と身体が崩れるようにして、道に倒れ込む。
「おい、おい!大丈夫か?」
やっぱり…厄介なものを、拾ってしまった!
まずいぞ…そう思うけれども、放っておくことが出来ないのだ。
どうしよう?と思いつつも、どうにかタクシーをつかまえて、
ひとまず自分の家へと向かう。
それが、彼女との初めての出会いだった…
でも、すぐに警戒した表情になる。
その様子に気付いた彼は、苦笑いを浮かべて
「大丈夫だよ!
子供相手に、何もしないよぉ」
ほら、と手を差し伸べる。
子供?
その言葉に、引っかかりを覚えるけれど、まだ疑いつつも、
ぎこちなく微笑んでみせる。
「立てるかい?」
出来るだけ、穏やかな笑みを浮かべて、タクトは彼女に聞く。
「うん」
ようやく返事をすると、その少女は立ち上がった。
その女の子は、ヒョロヒョロと骨ばった体つきをしている。
(やれやれ、また余計なものを、拾ってしまったぞ)
タクトは大きなため息をついて、その女の子を見つめた。
思えば、小さな頃からそうだ。
途方に暮れた顔の小さな犬や、
ミーミーと弱々しい声を出してなく、捨てられた子猫や、
ゴミ捨てに置かれたダンボールに入ったひよこにさえ…
どうしても彼は、放っておくことが出来ないのだ。
だが、どうする?
相手は動物などではなく、人間だぞ、と思うけれども…
すでに彼女は、チョコマカと、距離を少しあけたままとはいえ、
自分の後ろをついて来ている。
クルリと振り向くと、少女の方を向いて、
「今日だけだぞ!
朝になったら、帰ってもらうからな!」
わざと顔をしかめて、声音を変えて言ってみる。
すると女の子は、少し怯えた顔になる。
(ダメだぞ、そんな顔をしても…その手には乗らないからな!)
彼は、気持ちを引締めた。
(だが、今日はまぁ、いいかぁ~
遅くなったし、疲れたし、これから探すのも、メンドーだし)
後ろを気にしながら、ゆっくりと歩き始める。
彼の気持ちに、気付く様子もなく、女の子はその後ろを、フラフラ
しながらも、ついて来ている。
やけに危うい歩き方に、
「大丈夫か?」
時折幾度も振り返りながら、歩く。
すると彼女は、フラリ…と身体が崩れるようにして、道に倒れ込む。
「おい、おい!大丈夫か?」
やっぱり…厄介なものを、拾ってしまった!
まずいぞ…そう思うけれども、放っておくことが出来ないのだ。
どうしよう?と思いつつも、どうにかタクシーをつかまえて、
ひとまず自分の家へと向かう。
それが、彼女との初めての出会いだった…
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