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第二章 Lion Heart
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え、というように周防の目が見開いた。
決心が鈍らないうちに続ける。
「すぐにがんばってって言えなくてごめんなさい。離れたら忘れられちゃうんじゃないかって自分に自信がなくて……不安ばっかりで酷い事言っちゃいました」
周防が遠い人になってしまうことに怯えて足を引っ張るのは簡単だった。駄々をこねて困らせてしまえば、もしかしたら引き止められるのかもしれない。でも後悔する周防を見ているほうが辛い。
過去を乗り越えて進みたいこの人の背中を押してあげたい。
そのためにもっと素敵な人になればいいと決めたから。
「正直今も離れるのは怖いなって思うけど、先生がやりたいことなんでしょう? だったらめちゃくちゃ応援するからがんばって」
「蜜……」
周防は何度か目を瞬かせて、ふわりと笑うとまるで大輪の花が咲いたように見えた。
「いいの?」
「いいっていうか、夢を叶える先生を見たいから」
距離は遠くなっても心だけはそばにいる。
それに会いたければ会いに行けばいい。行動を起こせば先に繋がるはずだから。
「でもぼくのことを忘れないで。ずっと好きでいて。浮気もしないって約束してくれますか?」
周防は眩し気に蜜を見つめ、うるっと瞳をにじませた。
「約束する。絶対に裏切らない。蜜……俺がんばってきていい?」
「はい。その代わりジャパンに連れてってくださいね」
周防がプレイヤーとして行けなかった場所。だけど指導者としてたどり着けるなら、その景色を蜜も見てみたい。
「任せといて。ああ、もう、蜜大好きだ」
グラリと観覧車を揺らしながら周防が蜜を抱きしめた。てっぺんまでもうすぐ届く場所で。
長いキスだった。
強い腕に包まれながら唇を啄まれる。何度も角度を変えてチュっと音を立てながら繰り返すキスにどんどん溺れてしまいそうになる。
気持ちいい。
いつまでも慣れなくて息を止めていると、ふ、と笑われた。
「口開けてみて」
言われた通りに開けると、スルっと周防の舌が潜り込んできた。小さく絡めると離れていく。
唇を合わせるだけじゃないキスに心臓がバクリと跳ねる。
「ごめん。盛っちゃった」
「今の、って」
あたたかな舌の感触が蜜のそこに残っている。
今までのキスとは全然違って官能的だった。ジワリとにじんでくる。
「ほんと俺は我慢が効かなくてダメだな~卒業するまで待つって決めてんのに。でも今のは仕方ないだろ。好きすぎて止められなかったから」
言い訳をするように周防は早口でしゃべり、コツンとおでこを合わせた。
「ありがとう。蜜の気持ち、ありがたくもらうな」
一番高い場所にいて景色は最高に綺麗なはずなのに外を見る余裕がない。じっと見つめ合っている、それだけで満たされてしまう。
もう一度、今度は軽いキスをしてから周防は座っていた場所に戻っていった。
「最高だな。沖縄」
「……はい」
ドキドキが止まらなかった。
ただ唇を合わせるキスだけでも気持ちいいのに、なんだあれは。
自分の身体じゃないみたいだ。あんな場所が気持ちいなんて知らなかった。周防と触れ合った舌先から体の奥が痺れるようだ。
ずしりと中心が重たくなる。
ぼんやりとする蜜に気がついたのか顔をのぞき込んで、周防は困ったように笑った。
「そんな顔をされると帰せなくなるじゃん」
「……ぼく変な顔をしてますか?」
「ううん。めっちゃ可愛い顔してる。でもこれ以上は何もできないからあんま煽らないで」
煽るってなんだ。どんな顔を見せてしまっているんだ。
恥ずかしくて覆うとその腕も引きはがされた。
「でもやっぱ隠さないで見せて」
そういう周防だって色っぽくて、これからもっと見たことのない素顔を見せあうのかと思うと怖くて興奮する。
