66 / 119
第二章 Lion Heart
4
しおりを挟む
家へ帰ると蜜はそのまま二階にある自分の部屋へと駆け上がった。
周防とキスをした日は恥ずかしくて家族にばれるんじゃないかとハラハラする。
きっと顔も赤い。
心臓も高鳴ったままだ。
周防のキスは優しい。
触れ合った唇の柔らかさを感じているうちに周防の体温が伝わってきてとろけてしまう。
あのまま周防に飲み込まれてもいいと思う。
もっと激しく求めてくれたら。貪りつくすように蜜を求めてくれたら。
だけど絶対にそういうことはしないからと誓ったように、小さなキスだけが2人の間にある。
それだけでも十分だとは思う。
片思いで辛かった日々を思えば一緒にいて思い出を重ねることが出来るだけで満足しなきゃ。
だけどもっと周防を欲しいと思ってしまう蜜もいる。
恋人同士がどんなことをするのか知らないわけじゃない。きっと周防だって過去の恋人たちとはそういう経験もしてきてるだろう。
聞いたことはないけど、周防がずっとフリーだったとは考えられない。絶対にモテてる。
もし蜜がもっと大人だったら。
もしくは生徒じゃなかったら。
考えても無駄なことがいつだって頭をよぎる。
「蜜ご飯は?」
モダモダする思考を遮る母の声がして蜜は「今行く」と答えた。
鏡をみて普段と同じ顔なことを確かめてからリビングへと降りた。
キッチンで食事の用意をしてくれる母は周防の過去を知っている。聞けばきっと教えてくれるだろうけど聞きたくはない。
それに周防に好かれていた父にヤキモチを焼いてしまいそうだし。
過去は過去。
今は蜜を選んでくれた周防を信じてついていこうと決めたのだ。
「最近遅いけど大丈夫?」
ご飯をよそいながら母に聞かれて何でもないことのように答えた。
「ん~、委員会がね。忙しくて」
「へー。図書委員でしょ。商売繁盛ですか」
「今年になってからめちゃくちゃ混むんだよね。聞かれることばかりで結構大変」
「おや。それは可愛い蜜効果じゃないですか?」
蜜大好き母がニヤニヤとしながら問いかける。食べかけていたご飯を噴き出しかけて「やめてよ」と睨みつけた。
「親ばかが過ぎませんか」
「だって~私に似て蜜ってば可愛い顔をしてるんだもの。モテないはずがないしね。そういえばこの前蜜先輩いませんかって中学の制服を着た子がお店に来てたわ」
初耳である。
「そういうの全部断っておいて」
「えーいい子がいるかもよ」
「いや、いらないから」
いい人はもうとっくにいるのだ。
その人も蜜を選んでくれた。両親にはまだ言えないけど、他の人に全く興味はない。
「ふーん。青春しないんだ」
つまらなさそうに唇をとがらず母を置いて蜜は「ご馳走様でした」と席をたった。この話題につき合っていたらついうっかり口を滑らせてしまいそうだ。
両親が周防を信頼しているのは知っているけど息子の恋人となればどんな反応をするのかわからない。何も言われたくないから関わらないに限る。
「あん。蜜もっと話しようよ」
「ごめん宿題あるから。父さんと話してて」
やだーさみしいーと泣く母を置いて蜜は部屋へと戻った。
父と再婚して三和が産まれてからも母は蜜をかまいたがる。可愛い大好きと子供の時と変わらない愛情を示してくれるのは嬉しいけれど今はもう恥ずかしいからやめてほしい。
言うとすねるから黙っているけども。
置いたままにしていたスマホに周防から着信がないかと思ったけど何も残っていない。
くだらない会話がつづくクラスのメッセージがいくつも連なっているだけだった。
今頃先生は何をしているんだろう。
もう家へと帰っただろうか。そういえば周防のプライベートは謎に包まれている。何も話してくれないから聞けないでいるけど、どんな家でどんなふうに過ごしているんだろう。
いつかそれも知ることが出来るんだろうか。
付き合ったばかりの今は知らないことの方が多すぎる。
「先生のことをもっと知りたいよ」
言えば教えてくれるのかもしれない。
だけどどこか隠されている気持ちになるのは蜜がまだ子供だからか。同じ立場だったら、例えば小石川のようだったら違うんだろうか。
