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第一章 First love
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いい先生であろうとする周防を好きになってしまった。
迷惑をかけてしまう事も、タブーを犯してしまう事も構わないくらい好きだから。許されなくても周防が欲しい。
「ダメなぼくじゃいけない?」
一瞬の逡巡の後、周防は蜜を抱きしめた。
大きな腕の中に閉じ込められると自分の居場所なんだと思えるほど安心する。ここにいつまでもいたいと思ってしまう。
周防の声が体を通して響いてくる。
「蜜が好きだって言ってくれた時にさ、本当は応えたかったよ。おれも好きだって言いたかった。でも無理矢理こらえて耐えたのに……辛抱がたらんよな」
周防の言葉に蜜は驚いたように声をあげた。
「あの時から好きでいてくれたの?」
「もっと前からだよ。言っただろ、もし同じ立場だったらつき合おうって言えたのにって。でも教師だからダメだって。それ以外の何物でもないよ」
あの時の言葉は蜜を慰めるためでもなく正直に本当のことを言ってくれていたのか。失恋したと泣いたけどきっと周防も同じように泣いていた気がする。
本当にこの人は不器用すぎる。
「先生。じゃあ、ぼくを先生のものにしてくれる?」
聞くとグリグリと蜜の肩口に頭を押しつけて唸った。
「したい。めっちゃしたい。蜜をおれのものにしちゃいたい。でも絶対に手は出さない。お世話になった人たちに顔向けのできないことは絶対にしない。それだけは絶対に守りたい」
まるで自分に言い聞かせるように呟いている。
何が周防をそこまで縛るのか蜜にはわからなかったけれど、それでも超えようとしてくれる気持ちを汲みたいと思った。
それでもいいよ、と蜜は言った。
「それでもいいから一緒にいたい」
周防は肩に額を押しつけたまま確認するように言葉を続けた。
これで断られたらそれまでだとどこか達観したような響きで。
「普通の恋人らしいことはできなくてもいいの? デートにも連れて行ってあげられないし、恋人だって誰にも言えない。必要があれば他の生徒のプライベートにも顔を出すし誰かの悩みには真摯に寄り添うつもり。蜜だけを特別扱いできない甲斐性なしの男でも好きでいてくれる?」
「もちろん」
蜜は答えた。
言われなくてもずっと周防をすきでいるつもりだったし、諦める予定もなかった。そばにいて時間をかけてじっくり蜜を好きになってもらいたい。そう思っていたから。
周防は顔を上げ眩しそうに蜜を見た。どこか憧れを込めた目で。
「お前は本当に強くてかっこいいよな。潔くてたくましい。そういうところもすごく好きだよ」
何かが吹っ切れたように笑う周防の瞳はキラキラと輝き、見ていると照れるくらい蜜を映し出している。目は嘘をつかないっていうけどそれって本当かもしれない。
今の周防は蜜を好きで仕方ないって顔をしている。
それって自惚れかもしれないけど、今日くらいは浮つかせてもらおう。
「もしかして先生ってけっこうぼくのこと好きだったりする?」
聞くと当たり前だろ、と返ってきた。
「ものすごく好きだよ。よく隠しおおせていたと我ながら感心するくらい好きだよ」
コツリとおでこを合わせると秘密を交わし合う様に手を繋いだ。
「おれの共犯者になってくれる?」
「どこまでも一緒です」
周防は静かに微笑むとまるで誓いのキスのように蜜の額に唇を押しつけた。
きっとこれからたくさんの問題も出てくるだろう。その都度悩むかもしれない。迷うかもしれない。
だけどこの誓いを覚えていたらきっと乗り越えることが出来る気がする。
周防は息を吐くと「さて」と呟いた。
「これから怪我をさせたことを謝りに行くっていうのに、もう一個心の中で謝らなきゃならんことが増えたよな。つーかそっちの方が重大っていうか、申し訳ないっていうか、居たたまれない」
とりあえず最初の難関に「がんばって」と言ってから、蜜は笑った。
嬉しくて幸せで、吉崎のことは絶対許さないけどタイミングをサンキューと現金なことを思ったりもした。
きっとこの日のことを忘れないだろう。
「じゃあ行きますか」
覚悟を決めたように車が動き出す。
