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第三章 sugar sugar honey

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 息が上がる。
 蜜の上で腰を振る周防がたまらなくいやらしくて目をそらせない。汗が落ちて蜜を濡らす。
 ベッドが軋んだ音を立てている。

「あ、ああっ、先生。気持ちよくてどうにかなりそう」

「なって。俺もとっくにおかしい」

 広い背中に腕を回すと、グっと動く肩甲骨に触れた。
 全身全霊で愛し合っている。
 周防の呼吸が早くなる。蜜も同じリズムで喘いだ。声が止まらない。
 
「あー。もうやばいなイキそう」

「せんせえ、あ、ああっ」

 最後にギュウっと抱き合って蜜の足に包まれた性器が爆ぜた。バクバクと激しい心臓の動きに合わせて放出されていく。
 勢いよく飛び出た体液は蜜の腹を濡らし、どちらのものかわからなく混ざり合った。

 しばらく周防は動かなかった。
 さっきまでの荒々しさが嘘のようにしんとした時間が心地よい。

「大丈夫か?」

「大丈夫」

 体を離すのが忍びなくてそのまま抱き合ったまま。
 だけどぐうっと空腹を訴えた腹の音に静寂は破られた。

「だよな、腹減ったよな」

「すみません。はしたないお腹で」

「や、ご飯食べる前に盛った俺が悪いな。よしシャワー浴びに行こ」

 大雑把にティッシュで身体を拭いてから今度はふたりで風呂場へと向かった。
 明るい場所でまじまじと見られるのはあまりにも恥ずかしくて、背中合わせに体を洗いあった。

「ケチ」と周防は唇を尖らせたけど、明るい場所で裸を晒す勇気はない。
 さっきまでもっとはしたない姿をさらして、何を今更と思われても恥ずかしいものは恥ずかしい。

 シャワーから上がると周防は新しい下着を手渡した。買ってもらったものはさっき汚してしまったはずなのに。

「これからも泊まると思って多めに買っといてよかったな」

 どうやら蜜が車に戻っている間に数枚買い足していたようだった。それとさりげなく存在していたローションとゴムと。
 抜かりがない。

「また泊まりに来ていいの?」

「当たり前だろ。好きな時に来ていいよ。___もう覚悟できたからさ」

 周防は笑うと、さて、とキッチンに立った。
 
「空腹な蜜くんのために急いで料理でもしましょうか」

 料理を再開するといい匂いが漂ってきた。何か手伝うことはないかと聞くと、お茶でも出しといてと言われた。

「勝手に冷蔵庫を開けても?」

「どこをどうしてもいいよ」

 口だけで返事が返ってきたので遠慮なく冷蔵庫からお茶を出した。グラスに注いでいると手際よく仕上げた料理がテーブルへと運ばれてくる。
 
「美味しそう!」

 大きなお肉がたくさん乗った生姜焼き丼はほかほかと湯気を立て食欲をそそった。

「先生こんなの作れるってすごい」

「そお~褒められると嬉しいなあ。よし食べよ」

「いただきます」

 向かい合ったテーブルで手を合わせてから食事を始める。生姜が効いていて美味しい。パクパクと食べていたら周防は嬉しそうに見つめながら言った。

「こういう些細な価値観って案外大事なんだよな」

「価値観ですか? 生姜焼きの?」

「ははっ、その価値観も気になるところだけど違うな。蜜は絶対いただきますって手を合わせるだろ。そういうのできない奴も多い。俺は蜜のそういうところがめっちゃいいなって思ってる」

 まるで両親も褒められたようで嬉しかった。
 再婚のくせにって悪口を言われたことも多いけど、しっかりと躾けてくれた両親のおかげで恥ずかしい思いをすることがない。
 
 周防が父を好きだと思っていた時はそういうことも素直に受け止めきれなくて、嫌なところばかり探そうとしていた。
 だけど今はわかる。
 血がつながらなくても父は蜜を大切に大事に育ててきてくれた。口うるさいこともあったけれど、それは実の子と思ってしてくれていた事だ。

 周防といることで蜜はたくさんのことに気がつけた。
 
「先生、ありがとう」

 言うと勘違いしたのか「そこまで大変な料理じゃないよ」と答えた。違うけどそれでもいい。

「美味しい」

「それはよかった」

 一緒にいることが何より幸せだ。この先もずっと続いていけばいいと願う。

 その夜、周防のベッドで抱き合って眠った。
 腕の中は温かくてぬくもりに満ちていてなにより安心できる場所だった。周防もそうなんだろう。とても幸せそうな寝顔を見せている。

 蜜は久しぶりにぐっすりと眠ることが出来た。
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