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序章
過去の夢
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「久しぶりにテスト勉強なんかしたな・・・・・・」
週末を迎えた僕はせっせと勉強に励んでいた。
今までテスト勉強なんてまともにしたことがなく、いつもテストの前日に徹夜をして頭に叩き込んでいた。
いつもと違ったことをするべきでないとはよく聞くものの、それは本当なのかもしれないと僕は思わざるをえなかった。テスト勉強をしだしたせいか、まず眼球が痛くなり、次に頭痛がし始めた。段々と意識がとびそうなほどに体調が優れなくなっていき、いつ倒れてもおかしくない状態になっていた。
「お母さん・・・・・・お母さん?」
叫んでみたが、時計の針音しか聞こえてこない。
今にも意識がとびそうな状態の中で、家に誰も居ないことに気が付いた。確か今日は家族で遠出をするはずだった。だけど、テスト勉強をしたいからと言って僕は家に残っていた。頭痛がする中、考え導きだした答えがそれだった。
頭を叩かれているような痛みを我慢して体温計を探したが、近くにそれは見当たらなかった。
最近使ってなかったことを思い出し、最後に使ったであろう場所を探してみた。探し始めてすぐにそれは見つかった。
「・・・・・・あった。こんなところにあったんだ・・・・・・」
大きな独り言を言い、ベッドの下に隠すように置いてあったそれで熱を測った。
ピピピピ、ピピピピ・・・・・・
数秒後、体温を測れたことを知らせるアラームが鳴った。
「測れた・・・・・・って平熱か・・・・・・」
気が付けばまた、大きな独り言を言っていた。
「とりあえず、寝とこうかな・・・・・・」
そんなこともあったりするが、やっぱり僕は今過ごしている日々に楽しみがない。それも学校だけの話ではなく、
近頃の若者は何が楽しいのか、朝から晩まで、家でも外でも、スマートフォンをいじっている。スマートフォンの提出がある学校は問題ないが、提出のない学校では授業中も真面目に話も聞かないでそれをいじっている。僕の学校は前者であるが、僕自身はスマートフォンを使わないため関係ない話だ。
何でそんなにも通話やメール以外でそれが必要なのか僕には分からない。確かに僕もそれを持ってはいるが、通話やメール以外でほとんど使ったことがないため良く分からない。前に一度友達に勧められて、アプリというものをスマートフォンにダウンロードしたことがあるが、使い方が良く分からずにすぐに消してしまった。しかし、どうもそのアプリというものがみんなをそれに熱中させているようだ。
僕が毎日何をして過ごしているのか――面白くもないテレビを見て、夜ご飯を食べて、お風呂に入ってから歯を磨いて寝る。当たり前といえば当たり前の事だが、僕はその当たり前の日々を繰り返し、特に何もすることなく誰よりも早く寝むりにつく。誰よりもというのは語弊があるのかもしれない。正確にいえば同じ全国の高校生たちのことだ。僕が勝手に決めつけているだけかもしれないが、スマートフォンに熱中しているであろう全国の高校生たちは、たぶん夜遅くまでそれで遊んで過ごしている。
それの何が楽しいのか分からずに、僕は今日も子供の頃から手放せないでいる、もみじ柄の羽毛布団をかぶって朝までぐっすりと寝る。
「どうか今日はいい夢を見れますように・・・・・・」
ある夜の日、僕は夢を見ていた。
何度も忘れようとしたのに忘れられない三年前のあの日の夢だ。あの日の僕はまだ中学三年生で、進学について考えているときだった。
僕は幼いころからある女の子に恋をしていた。ただ幼い頃はそれが恋だとは気が付かなかった。昔は僕の家に遊びに来たり、あの子の家に行ったりして、おままごとや外でかけっこなどをして遊んでいた。しかし、学年が上がるごとに遊ぶ回数が減ってきていた。そして僕は僕の、あの子はあの子の友達と遊ぶようになっていた。
そうしているうちに進学する高校が僕と違うところだと分かった。
