となりのソータロー

第11章

２８

「なに？」
　神林君の様子が、少し変なので…
一体、何に気づいたのだ、と宗太郎は気になる。
だがオジサンは、ますますニヤニヤとして
「どうした？さっきまで、威勢がよかったのに」
明らかに、からかっているように見える。
「いや…ボクは、何か大切なことを、見落としているのかもしれない」
　神林君は、またも意味不明なことを言う。

　大切なことって、なんだ？
「一体、どうしたんだ？少しは教えてくれよ」
ちっとも、打ち明けてはくれないので…
そんなに自分は、頼りにならないのか、と思ってしまう。
だが神林君は、宗太郎の方を向くと
「先生だよ」
ポソッとそう言う。
「先生？」
　どういうことだ？
まったく…話が見えてこない。
「先生が、どうかしたの？」
やはり清子も、けげんな顔をして、神林君の答えを待つ。
「いや、先生…なんで、この家のことを、知っているのかなぁ、と思って」
何だか言いにくそうな口調で、ポソリとそう言う。
「いや、たぶん気のせいだ。何でもない」
すぐに、口を閉ざしてしまう。
　一体、何なんだ？
オジサンが、さっきからニヤニヤして、こちらをうかがっているのに気づく。
だが、どうにか、問い詰めたい気持ちを抑え込む。

「おや、どうした？仲間割れか？」
　そう言っている割りには、面白がっているように見える。
「そんなことはないよ」
ポンと言い放つと、
「じいちゃんに、頼まれたんだ。
　最後に、自分を訪ねて来た人のことを、マークしろって」
じぃっと、オジサンの様子をうかがった。