これから先に何があっても絶対好きでいるから。甘くてとろける日々を送りましょう。
→第2章へ続く
迷惑をかけてしまう事も、タブーを犯してしまう事も構わないくらい好きだから。許されなくても周防が欲しい。
「ダメなぼくじゃいけない?」
一瞬の逡巡の後、周防は蜜を抱きしめた。
大きな腕の中に閉じ込められると自分の居場所なんだと思えるほど安心する。ここにいつまでもいたいと思ってしまう。
周防の声が体を通して響いてくる。
「蜜が好きだって言ってくれた時にさ、本当は応えたかったよ。おれも好きだって言いたかった。でも無理矢理こらえて耐えたのに……辛抱がたらんよな」
周防の言葉に蜜は驚いたように声をあげた。
「あの時から好きでいてくれたの?」
「もっと前からだよ。言っただろ、もし同じ立場だったらつき合おうって言えたのにって。でも教師だからダメだって。それ以外の何物でもないよ」
あの時の言葉は蜜を慰めるためでもなく正直に本当のことを言ってくれていたのか。失恋したと泣いたけどきっと周防も同じように泣いていた気がする。
本当にこの人は不器用すぎる。
「先生。じゃあ、ぼくを先生のものにしてくれる?」
聞くとグリグリと蜜の肩口に頭を押しつけて唸った。
「したい。めっちゃしたい。蜜をおれのものにしちゃいたい。でも絶対に手は出さない。お世話になった人たちに顔向けのできないことは絶対にしない。それだけは絶対に守りたい」
まるで自分に言い聞かせるように呟いている。
何が周防をそこまで縛るのか蜜にはわからなかったけれど、それでも超えようとしてくれる気持ちを汲みたいと思った。
それでもいいよ、と蜜は言った。
「それでもいいから一緒にいたい」
周防は肩に額を押しつけたまま確認するように言葉を続けた。
これで断られたらそれまでだとどこか達観したような響きで。
「普通の恋人らしいことはできなくてもいいの? デートにも連れて行ってあげられないし、恋人だって誰にも言えない。必要があれば他の生徒のプライベートにも顔を出すし誰かの悩みには真摯に寄り添うつもり。蜜だけを特別扱いできない甲斐性なしの男でも好きでいてくれる?」
「もちろん」
蜜は答えた。
言われなくてもずっと周防をすきでいるつもりだったし、諦める予定もなかった。そばにいて時間をかけてじっくり蜜を好きになってもらいたい。そう思っていたから。
周防は顔を上げ眩しそうに蜜を見た。どこか憧れを込めた目で。
「お前は本当に強くてかっこいいよな。潔くてたくましい。そういうところもすごく好きだよ」
何かが吹っ切れたように笑う周防の瞳はキラキラと輝き、見ていると照れるくらい蜜を映し出している。目は嘘をつかないっていうけどそれって本当かもしれない。
今の周防は蜜を好きで仕方ないって顔をしている。
それって自惚れかもしれないけど、今日くらいは浮つかせてもらおう。
「もしかして先生ってけっこうぼくのこと好きだったりする?」
聞くと当たり前だろ、と返ってきた。
「ものすごく好きだよ。よく隠しおおせていたと我ながら感心するくらい好きだよ」
コツリとおでこを合わせると秘密を交わし合う様に手を繋いだ。
「おれの共犯者になってくれる?」
「どこまでも一緒です」
周防は静かに微笑むとまるで誓いのキスのように蜜の額に唇を押しつけた。
きっとこれからたくさんの問題も出てくるだろう。その都度悩むかもしれない。迷うかもしれない。
だけどこの誓いを覚えていたらきっと乗り越えることが出来る気がする。
周防は息を吐くと「さて」と呟いた。
「これから怪我をさせたことを謝りに行くっていうのに、もう一個心の中で謝らなきゃならんことが増えたよな。つーかそっちの方が重大っていうか、申し訳ないっていうか、居たたまれない」
とりあえず最初の難関に「がんばって」と言ってから、蜜は笑った。
嬉しくて幸せで、吉崎のことは絶対許さないけどタイミングをサンキューと現金なことを思ったりもした。
きっとこの日のことを忘れないだろう。
「じゃあ行きますか」
覚悟を決めたように車が動き出す。
これから先に何があっても絶対好きでいるから。甘くてとろける日々を送りましょう。
→第2章へ続く
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