おかえりなさい、シンデレラ(改訂版)

第1章 トンネルの向こうには…

４

　すでに辺りは闇に包まれて、ポツンポツンと街灯がついている。
終電もすでに出てしまい、人通りもほとんどない。
このまま、その女の子を置き去りにするには、かなり忍びない。
　するとようやく目が覚めてきたのか、ポワンとした顔で、
「ここはどこ？」
ようやく異変に気付く。
「ここ？ここは…XX町だよ」
「XX町ってどこ？」
まだぼぅっとした顔で聞くので…
ヤバイ、この女の子…ここがどこだか、わからないようだ。
　やはり家出少女なのか？
遠慮のない目で、ジロジロと見ると、まだあどけなさの残る
子供のようだ。
　捨て置いて、見ないフリをする…という選択肢は、この場合は
どうやら、なさそうだ…
　仕方がないなぁ～
　タクトはすでにあきらめて、何とかして彼女を、安全な場所に
移動するように説得して、帰ってもらわねば…
そう、覚悟を決めた。


「キミ、そんなトコで寝ていたら、変な男に連れて行かれるぞ」
　脅かすようにして言うと、女の子はビクンと肩をこわばらせる。
「家は、どこ？早く帰りなさいよ！
　親御さんが、心配しているよ」
さらに重ねてそう言うと、これで自分の役目も終わった…
と思い、背を向けようとする。
だけども女の子は、すっかり立ち上がる気力がなく、途方に暮れた
顏をして、
「ダメだよ！こんなトコにいたら」
いつまでも座り込んでいる女の子に向かい、彼はじれたように言う。

　こっちは早く帰りたいんだ。
　今は一体、何時なんだ？と腕時計に、目を落とした。
もう、1時過ぎだ！
どうするんだ？
彼ももうすっかり、疲れ切っていた。
しゃあないなぁ～
舌打ちをしたい気分だ…
(貧乏くじを引いたなぁ）
すこしイライラとして、彼は女の子を見ると
「仕方がないなぁ～
　うちに来るかい？なんにもないけど…」
もはやあきらめモードで、シブシブという調子で、
彼は言う。
ようやく女の子の表情が、パッと明るい光を帯びる。
明らかに、地獄に仏、という顔をして、彼を見上げた。