いつか。
周防とそういうことをする日が来るんだろうか。
決心が鈍らないうちに続ける。
「すぐにがんばってって言えなくてごめんなさい。離れたら忘れられちゃうんじゃないかって自分に自信がなくて……不安ばっかりで酷い事言っちゃいました」
周防が遠い人になってしまうことに怯えて足を引っ張るのは簡単だった。駄々をこねて困らせてしまえば、もしかしたら引き止められるのかもしれない。でも後悔する周防を見ているほうが辛い。
過去を乗り越えて進みたいこの人の背中を押してあげたい。
そのためにもっと素敵な人になればいいと決めたから。
「正直今も離れるのは怖いなって思うけど、先生がやりたいことなんでしょう? だったらめちゃくちゃ応援するからがんばって」
「蜜……」
周防は何度か目を瞬かせて、ふわりと笑うとまるで大輪の花が咲いたように見えた。
「いいの?」
「いいっていうか、夢を叶える先生を見たいから」
距離は遠くなっても心だけはそばにいる。
それに会いたければ会いに行けばいい。行動を起こせば先に繋がるはずだから。
「でもぼくのことを忘れないで。ずっと好きでいて。浮気もしないって約束してくれますか?」
周防は眩し気に蜜を見つめ、うるっと瞳をにじませた。
「約束する。絶対に裏切らない。蜜……俺がんばってきていい?」
「はい。その代わりジャパンに連れてってくださいね」
周防がプレイヤーとして行けなかった場所。だけど指導者としてたどり着けるなら、その景色を蜜も見てみたい。
「任せといて。ああ、もう、蜜大好きだ」
グラリと観覧車を揺らしながら周防が蜜を抱きしめた。てっぺんまでもうすぐ届く場所で。
長いキスだった。
強い腕に包まれながら唇を啄まれる。何度も角度を変えてチュっと音を立てながら繰り返すキスにどんどん溺れてしまいそうになる。
気持ちいい。
いつまでも慣れなくて息を止めていると、ふ、と笑われた。
「口開けてみて」
言われた通りに開けると、スルっと周防の舌が潜り込んできた。小さく絡めると離れていく。
唇を合わせるだけじゃないキスに心臓がバクリと跳ねる。
「ごめん。盛っちゃった」
「今の、って」
あたたかな舌の感触が蜜のそこに残っている。
今までのキスとは全然違って官能的だった。ジワリとにじんでくる。
「ほんと俺は我慢が効かなくてダメだな~卒業するまで待つって決めてんのに。でも今のは仕方ないだろ。好きすぎて止められなかったから」
言い訳をするように周防は早口でしゃべり、コツンとおでこを合わせた。
「ありがとう。蜜の気持ち、ありがたくもらうな」
一番高い場所にいて景色は最高に綺麗なはずなのに外を見る余裕がない。じっと見つめ合っている、それだけで満たされてしまう。
もう一度、今度は軽いキスをしてから周防は座っていた場所に戻っていった。
「最高だな。沖縄」
「……はい」
ドキドキが止まらなかった。
ただ唇を合わせるキスだけでも気持ちいいのに、なんだあれは。
自分の身体じゃないみたいだ。あんな場所が気持ちいなんて知らなかった。周防と触れ合った舌先から体の奥が痺れるようだ。
ずしりと中心が重たくなる。
ぼんやりとする蜜に気がついたのか顔をのぞき込んで、周防は困ったように笑った。
「そんな顔をされると帰せなくなるじゃん」
「……ぼく変な顔をしてますか?」
「ううん。めっちゃ可愛い顔してる。でもこれ以上は何もできないからあんま煽らないで」
煽るってなんだ。どんな顔を見せてしまっているんだ。
恥ずかしくて覆うとその腕も引きはがされた。
「でもやっぱ隠さないで見せて」
そういう周防だって色っぽくて、これからもっと見たことのない素顔を見せあうのかと思うと怖くて興奮する。
いつか。
周防とそういうことをする日が来るんだろうか。
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