両想いと分かってからも不安はいつも隣にある。
周防にもっと近づきたいのに。それを許してもらえない壁があるのは気のせいだろうか。
周防とキスをした日は恥ずかしくて家族にばれるんじゃないかとハラハラする。
きっと顔も赤い。
心臓も高鳴ったままだ。
周防のキスは優しい。
触れ合った唇の柔らかさを感じているうちに周防の体温が伝わってきてとろけてしまう。
あのまま周防に飲み込まれてもいいと思う。
もっと激しく求めてくれたら。貪りつくすように蜜を求めてくれたら。
だけど絶対にそういうことはしないからと誓ったように、小さなキスだけが2人の間にある。
それだけでも十分だとは思う。
片思いで辛かった日々を思えば一緒にいて思い出を重ねることが出来るだけで満足しなきゃ。
だけどもっと周防を欲しいと思ってしまう蜜もいる。
恋人同士がどんなことをするのか知らないわけじゃない。きっと周防だって過去の恋人たちとはそういう経験もしてきてるだろう。
聞いたことはないけど、周防がずっとフリーだったとは考えられない。絶対にモテてる。
もし蜜がもっと大人だったら。
もしくは生徒じゃなかったら。
考えても無駄なことがいつだって頭をよぎる。
「蜜ご飯は?」
モダモダする思考を遮る母の声がして蜜は「今行く」と答えた。
鏡をみて普段と同じ顔なことを確かめてからリビングへと降りた。
キッチンで食事の用意をしてくれる母は周防の過去を知っている。聞けばきっと教えてくれるだろうけど聞きたくはない。
それに周防に好かれていた父にヤキモチを焼いてしまいそうだし。
過去は過去。
今は蜜を選んでくれた周防を信じてついていこうと決めたのだ。
「最近遅いけど大丈夫?」
ご飯をよそいながら母に聞かれて何でもないことのように答えた。
「ん~、委員会がね。忙しくて」
「へー。図書委員でしょ。商売繁盛ですか」
「今年になってからめちゃくちゃ混むんだよね。聞かれることばかりで結構大変」
「おや。それは可愛い蜜効果じゃないですか?」
蜜大好き母がニヤニヤとしながら問いかける。食べかけていたご飯を噴き出しかけて「やめてよ」と睨みつけた。
「親ばかが過ぎませんか」
「だって~私に似て蜜ってば可愛い顔をしてるんだもの。モテないはずがないしね。そういえばこの前蜜先輩いませんかって中学の制服を着た子がお店に来てたわ」
初耳である。
「そういうの全部断っておいて」
「えーいい子がいるかもよ」
「いや、いらないから」
いい人はもうとっくにいるのだ。
その人も蜜を選んでくれた。両親にはまだ言えないけど、他の人に全く興味はない。
「ふーん。青春しないんだ」
つまらなさそうに唇をとがらず母を置いて蜜は「ご馳走様でした」と席をたった。この話題につき合っていたらついうっかり口を滑らせてしまいそうだ。
両親が周防を信頼しているのは知っているけど息子の恋人となればどんな反応をするのかわからない。何も言われたくないから関わらないに限る。
「あん。蜜もっと話しようよ」
「ごめん宿題あるから。父さんと話してて」
やだーさみしいーと泣く母を置いて蜜は部屋へと戻った。
父と再婚して三和が産まれてからも母は蜜をかまいたがる。可愛い大好きと子供の時と変わらない愛情を示してくれるのは嬉しいけれど今はもう恥ずかしいからやめてほしい。
言うとすねるから黙っているけども。
置いたままにしていたスマホに周防から着信がないかと思ったけど何も残っていない。
くだらない会話がつづくクラスのメッセージがいくつも連なっているだけだった。
今頃先生は何をしているんだろう。
もう家へと帰っただろうか。そういえば周防のプライベートは謎に包まれている。何も話してくれないから聞けないでいるけど、どんな家でどんなふうに過ごしているんだろう。
いつかそれも知ることが出来るんだろうか。
付き合ったばかりの今は知らないことの方が多すぎる。
「先生のことをもっと知りたいよ」
言えば教えてくれるのかもしれない。
