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第二章 Lion Heart
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ぐっすりと眠ってしまった子供たちを車に乗せて帰路へつく。
口をぽかりとあけた無防備な寝顔は微笑ましくていつまでも見ていたい気分だった。
「楽しかったな」
バックミラー越しに話しかけると蜜も満足そうにうなずいた。
「すっごく楽しかったです。連れてきてくれてありがとうございました」
その笑顔を見れただけで満たされてしまう。
蜜が喜ぶならばいつだってどこにだって連れて行ってあげたい。
教師と生徒が2人きりで会うのは許されないのかもしれない。
誰かに見つかったらまずいのはわかっているのに一緒にいたい気持ちに負けてしまう。
「また誘うよ。今度は遊園地とか」
「はい、あ、でも無理はしないでくださいね」
周防のビビリを蜜はちゃんとわかっている。
自分だってもっとこうしたい欲があるだろうに一歩引いて周防のできることを待ってくれている。
大人のくせに年下に気を使わせていることが情けない。
最近つくづく思うようになった。もっと勇気があれば。怖がる気持ちを克服できたら。
いつまで過去に縛られているのか。
「うん、大丈夫。無理はしてないから。愛衣も三和も一緒に行こ」
「喜びます。今日の話を両親に早く聞かせたいな」
今日一番興奮していたのは三和だった。最初こそモジモジしていたのに最後は愛衣の手を引いてどんどん先へと行きたがった。
子供の成長は早いというけれど、あんな爆発的な進化を目にしていつまでも立ちすくむ自分はなんなんだろうと思わされた。
みんなが前へと進んでいる。
周防だって進みたい。
蜜を幸せにしたいから、今のままじゃ絶対にダメだ。
送り届けると志穂さんだけじゃなく総一郎さんも慌てて飛び出してきて、ねぼけまなこの三和を抱きしめた。
「あのね、いるかちゃんがびゅーんってとんでみずがじゃばーんってきて、みんなびちょびちょになってねおもしろかったの」
息をつくのももどかしいとばかりに話し出す三和にびっくりしながら両親がうんうんと話を聞いている。
「レオくんありがとうございました。疲れたでしょう」
「いえ、こちらこそ楽しかったです。愛衣も喜んでいたし、一緒に行ってくれてありがとうございました」
愛衣は別れが寂しいとベソをかき、また逢おうねと蜜に慰められていた。
「ぜったいよ。みつくんみわちゃんまたあそぼうね」
「また絶対に行こうね」
指切りげんまんをしてやっと愛衣は機嫌を直した。
「じゃあまたあした学校で」
「はい。ありがとうございました」
頭を下げる蜜は生徒の顔をしていている。
それが少しだけさみしかった。いつか恋人の表情を見せて欲しい。周防しか知らない蜜を見たい。
自分の中に深い欲望が芽吹いていく。
それは、もっと、と周防を煽りだす。今のままじゃ足りないよ。このままでいいはずがないだろうと。
愛衣を送り届け一人になると水族館で繋いだ指の感触を思い出した。まだ細く周防の手より小さなそれは大人になる強さを内に秘めている。
まだ発展途上の成長を一番そばで感じたい。
これからも変わっていく蜜を一番に見ていたい。
その為には今のままじゃだめだ。
いつか広い世界を知った蜜に飽きられないように周防ももっと進まなきゃ。
「ビビってる場合じゃないよな」
もういい大人なのだ。
いつまでも親の顔色を見たり忖度したり、誰かのせいにするのはやめたい。
過去を乗り切らなきゃ。
あの時のまま立ちすくむ自分の背中を押して、一歩前に進まなきゃ。
蜜とこれからの景色を見るために。
殊勝なことを思ったせいだろうか。時が動き出す。
きっかけは思いがけない相手からの電話によってもたらされた。それが蜜と離れる理由になるなんて、その時の周防には想像もつかなかった。
口をぽかりとあけた無防備な寝顔は微笑ましくていつまでも見ていたい気分だった。
「楽しかったな」
バックミラー越しに話しかけると蜜も満足そうにうなずいた。
「すっごく楽しかったです。連れてきてくれてありがとうございました」
その笑顔を見れただけで満たされてしまう。
蜜が喜ぶならばいつだってどこにだって連れて行ってあげたい。
教師と生徒が2人きりで会うのは許されないのかもしれない。
誰かに見つかったらまずいのはわかっているのに一緒にいたい気持ちに負けてしまう。
「また誘うよ。今度は遊園地とか」
「はい、あ、でも無理はしないでくださいね」
周防のビビリを蜜はちゃんとわかっている。
自分だってもっとこうしたい欲があるだろうに一歩引いて周防のできることを待ってくれている。
大人のくせに年下に気を使わせていることが情けない。
最近つくづく思うようになった。もっと勇気があれば。怖がる気持ちを克服できたら。
いつまで過去に縛られているのか。
「うん、大丈夫。無理はしてないから。愛衣も三和も一緒に行こ」
「喜びます。今日の話を両親に早く聞かせたいな」
今日一番興奮していたのは三和だった。最初こそモジモジしていたのに最後は愛衣の手を引いてどんどん先へと行きたがった。
子供の成長は早いというけれど、あんな爆発的な進化を目にしていつまでも立ちすくむ自分はなんなんだろうと思わされた。
みんなが前へと進んでいる。
周防だって進みたい。
蜜を幸せにしたいから、今のままじゃ絶対にダメだ。
送り届けると志穂さんだけじゃなく総一郎さんも慌てて飛び出してきて、ねぼけまなこの三和を抱きしめた。
「あのね、いるかちゃんがびゅーんってとんでみずがじゃばーんってきて、みんなびちょびちょになってねおもしろかったの」
息をつくのももどかしいとばかりに話し出す三和にびっくりしながら両親がうんうんと話を聞いている。
「レオくんありがとうございました。疲れたでしょう」
「いえ、こちらこそ楽しかったです。愛衣も喜んでいたし、一緒に行ってくれてありがとうございました」
愛衣は別れが寂しいとベソをかき、また逢おうねと蜜に慰められていた。
「ぜったいよ。みつくんみわちゃんまたあそぼうね」
「また絶対に行こうね」
指切りげんまんをしてやっと愛衣は機嫌を直した。
「じゃあまたあした学校で」
「はい。ありがとうございました」
頭を下げる蜜は生徒の顔をしていている。
それが少しだけさみしかった。いつか恋人の表情を見せて欲しい。周防しか知らない蜜を見たい。
自分の中に深い欲望が芽吹いていく。
それは、もっと、と周防を煽りだす。今のままじゃ足りないよ。このままでいいはずがないだろうと。
愛衣を送り届け一人になると水族館で繋いだ指の感触を思い出した。まだ細く周防の手より小さなそれは大人になる強さを内に秘めている。
まだ発展途上の成長を一番そばで感じたい。
これからも変わっていく蜜を一番に見ていたい。
その為には今のままじゃだめだ。
いつか広い世界を知った蜜に飽きられないように周防ももっと進まなきゃ。
「ビビってる場合じゃないよな」
もういい大人なのだ。
いつまでも親の顔色を見たり忖度したり、誰かのせいにするのはやめたい。
過去を乗り切らなきゃ。
あの時のまま立ちすくむ自分の背中を押して、一歩前に進まなきゃ。
蜜とこれからの景色を見るために。
殊勝なことを思ったせいだろうか。時が動き出す。
きっかけは思いがけない相手からの電話によってもたらされた。それが蜜と離れる理由になるなんて、その時の周防には想像もつかなかった。
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