さすがに中学生にもなるとあの頃の気持ちが何であったのか分かるようになっていた。一緒にいることが当たり前だと思っていた頃はそれが恋だと気が付いていないだけだった。それを証明するかのように、いざ離れ離れになると思うと、どうしても胸が苦しくなってしまう。そこでようやく今までの自分の気持ちに気が付いた。
卒業式の日に僕はあの子に告白するつもりでいた。そして同じ高校に行くことも決めていた……
しかし、僕はあの子に告白ができず、とうとう違う高校に進学することを決めた。後になってから、仲の良い女子から「竜也くんのことが好きだって言ってたよ」と聞いたときは本当に驚いた。
それを聞いた僕は、その話が本当なのかどうかあの子の一番の友達だった女子に聞いてみた。そして僕はその話が本当であって、僕と彼女は両想いであったことが分かって心の底から後悔した。
僕はその話を聞いた日からものすごく後悔していた。
そして僕はその日からというもの、嫌というほど毎日のようにその夢を見るようになっていた。
ある時こんなことができないかと思った。嫌な夢を見るときはいつも、その 光景が鮮明に描き出される。それはまるで過去にタイムスリップをし、同じ時を繰り返しているような感覚だった。もしこれがタイムスリップであるのなら、過去を変えることで未来も変えることができるのではないかと思った。それに気が付いたのは最近だった。そして思っているだけで未だ夢に手を出してはいない。
今日もまた、僕はあの日の夢を見ている。
後悔の念を心の奥深くに押し殺し、毎日繰り返される悪夢を見るたびに心の奥深くから後悔が喉元まで逆流する。
いつもそれを押し殺し生きている僕には生きる以上に過酷なものだった。
幾度となく新しい恋を見つけようとした。しかし僕の心はいつもそれを阻んだ。
もし新しい恋をしようものなら、奥深くに押し殺した後悔の念が僕を現実に引き戻させる。僕と共にある心、その心が僕を現実に引き戻すのであれば、それが僕の本心であるのかもしれない。
そんな繰り返される日々を打破できるのであれば、たとえ夢だろうがそれが現実になろうが、僕の進みたかった道を歩めるのなら他の誰が犠牲になろうと構わない。
僕は自分のことしか考えられない最低の人間だ。
しかし、今が変わるのなら……僕は過去を変えることしか頭になかった。
そして、夢の過去に手を出してみた……
週末を迎えた僕はせっせと勉強に励んでいた。
今までテスト勉強なんてまともにしたことがなく、いつもテストの前日に徹夜をして頭に叩き込んでいた。
いつもと違ったことをするべきでないとはよく聞くものの、それは本当なのかもしれないと僕は思わざるをえなかった。テスト勉強をしだしたせいか、まず眼球が痛くなり、次に頭痛がし始めた。段々と意識がとびそうなほどに体調が優れなくなっていき、いつ倒れてもおかしくない状態になっていた。
「お母さん・・・・・・お母さん?」
叫んでみたが、時計の針音しか聞こえてこない。
今にも意識がとびそうな状態の中で、家に誰も居ないことに気が付いた。確か今日は家族で遠出をするはずだった。だけど、テスト勉強をしたいからと言って僕は家に残っていた。頭痛がする中、考え導きだした答えがそれだった。
頭を叩かれているような痛みを我慢して体温計を探したが、近くにそれは見当たらなかった。
最近使ってなかったことを思い出し、最後に使ったであろう場所を探してみた。探し始めてすぐにそれは見つかった。
「・・・・・・あった。こんなところにあったんだ・・・・・・」
大きな独り言を言い、ベッドの下に隠すように置いてあったそれで熱を測った。
ピピピピ、ピピピピ・・・・・・
数秒後、体温を測れたことを知らせるアラームが鳴った。
「測れた・・・・・・って平熱か・・・・・・」
気が付けばまた、大きな独り言を言っていた。
「とりあえず、寝とこうかな・・・・・・」
そんなこともあったりするが、やっぱり僕は今過ごしている日々に楽しみがない。それも学校だけの話ではなく、
近頃の若者は何が楽しいのか、朝から晩まで、家でも外でも、スマートフォンをいじっている。スマートフォンの提出がある学校は問題ないが、提出のない学校では授業中も真面目に話も聞かないでそれをいじっている。僕の学校は前者であるが、僕自身はスマートフォンを使わないため関係ない話だ。
