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少女と母⑥
しおりを挟む「呆れた、さてはあんた昨日渡した冊子読まなかったね!」
図星である。
勿論5、6ページ程しか読んでいない。
「よ、読みましたよ!フレイじゃあるまいし、見落としてたのかも知れないですね!」
少しは読んだのだ。
しっかりと抗議しておく。
「は、どういう意味よそれ」
口をもごもご動かし、透かさず抗議してくるフレイ。
(そういうとこだよ)
「全く、あんたも抜けた所が多いね。学園は全寮制だし、冬迄はメルディーナから帰れないよ」
「冬まで!?」
というと今は夏の終わり。
少なく見積もっても、4ヶ月程は学園で過ごす事になる。
(だか、これはチャンスかもしれない...)
学園に通いながら、バイトをしたらお金を貯めれる。
そしたら、、、。
「翡翠さん!少しお話しがあります」
「どうしたんだい?」
善は急げだ。
それにはまず翡翠さんの了承を貰わなくては始まらない。
「今の僕はお金もないし、、、此処にいたらただの穀潰しです!ですが、学園に通いながらバイトをして、少しでもお金を入れます!冬になったらまた此処に戻ってきてもいいですか!?」
頭を下げながら返事を待つ。
此処を追い出されたら、また一人になってしまう。
もう、一人は嫌だ。
あれ?今「シロイ」
突然名前を呼ばる。
優しく慈愛溢れた覇気のある声に、ビクっと身体が揺れる。
「馬鹿だね、言っただろ?「思い出すまで」って。」
此処にいてもいい、そのように聞こえる。
予想もしていなかった台詞に思わず、目頭が熱くなる。
そして出会った時の様に、優しく頭を撫でてくれた。
「ありが「それと学園はバイト禁止だよ。」
了承を貰いお礼を言う筈が、思わず固まってしまった。
翡翠は呆れたとばかりに溜息を吐く。
「あんた、やっぱり読んでないね?」
「はい、殆ど読んでません。」
今度は満面笑みで正直に答える。
確かに昨夜5、6ページしか読んでいない。
一回閉じたら消えたし、再読は不可能だ。
ゴミにならない為の配慮なのか。
一回閉じたら消えるって誰かが落として閉じちゃって消えたらどうするんだよ。
だが、既に存在しない物にイラついても無意味だ。
「しっかり勉強して帰っておいで」
「はい!!」
悩みが取れたシロイの声は、出会ってから初めて聞く程の声量だった。
「ところで、後10分位しか無いけど大丈夫?」
いつのまにか、髪も服装も全て完璧に仕上げたフレイがデーブルに頬杖をついていた。
現実はそう甘くはない。
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