sugar sugar honey！ 甘くとろける恋をしよう

第一章 First love

4

「真面目でいい子だなって思うし、信頼できるなっていうのがベース。でも結構怒りっぽかったりコロコロ表情が変わりやすいところもあるだろ。スイッチがよくわからん」
「……や、そんなこと……ないと思う、けど」
「さっきも結構怒ってただろ」
「さっき？」
　
　と、聞きかけて、教務室でのやり取りの事を思い出した。
　あれは周防にイラついていたというより、からかってきた小石川にむかついていたというのが正解だ。

「だって人の顔をじろじろ見て悪人扱いしたうえ、いきなりフルネームで呼ぶんですよ。『君がおいしそうな佐藤蜜』って。失礼にもほどがある」
　やり取りを思い出すと、再びイライラに火がついてきそうになる。

「まあ、そうだな。そりゃ怒るよな。ごめんな、頼み事したのに嫌な気分にさせてしまって」
　また謝る。
　だから悪いのは小石川であって周防じゃない。
　なんであなたが謝るんだと蜜は唇を尖らせた。

「入学式の日にさ、つい、あいつにしゃべっちゃったんだよ。蜜のことを美味しそうって言っちゃったって。大笑いして、蜜に早く会いたいって言ってたから嬉しかったんだろ」

　そんなことがあったのか。
　蜜はフンと鼻を鳴らすと横目でにらみながら聞いた。

「先生とあのひとって仲がいいんですか？」
「なんで？」
「レオって名前で呼んでいたし、ぼくの事とか先生同士で話すのかなって」
　
　距離が近い気がしたのだ。
　口調も砕けていたし、何より空気のようなものが近しい人同士に思えた。

　周防は少しだけ考えるように口を閉ざすと、小さく笑みを浮かべた。

「中学からの腐れ縁だよ。そのまま高校、大学も一緒で、配属された学校まで一緒っていう」
「そんなことあるんですか？」
「あったんだわ。なんていうの、子供のころからのいろんなことを知られちゃってる相手ってあいつくらいかも」
「ふーん……」

　知り合ったばかりの蜜には知らない二人の長い時間があの空気を作っていたのだ。
　蜜の知っている周防と、小石川の知ってる周防は全然違うのだろう。