何でそんなにも通話やメール以外でそれが必要なのか僕には分からない。確かに僕もそれを持ってはいるが、通話やメール以外でほとんど使ったことがないため良く分からない。前に一度友達に勧められて、アプリというものをスマートフォンにダウンロードしたことがあるが、使い方が良く分からずにすぐに消してしまった。しかし、どうもそのアプリというものがみんなをそれに熱中させているようだ。
僕が毎日何をして過ごしているのか――面白くもないテレビを見て、夜ご飯を食べて、お風呂に入ってから歯を磨いて寝る。当たり前といえば当たり前の事だが、僕はその当たり前の日々を繰り返し、特に何もすることなく誰よりも早く寝むりにつく。誰よりもというのは語弊があるのかもしれない。正確にいえば同じ全国の高校生たちのことだ。僕が勝手に決めつけているだけかもしれないが、スマートフォンに熱中しているであろう全国の高校生たちは、たぶん夜遅くまでそれで遊んで過ごしている。
それの何が楽しいのか分からずに、僕は今日も子供の頃から手放せないでいる、もみじ柄の羽毛布団をかぶって朝までぐっすりと寝る。
「どうか今日はいい夢を見れますように・・・・・・」
ある夜の日、僕は夢を見ていた。
何度も忘れようとしたのに忘れられない三年前のあの日の夢だ。あの日の僕はまだ中学三年生で、進学について考えているときだった。
僕は幼いころからある女の子に恋をしていた。ただ幼い頃はそれが恋だとは気が付かなかった。昔は僕の家に遊びに来たり、あの子の家に行ったりして、おままごとや外でかけっこなどをして遊んでいた。しかし、学年が上がるごとに遊ぶ回数が減ってきていた。そして僕は僕の、あの子はあの子の友達と遊ぶようになっていた。
そうしているうちに進学する高校が僕と違うところだと分かった。
さすがに中学生にもなるとあの頃の気持ちが何であったのか分かるようになっていた。一緒にいることが当たり前だと思っていた頃はそれが恋だと気が付いていないだけだった。それを証明するかのように、いざ離れ離れになると思うと、どうしても胸が苦しくなってしまう。そこでようやく今までの自分の気持ちに気が付いた。
卒業式の日に僕はあの子に告白するつもりでいた。そして同じ高校に行くことも決めていた……
しかし、僕はあの子に告白ができず、とうとう違う高校に進学することを決めた。後になってから、仲の良い女子から「竜也くんのことが好きだって言ってたよ」と聞いたときは本当に驚いた。
それを聞いた僕は、その話が本当なのかどうかあの子の一番の友達だった女子に聞いてみた。そして僕はその話が本当であって、僕と彼女は両想いであったことが分かって心の底から後悔した。
僕はその話を聞いた日からものすごく後悔していた。
そして僕はその日からというもの、嫌というほど毎日のようにその夢を見るようになっていた。
ある時こんなことができないかと思った。嫌な夢を見るときはいつも、その 光景が鮮明に描き出される。それはまるで過去にタイムスリップをし、同じ時を繰り返しているような感覚だった。もしこれがタイムスリップであるのなら、過去を変えることで未来も変えることができるのではないかと思った。それに気が付いたのは最近だった。そして思っているだけで未だ夢に手を出してはいない。
今日もまた、僕はあの日の夢を見ている。
後悔の念を心の奥深くに押し殺し、毎日繰り返される悪夢を見るたびに心の奥深くから後悔が喉元まで逆流する。
いつもそれを押し殺し生きている僕には生きる以上に過酷なものだった。
幾度となく新しい恋を見つけようとした。しかし僕の心はいつもそれを阻んだ。
もし新しい恋をしようものなら、奥深くに押し殺した後悔の念が僕を現実に引き戻させる。僕と共にある心、その心が僕を現実に引き戻すのであれば、それが僕の本心であるのかもしれない。
そんな繰り返される日々を打破できるのであれば、たとえ夢だろうがそれが現実になろうが、僕の進みたかった道を歩めるのなら他の誰が犠牲になろうと構わない。
僕は自分のことしか考えられない最低の人間だ。
しかし、今が変わるのなら……僕は過去を変えることしか頭になかった。
そして、夢の過去に手を出してみた……
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