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第二章 Lion Heart
修学旅行
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「うっわーすげえ! バカンスに来たって感じ」
修学旅行先の沖縄の空港に降り立った蜜たちは、一気に南国ムードに歓迎された。
風が違う。
纏う空気がおなじ日本のものとは思えなくて、テンションが上がりまくる。
「あの首飾りみたいのかけてもらえないの?」
「それはハワイな」
素朴さが心地よい、こじんまりとした空港だった。
モノレールから見える景色は今まで見たことのないものばかりだった。少しくすんだ色の屋根が太陽に照らされている。高い建物は少なく遠くまで見渡せた。
出発は人数の関係で2グループに分かれていた。先発の周防たちはもうバカンスを楽しんでいる頃だろう。
遅れて到着の蜜たちもホテルに荷物を預け、身軽になるとさっそく街へと繰り出した。
賑やかな国際通りは観光客であふれ、連なるお土産屋さんは派手で目を惹くものばかりだ。
ワクワクと連なって歩いていると、向かい側から周防が歩いてくるのが見えた。手には美味しそうなかき氷を持っている。
「おーいレオくーん」
太一が手を振るとこちらに気づいたのか、小走りで寄ってきた。それを見た裕二が「な、忠犬みたいだろ。でっかいワンコ」と耳打ちをする。
カラオケで周防とのことを話してから3人の中ではわりとオープンにいろんなことが話せるようになった。
まだ仲直りしていないと言うと、この旅行で決着をつけろとケツを叩かれている。
でもクラスが違えば行動も違って、どうやって二人だけの時間をつくればいいのか迷っている。
「それどこで買ったの?」
マンゴーが大量の乗っているかき氷はTHE南国という感じで見るからにおいしそうだ。
お店を教えてもらうとさっそく太一はそこへと向かっていった。
「買ってくるから蜜は待っててな!」
裕二と二人で走って行ってしまい、残された蜜は周防と二人きりになる。
「先生はもうどこか見たんですか?」
周防は普段よりリラックスしているように見えた。旅行を楽しんでいるのだろう。
「ん~君たちが悪いことをしてないかこの辺を巡回してただけだよ。暑くてかき氷を買ったら蜜に会えたってところ」
「こんなところに来ても見回りですか?」
「そりゃ先生だからね。一応交代で自由時間はあるみたいだけどな」
これがチャンスかもしれない。
何故か緊張して手に汗をかいた。「あの」という声がかすれる。
「ん?」
「もし時間があれば、どこか一緒に回れませんか」
これが蜜から初めてのデートの誘いだった。
いつも周防が声をかけてくれるのに合わせていたけど、つきあっているなら蜜から誘ってもいいんだよって太一に言われたのだ。
待っているだけじゃなくて自分からも動かなきゃ。
「え、マジで」
「もし、迷惑じゃなければ」
周防の持つかき氷のカップの汗がポタリと地面に落ちた。
「行く。っていうかお前こそいいの? みんなで遊ぶ予定だろ?」
「先生と過ごしたいんです」
心臓が高鳴っている。
デートに誘うってこんなに緊張するものだとは思わなかった。
周防は困ったように首の後ろに手をやり「人がいすぎだよなあ」と呟いた。
「抱きしめたいのにできない」
「バカ」
いつものやり取りに安心して二人で笑った。
「じゃあ予定が分かったら連絡するから」
久しぶりの穏やかな時間に蜜もホッと息を吐いた。普通に話せるようになってよかった。
やっぱりこうやって周防といるのは楽しい。
ふいに視線を感じるとかき氷を手にした太一と裕二が建物の陰から様子をうかがっている。
視線が合うとニヤニヤしながらやってきてドンと肘でつつかれた。「どう? いい感じ?」と無言の圧がすごい。
「じゃあ俺は行くな。ハメを外さないように楽しめよ」
