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出会い⑤

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「気に入られてよかったわね。狙えば逆玉の輿よ。」

爆弾発言をかましてくるフレイ。
本人を目の前に、そんな事を言える神経を少し尊敬する。
さては、サインをなすりつけたようとした事がバレていたのか。

「き、気に入って貰えて凄く嬉しいよ。」


「うん。シロイは特別」


特別とは、どういう特別という意味なのか。流石に恋愛的意味ではないだろう。

出会ってまだ2時間も経っていないのだから。

相変わらずリリーの表情筋は、動いていない為、感情を読み取る事は出来ない。

視線で兄のリオラに助けを求めるが、何故か今にでも人を殺しそうな目でこちらを睨んでいる。

その殺気で身体が震える程だ。


「シロイ。妹が欲しいというなら僕を倒してからだよ」


(いや、欲しいなんて一言も言ってません。)

冷や汗をかきながら、心の中で突っ込んでおく。
どうやらこの殺気は、妹を思う、兄の早とちりによるものらしい。 
父親ありがちの兄バージョン。

将来、リリーの婿探しは難航しそうだ。
その見るからに鍛えられた身体に、勝てる男はそうはいないだろう。

「僕にとってもリリーは特別だよ。初めての友達だからね。勿論リオラもね」


正直出会ったばかりで、友と呼んでいいのかよく分からないのだが。


「此処で否定されたら、凄く惨めで恥ずかしいわね。」

フレイがほくそ笑みながら、横から口を挟んできた。


「フレイ五月蝿い。」


本当に余計な事しか言わないKY娘だ。
次翡翠さんに会ったら、しっかりチクっておこう。


「ありがとう、シロイ。友と言ってくれて凄く嬉しいよ!」

「リリーもシロイが初めての友達。」

兄妹2人の声が重なった。

どうやら僕の心配は杞憂だったらしい。





_________________________________




「気付いたら山頂付近に丸裸でいた、という事だよね?」


再度、話題はシロイへと戻っていた。

山にいたというのは事実だし言ってもいいと思う。だけど、「裸」で、という事は伝える必要があるのだろうか。


「そもそも魔力欠如の症状の前例がほぼありませんからね。」

「前例が殆どない」
それが指しているのは、聞かなくてもわかった。発症した者は、恐らく生きてはいないのだろう。
下手したら、僕も死んでいた事を思うと今更だが身震した。


「うーん。僕の予想だと恐らく、シロイが最初に目覚めた、という場所にヒントがあると思うんだけど...。」

三人は一斉にシロイへと注目する。
僕は、そんな皆んなに微笑む事しか出来なかった。


「役立たず。」

フレイの言葉がクリーンヒット。
胸に何か刺さった様に痛い。
無我夢中で走っていた事しか記憶にないのだ。 
場所なんてどうでもよかった。


「だ、大丈夫だよ、シロイ。学園についたら実家でも一度調べて貰うよ。」


比べて、リオラは優しい言葉を掛けてくれる。やっぱりイケメンは心までイケメンなのか。
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