となりのソータロー

第15章

５

「いいか？」
　先生は再び、ロウソクを目の高さまで掲げる。
「さぁ、もう一度、しっかりとこれを見てくれ」
悪いなぁ～と、サッとロウソクを、宗太郎の顏の前まで持っていく。

　本当のところは…宗太郎は目をそらしたいのだ。
だが、清子も神林君も…みんな、宗太郎に注目している。
（みんな…物好きだなぁ。こんなことを聞いても、つまらないだろ）
のん気に、そんなことを考えていた。

「で、その女の人は、何をしていたの？」
　不思議な音域で、その人が聞く。
とても心地のよいリズムで…
宗太郎は静かに
「寝てた…」とつぶやく。
「寝てたの？」
「そうだよ」
　二人のやり取りを、神林君と清子が黙って聞いている。
（その人は…何者？）
二人は、目を見合わせる。
「そう…それで、その人のことを、知っているの？」
　なんで、そんなことを聞くんだ？
宗太郎は頭をかしげる。
「それは、もちろん！
　だって、この人は…姉さんなんだもん」
キッパリとした口調で、そう言う。
ウソをついているようには、見えない。
「姉さん？」
　思わず清子が、声をもらす。
先生がパッと振り向く。
神林君が『しぃ～』と、唇に手を当てる。
清子はあわてて、口に手を当てる。
「そうかぁ～姉さんがいたのかぁ」
先生はなぜか、知っているように、ただ淡々とうなづいた。