sugar sugar honey! 甘くとろける恋をしよう

乃木のき

文字の大きさ
上 下
49 / 119
第一章 First love

同窓会

しおりを挟む
 周防との距離は適度に保たれたまま季節は動いた。
 最初こそおかれた距離にさみしくなったけど、毎日会えるし普通に話したりできるからそれだけでもいいことにする___なんて強がりを心の中で繰り返している。

 だって仕方ない。
 好きな気持ちは変わらなかったし、2人の立場も同じように変わらないから。平行線ってこういうものなんだなとひとつ賢くなる。

 中学の同窓会をやろうと連絡が来たのは秋も深まったころだった。
 吹く風も冷たくカサカサと枯葉が舞う季節。

「同窓会って早くない?」

 電話越しに中学の時に仲が良かった三田みた興志こうしに言うと「だよなあ」とのんびりとした返事が返ってきた。

「でも高校に入って半年くらい経ったし、そろそろ昔の友達も大切にしようねって意見で盛り上がったらしくてさ~」

 とりあえず正規の学年全体の同窓会ではなく3年生の時のクラスで集まって遊ぼうよという話らしかった。
 マンモス校だったわりにクラスの雰囲気はよく、それなりに仲の良かった印象がある。

「どうしよっかな」

 自意識過剰と言われるかもしれないけど、また女子に囲まれるのかと思うと少し気が滅入った。今は穏やかな高校生活を送れているからなおさら。
 男子だけの気楽さに慣れてしまえば女子の騒がしさは不快ともいえた。

 三田は蜜の気持ちを見抜いたのか「女がいるから嫌だとか言うなよ贅沢者め」と先手を打った。

「つーかもしかして蜜って女ダメな系? そっち男子校だよな」

 聞かれてギクリとする。
 女の子が苦手なのは自覚していたけれど恋愛対象が男とは全く思っていなかった。というか恋愛自体に興味がなかったから。

 でも周防に恋をして「もしかして男性が好きなのか?」と自問したけれど答えはノーだった。だって小石川にも太一にも裕二にもときめかない。
 もしかして、が、絶対に起こらない。
  
 周防だけが特別なのだ。

「そういうんじゃないけど。でも女子は苦手。囲まれた時の迫力がさ……」

 ぼやくと三田はフンと鼻を鳴らし「絶対参加なお前」と嚙みついた。電話の先で鼻息を荒くしている姿が想像できた。

「女子が苦手、とか言ってみてーわ。囲まれたこともないしさ」

「言えばいいじゃん」

「言うはずねーじゃん。大歓迎だよ俺は!」

 真正直な三田の迫力に蜜は笑ってしまい「興志が行くなら一緒に参加でいいよ」と答えた。
 昔から素直で真っすぐで正直な奴だった。でもそれで玉砕してばかりなのも思い出す。

「でも女子とどうこうっていうのは無しでね。恋人を作るためとかそういうのなら行かない」

「わかった。言っとく」

 蜜も参加、と呟くと、三田はさっきの会話を繰り返した。

「っていうかやっぱあれなの、男子校って恋人が男的な」

 まだ終わってなかったのか。
 確かに男子校と言えばそういう勘違いをされたりもするけど直接聞かれたのは初めてだ。

「いや?」と蜜は反論した。
 けっこうみんな外に彼女を作ったりしているそうだから。太一もそうだ。

「ぼくの友達は女子大生と付き合ってるからな。バイトとかそういうので外部に彼女がいる人も多いみたいだよ」

「女子大生!!!」

 かぶさるように三田の大声が響く。キーンとした痛みに耳を押えると興奮しているのか「紹介して!!!」と食いつきがすごい。

「なんだよそれ女子大生って、おい。合コン参加でお願いします」

「合コンって。遊ぼうって誘われてはいるけど……そうだね、機会があれば」

 そのうちね、と言ったまますっかり忘れていた。
 太一も忙しいのかあれ以来誘っても来なかった。今はバンド活動がかなり活発らしく放課後もすぐにいなくなる。

「ありがとうございます! 蜜様!」

 今日電話してよかった、と三田はかなりテンションが高くなっているようだった。声が興奮を伝えている。

 そんなに女子大生っていいかな。

 想像してみる。
 女子大生と一緒にいる自分を。綺麗でおしゃれでいい匂いのする年上の女の人。隣でおしゃべりしたり、仲良くしたり……やっぱりなんか違うかなとすぐに答えが出た。今はまだ周防に片思いでいい。

「じゃあ、当日会えるの楽しみにしてるな。その前に合コンでもオッケーだけど」

「ははっ、ないと思うけど。うん、会えるの楽しみにしてる」

 電話を切るとベッドに転がった。
 中学時代っていうとまだ周防を知らなかった頃。あの頃毎日をどうやって過ごしていたのか、今となっては思い出せない。
 霞に覆われた遠い昔のことに思えた。

 あの頃からまだ数か月しかたっていないのにずいぶんと環境も変わった。蜜自身さえも。
 昔の自分より今の方がよっぽど人らしい。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

Sweet☆Sweet~蜂蜜よりも甘い彼氏ができました

葉月めいこ
BL
紳士系ヤクザ×ツンデレ大学生の年の差ラブストーリー 最悪な展開からの運命的な出会い 年の瀬――あとひと月もすれば今年も終わる。 そんな時、新庄天希(しんじょうあまき)はなぜかヤクザの車に乗せられていた。 人生最悪の展開、と思ったけれど。 思いがけずに運命的な出会いをしました。

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

没落貴族の愛され方

シオ
BL
魔法が衰退し、科学技術が躍進を続ける現代に似た世界観です。没落貴族のセナが、勝ち組貴族のラーフに溺愛されつつも、それに気付かない物語です。 ※攻めの女性との絡みが一話のみあります。苦手な方はご注意ください。

処理中です...