周防はまた先生の顔に戻るとそのまま歩いて行ってしまった。オンとオフの切り替えがさすがだ。
修学旅行先の沖縄の空港に降り立った蜜たちは、一気に南国ムードに歓迎された。
風が違う。
纏う空気がおなじ日本のものとは思えなくて、テンションが上がりまくる。
「あの首飾りみたいのかけてもらえないの?」
「それはハワイな」
素朴さが心地よい、こじんまりとした空港だった。
モノレールから見える景色は今まで見たことのないものばかりだった。少しくすんだ色の屋根が太陽に照らされている。高い建物は少なく遠くまで見渡せた。
出発は人数の関係で2グループに分かれていた。先発の周防たちはもうバカンスを楽しんでいる頃だろう。
遅れて到着の蜜たちもホテルに荷物を預け、身軽になるとさっそく街へと繰り出した。
賑やかな国際通りは観光客であふれ、連なるお土産屋さんは派手で目を惹くものばかりだ。
ワクワクと連なって歩いていると、向かい側から周防が歩いてくるのが見えた。手には美味しそうなかき氷を持っている。
「おーいレオくーん」
太一が手を振るとこちらに気づいたのか、小走りで寄ってきた。それを見た裕二が「な、忠犬みたいだろ。でっかいワンコ」と耳打ちをする。
カラオケで周防とのことを話してから3人の中ではわりとオープンにいろんなことが話せるようになった。
まだ仲直りしていないと言うと、この旅行で決着をつけろとケツを叩かれている。
でもクラスが違えば行動も違って、どうやって二人だけの時間をつくればいいのか迷っている。
「それどこで買ったの?」
マンゴーが大量の乗っているかき氷はTHE南国という感じで見るからにおいしそうだ。
お店を教えてもらうとさっそく太一はそこへと向かっていった。
「買ってくるから蜜は待っててな!」
裕二と二人で走って行ってしまい、残された蜜は周防と二人きりになる。
「先生はもうどこか見たんですか?」
周防は普段よりリラックスしているように見えた。旅行を楽しんでいるのだろう。
「ん~君たちが悪いことをしてないかこの辺を巡回してただけだよ。暑くてかき氷を買ったら蜜に会えたってところ」
「こんなところに来ても見回りですか?」
「そりゃ先生だからね。一応交代で自由時間はあるみたいだけどな」
これがチャンスかもしれない。
何故か緊張して手に汗をかいた。「あの」という声がかすれる。
「ん?」
「もし時間があれば、どこか一緒に回れませんか」
これが蜜から初めてのデートの誘いだった。
いつも周防が声をかけてくれるのに合わせていたけど、つきあっているなら蜜から誘ってもいいんだよって太一に言われたのだ。
待っているだけじゃなくて自分からも動かなきゃ。
「え、マジで」
「もし、迷惑じゃなければ」
周防の持つかき氷のカップの汗がポタリと地面に落ちた。
「行く。っていうかお前こそいいの? みんなで遊ぶ予定だろ?」
「先生と過ごしたいんです」
心臓が高鳴っている。
デートに誘うってこんなに緊張するものだとは思わなかった。
周防は困ったように首の後ろに手をやり「人がいすぎだよなあ」と呟いた。
「抱きしめたいのにできない」
「バカ」
いつものやり取りに安心して二人で笑った。
「じゃあ予定が分かったら連絡するから」
久しぶりの穏やかな時間に蜜もホッと息を吐いた。普通に話せるようになってよかった。
やっぱりこうやって周防といるのは楽しい。
ふいに視線を感じるとかき氷を手にした太一と裕二が建物の陰から様子をうかがっている。
視線が合うとニヤニヤしながらやってきてドンと肘でつつかれた。「どう? いい感じ?」と無言の圧がすごい。
「じゃあ俺は行くな。ハメを外さないように楽しめよ」
周防はまた先生の顔に戻るとそのまま歩いて行ってしまった。オンとオフの切り替えがさすがだ。
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