となりのソータロー

daisysacky

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第9章

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「何だよぉ~」
 よく考えると、清子だって、宗太郎に話していないことが、
まだありそうだ。
あの家のことも、過去のことも、自分はまったく覚えていないというのに…
「清子はなんで…アイツのことを、知っているんだ?」
少しは教えてくれてもいいだろ、と宗太郎は思う。
清子はチラリと宗太郎を見ると、スカートのヒダを伸ばしながら
「やっぱり、思い出せないんだ」
もってまわった言い方をする。
何だかその言い方も、気にかかる。
「神林くんのこと、どのくらい知っているんだ?」
さらに重ねて聞く。
「うーん、大して知らないわよぉ」
間延びする声でそう言う。
「あの子は、あの家によく来ていた男の子よ」
そう言って、再び宗太郎をうかがうようにして見る。
清子は、下を向いている。
宗太郎に表情を読まれまい、としているのだろうか?
清子のことだって、ほんの数日前に再会したばかりだから…
今、どこに住んでいるのかも、そういえば知らない…と、宗太郎は気づく。
「清子の家って、この近くか?」
 さり気ない調子で、そう聞く。
「うーん、まぁ、学校の通り道っていうかねぇ」
やはりはぐらかすように言う。
どうやら、そう簡単には、教えてはくれなさそうだ。

「ね、行ってみる?」
 清子は石段から腰を上げると、宗太郎に視線を向ける。
「行くって、どこに?」
わかってはいるけれど、あえて聞いてみる。
「どこにって、決まっているでしょ」
わかっているくせに…と、清子はムッとした顔をする。
「もしかして、あそこか?」
だが宗太郎は、何となく、気が乗らない。
気まずい空気が、二人の間に流れていた。
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