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第一章 First love
テスト週間
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一学期最後の試練がやってくる。
テスト範囲が提示されると教室は阿鼻叫喚の地獄絵図になった。
もちろん勉強が本職なんだけど他に楽しいことがいっぱいありすぎて、テストの事なんて全く頭になかったひとたちが教室で頭を抱えている。
蜜もその中の一人だ。
先日発覚した初恋に心がとらわれすぎていた。
一週間前からは職員室への立ち寄りも用事のない教師への接触も一切が禁止になった。
もちろんわからないことを聞きに行くのはいいけれど、お互いの潔白のために個人的に接することはよしとされていない。
周防はなるべく教室にいて生徒たちの質問に答えらえるようにしていたけれど、蜜にとってはさらに距離が開いた気がしてしまった。
今までだって特別なわけじゃない。
勝手に嫉妬して落ち込んでいる事に気がつくはずもない。
送ってもらったくせに態度が悪かったのはこっちだし、先に出会っていたのは両親の方なんだから蜜がとやかく言うことではないのだ。
わかっているのに気持ちがついていかない。
ギクシャクとしているのは蜜ばかりで周防には何の変化もないのもさらに腹立たしかった。
自分ばかりが翻弄されている。
「どした、蜜なんか元気なくない?」
「勉強のし過ぎか?」
太一も裕二もささやかな変化に気がついて心配そうに声をかけてくれた。
そんなに顔に出ていたのかと焦りながらわざとらしいくらい元気な声を出した。
「えーそう? やっぱテスト前だからかな」
「わかる。範囲やばいもん。焦るよな」
「赤点だけは避けたい」
そこそこの進学校だから赤点は結構厳しい扱いを受ける。
楽しい夏休みの前にここが頑張りどころだということは承知している。勉強に打ち込もうとするのにすぐに頭の中は周防でいっぱいになり、はかどらないことに蜜はイラついてもいた。
自分の心なのにうまくコントロールができない。自由にならない。
別に先生なんか好きじゃない、と呪文のように唱えたけれどさらに意識することになってその作戦は失敗に終わった。
家に帰って部屋に閉じこもっていても、駐車場で車が動く音がしたら周防かもしれないとのぞきにいってしまう。
違うとわかって舌打ちをした。
どうせ店にいる周防を見たって心がざわつくのだ。
見ないに越したことはないのに、会いたいと思う矛盾。
蜜に好きだと告白してくれた子たちはみんなこんなわけのわからないものに翻弄されていたんだろうか。だったら申し訳なかった。もっと親身に答えるべきだった。
そもそも蜜なんかに苦しむ必要はなかったのに。
こんなにちっぽけで子供じみた奴なんて、好きになってもらえる資格がない。そばにいたらきっと呆れるだろう。
机に突っ伏していたらスマホが音を立ててメッセージの着信を教えた。
周防からだった。急いで開く。
『一応だけどテスト期間だから店にもいかないことにする。送ってもやれないけどテストがんばれよ』
たったそれだけの文面を何度も読み返した。
わざわざ言われなくてもわかってますよ、と声に出す。どっちみちいつも一緒に帰っているわけじゃないし。次の約束をしているわけじゃないし。
気にかけてくれたメッセージが嬉しいのに、感じる距離感がさみしい。
テスト範囲が提示されると教室は阿鼻叫喚の地獄絵図になった。
もちろん勉強が本職なんだけど他に楽しいことがいっぱいありすぎて、テストの事なんて全く頭になかったひとたちが教室で頭を抱えている。
蜜もその中の一人だ。
先日発覚した初恋に心がとらわれすぎていた。
一週間前からは職員室への立ち寄りも用事のない教師への接触も一切が禁止になった。
もちろんわからないことを聞きに行くのはいいけれど、お互いの潔白のために個人的に接することはよしとされていない。
周防はなるべく教室にいて生徒たちの質問に答えらえるようにしていたけれど、蜜にとってはさらに距離が開いた気がしてしまった。
今までだって特別なわけじゃない。
勝手に嫉妬して落ち込んでいる事に気がつくはずもない。
送ってもらったくせに態度が悪かったのはこっちだし、先に出会っていたのは両親の方なんだから蜜がとやかく言うことではないのだ。
わかっているのに気持ちがついていかない。
ギクシャクとしているのは蜜ばかりで周防には何の変化もないのもさらに腹立たしかった。
自分ばかりが翻弄されている。
「どした、蜜なんか元気なくない?」
「勉強のし過ぎか?」
太一も裕二もささやかな変化に気がついて心配そうに声をかけてくれた。
そんなに顔に出ていたのかと焦りながらわざとらしいくらい元気な声を出した。
「えーそう? やっぱテスト前だからかな」
「わかる。範囲やばいもん。焦るよな」
「赤点だけは避けたい」
そこそこの進学校だから赤点は結構厳しい扱いを受ける。
楽しい夏休みの前にここが頑張りどころだということは承知している。勉強に打ち込もうとするのにすぐに頭の中は周防でいっぱいになり、はかどらないことに蜜はイラついてもいた。
自分の心なのにうまくコントロールができない。自由にならない。
別に先生なんか好きじゃない、と呪文のように唱えたけれどさらに意識することになってその作戦は失敗に終わった。
家に帰って部屋に閉じこもっていても、駐車場で車が動く音がしたら周防かもしれないとのぞきにいってしまう。
違うとわかって舌打ちをした。
どうせ店にいる周防を見たって心がざわつくのだ。
見ないに越したことはないのに、会いたいと思う矛盾。
蜜に好きだと告白してくれた子たちはみんなこんなわけのわからないものに翻弄されていたんだろうか。だったら申し訳なかった。もっと親身に答えるべきだった。
そもそも蜜なんかに苦しむ必要はなかったのに。
こんなにちっぽけで子供じみた奴なんて、好きになってもらえる資格がない。そばにいたらきっと呆れるだろう。
机に突っ伏していたらスマホが音を立ててメッセージの着信を教えた。
周防からだった。急いで開く。
『一応だけどテスト期間だから店にもいかないことにする。送ってもやれないけどテストがんばれよ』
たったそれだけの文面を何度も読み返した。
わざわざ言われなくてもわかってますよ、と声に出す。どっちみちいつも一緒に帰っているわけじゃないし。次の約束をしているわけじゃないし。
気にかけてくれたメッセージが嬉しいのに、感じる距離感がさみしい。
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