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第二章 Lion Heart

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「どうだった?」

 かき氷をシャカシャカと混ぜながら太一が楽しそうに聞く。

「とりあえず約束はできた。いつになるかはわかんないけど……時間は作ってもらえるって」

「よかったな。こっちのアリバイ作りも任せとけ。グループ行動の時ならうまくごまかしてやるからさ」

「ありがと」

 素直にお礼を言うとクシャクシャと髪を撫でながら「恋してんな~」と裕二がうらやましそうに言う。

「おれも恋して~」

「よし帰ったら合コンやるぞ」

 沖縄のカラっとした空の下ではジメジメした考えは似合わない。いつもなら色々考えてしまう蜜もサラっと行動を起こせてしまった。

 周防から連絡が来たのはその日の夜で、2日目は団体行動で難しいけど3日目の自由行動の日なら会えるとのことだった。
 
「よし、じゃあその時にしっかりデートしてこいよ」

 沖縄で二人きりでデート。どこに行こう。
 今までもさんざん見ていたガイドブックを違う目線から見てしまう。

 どこかの観光施設に行ってもいいけどせっかくならきれいな海も見てみたい。いつもは夜ばかりでまっくらな海しか見れないけど、沖縄の白い砂浜に真っ青な空と海なんて、絶対に綺麗だ。

 考えているだけでもワクワクする。

 2日目は出発した時のグループごとに行動するから周防とは全然会えなかった。せめて同じ場所にいたかったなと残念に思う。
 それでも太一や裕二といろんな体験をしていれば楽しくて、あっという間に時間は過ぎていった。

 そして3日目。
 午前中は交代で見回りがあるけど、午後からなら時間が取れると連絡が来た。

「どっかでランチしようか」という提案にすぐにOKの返事を出した。そういえば二人きりでご飯を食べに行ったこともなかったかもしれない。
 いつも夜や帰り道に会えるくらいだから。
 誰の目にもつかない場所でひっそりと会うだけ。休日に水族館に行ったときは愛衣や三和がいたからまた違って。

 ようやく本物のデートなんだと思ったらドキドキが止まらなくなってしまった。
 
 午前中は太一たちと一緒に行動して、昼になるちょっと前に抜け出した。

 待ち合わせの場所に行くとクラクションが鳴らされて、見ると赤のかっこいいオープンカーに周防が乗っている。

「うわ! 先生どうしたんですかこれ」

 驚いて駆け寄ると自慢気に顎をあげた。

「いいだろ、一度は乗って見たくてさ~」とご機嫌だ。

 助手席に乗り込むと一気にテンションが上がる。
 まるで映画に出てくるハリウッドスターの気分だ。周防はサングラスをかけていて、半そでからのぞくたくましい腕を窓枠に乗せた。
 アメリカンって感じですごく似合っている。

 やばい。かっこよすぎて心臓が持たないかもしれない。

 ラジオからは英語放送が流れてきて、まるで外国にいるようだ。 
 そういえばアメフトをやっている周防は本場のアメリカに行ったことがあるんだろうか。

 聞いていいのか迷いながら質問するとケロっとしながら「あるよ」という。

「夏休みとかさ、招待されて行ってきた。めっちゃかっこよかったんだよなあ」

 周防は聞けばいろんなことを教えてくれた。
 今まで蜜が変に遠慮をしたり自分の立ち位置がわからなくてうまく伝えられてなかっただけなのだ。

 自分から一歩近寄ったらそれに応えてくれる人だった。

 車は開放的な広い道をビュンビュン進んでいく。
 景色も最高に綺麗で思わず鼻歌も出てしまう。二人で音楽に合わせて歌ったらちょっとだけ音程がずれたりして、それだけでも楽しい。

 車は海沿いを走り、ついたのはアメリカンな街並みだった。大きな観覧車やカラフルな建物がテーマパークのようだった。

 車から降りて歩くとたくさんのショップやストリートライブをやっていたりしてどこを見ていいのかわからなくなる。
 周りを歩いている人も日本人より外国人の方が多いかもしれない。

 周防ははぐれないようにと手を繋いできた。

「ここのタコスが美味しいって聞いてさ。好き? タコス」

 思わず「好き」と答えそうになった。周防が好きと。

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