だけどどこか隠されている気持ちになるのは蜜がまだ子供だからか。同じ立場だったら、例えば小石川のようだったら違うんだろうか。
両想いと分かってからも不安はいつも隣にある。
周防にもっと近づきたいのに。それを許してもらえない壁があるのは気のせいだろうか。
6
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
初戀
槙野 シオ
BL
どうすることが正解で、どうすることが普通なのかわからなかった。
中三の時の進路相談で、おまえならどの高校でも大丈夫だと言われた。模試の結果はいつもA判定だった。進学校に行けば勉強で忙しく、他人に構ってる暇なんてないひとたちで溢れ返ってるだろうと思って選んだ学校には、桁違いのイケメンがいて大賑わいだった。
僕の高校生活は、嫌な予感とともに幕を開けた。
ヤンキーDKの献身
ナムラケイ
BL
スパダリ高校生×こじらせ公務員のBLです。
ケンカ上等、金髪ヤンキー高校生の三沢空乃は、築51年のオンボロアパートで一人暮らしを始めることに。隣人の近間行人は、お堅い公務員かと思いきや、夜な夜な違う男と寝ているビッチ系ネコで…。
性描写があるものには、タイトルに★をつけています。
行人の兄が主人公の「戦闘機乗りの劣情」(完結済み)も掲載しています。
47歳のおじさんが異世界に召喚されたら不動明王に化身して感謝力で無双しまくっちゃう件!
のんたろう
ファンタジー
異世界マーラに召喚された凝流(しこる)は、
ハサンと名を変えて異世界で
聖騎士として生きることを決める。
ここでの世界では
感謝の力が有効と知る。
魔王スマターを倒せ!
不動明王へと化身せよ!
聖騎士ハサン伝説の伝承!
略称は「しなおじ」!
年内書籍化予定!
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
創作BL)相模和都のカイキなる日々
黑野羊
BL
「カズトの中にはボクの番だった狛犬の『バク』がいるんだ」
小さい頃から人間やお化けにやたらと好かれてしまう相模和都は、新学期初日、元狛犬のお化け・ハクに『鬼』に狙われていると告げられる。新任教師として人間に混じった『鬼』の狙いは、狛犬の生まれ変わりだという和都の持つ、いろんなものを惹き寄せる『狛犬の目』のチカラ。霊力も低く寄ってきた悪霊に当てられてすぐ倒れる和都は、このままではあっという間に『鬼』に食べられてしまう。そこで和都は、霊力が強いという養護教諭の仁科先生にチカラを分けてもらいながら、『鬼』をなんとかする方法を探すのだが──。
オカルト×ミステリ×ラブコメ(BL)の現代ファンタジー。
「*」のついている話は、キスシーンなどを含みます。
※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています。
※Pixiv、Xfolioでは分割せずに掲載しています。
===
主な登場人物)
・相模和都:本作主人公。高校二年、お化けが視える。
・仁科先生:和都の通う高校の、養護教諭。
・春日祐介:和都の中学からの友人。
・小坂、菅原:和都と春日のクラスメイト。

ふつつかものですが鬼上司に溺愛されてます
松本尚生
BL
「お早うございます!」
「何だ、その斬新な髪型は!」
翔太の席の向こうから鋭い声が飛んできた。係長の西川行人だ。
慌てん坊でうっかりミスの多い「俺」は、今日も時間ギリギリに職場に滑り込むと、寝グセが跳ねているのを鬼上司に厳しく叱責されてーー。新人営業をビシビシしごき倒す係長は、ひと足先に事務所を出ると、俺の部屋で飯を作って俺の帰りを待っている。鬼上司に甘々に溺愛される日々。「俺」は幸せになれるのか!?
俺―翔太と、鬼上司―ユキさんと、彼らを取り巻くクセの強い面々。斜陽企業の生き残りを賭けて駆け回る、「俺」たちの働きぶりにも注目してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる