3 / 119
第一章 First love
3
しおりを挟む
放課後のファストフート店でポテトを食べながら裕二が秘密を分け合うかのように小さな声で言った。
「お前らって彼女とかいんの?」
通う高校は男子校だった。当然女子の姿はどこにもない。
でもバイトや部活や同中の女の子と仲良くなってそれなりに楽しんでいる奴は多いらしかった。
「いるよ」と太一はケロっとして答えた。
「まじかよ」
「え? どんな子? 可愛い?」
「うーん、可愛いっていうか、綺麗なお姉さん」
「はー? 年上かよ」
「そう、家庭教師の女子大生。めっちゃ美人」
ジュースを飲みながら少しだけ誇らし気な太一は、なるほど年上にもてそうな雰囲気ではある。
猫みたいにキュって上がった目元とか、フワフワの髪型とか、どこか柔らかく人懐っこい感じが可愛く見えるんだろう。
年上のお姉さんによしよしされている姿が目に浮かぶようだ。
「なんだよー卑怯者っ」
「ははは、わりいね」
「もうお前と口きかねえ」
「そういうなってー」
「じゃあ、女子大生のお友達を紹介して」
と、不貞腐れたり現金なことを言い出す裕二は3人の中では一番しっかりものだ。
きりっと涼やかな顔つきに短髪で爽やかなのは、ずっと野球をやってきたからだろう。今もほとんど毎日暗くなるまで練習に励んでいる。
たまの休みはこうやって一緒に出掛けるけれど、だいたいいつも忙しそうにしていて、彼女どころではないのかもしれない。
でも絶対もてると思う。
そして蜜はといえば。
実はまだ恋をしたことがない。
告白は何度かされたことはあるけれど、「好き」という感情がまだわからない。
そういうと二人はものすごく驚いた顔をして「もったいねー!」と叫んだ。
「ええ! なーにー蜜くんってば初恋もまだ?!」
「っていうか、そんな綺麗な顔をしててもったいない。よりどりみどりじゃん」
昔から綺麗な子とは言われてきた。
すっきりと整った顔立ち。サラサラで色素の薄めの髪。スラリとした体つきで王子様然とした雰囲気は女子に大人気だったらしい。自分ではあまりよくわからないけど。
そして何故か一部の男子にも、もてた。
でも「好き」という生々しい感情をぶつけられても困るだけだった。
自分勝手に盛り上がり押しつけられる感情をどうしろというのか。何を求めて赤裸々な気持ちを打ち明けるのか。
蜜にはどうしてもわからなかった。
同じ気持ちを返してあげれない。
断るたびに泣く女の子とそれを責める友達の姿に途方に暮れた。
だからどこか冷めた心の痛みが『恋』というもののイメージになった。
「お前らって彼女とかいんの?」
通う高校は男子校だった。当然女子の姿はどこにもない。
でもバイトや部活や同中の女の子と仲良くなってそれなりに楽しんでいる奴は多いらしかった。
「いるよ」と太一はケロっとして答えた。
「まじかよ」
「え? どんな子? 可愛い?」
「うーん、可愛いっていうか、綺麗なお姉さん」
「はー? 年上かよ」
「そう、家庭教師の女子大生。めっちゃ美人」
ジュースを飲みながら少しだけ誇らし気な太一は、なるほど年上にもてそうな雰囲気ではある。
猫みたいにキュって上がった目元とか、フワフワの髪型とか、どこか柔らかく人懐っこい感じが可愛く見えるんだろう。
年上のお姉さんによしよしされている姿が目に浮かぶようだ。
「なんだよー卑怯者っ」
「ははは、わりいね」
「もうお前と口きかねえ」
「そういうなってー」
「じゃあ、女子大生のお友達を紹介して」
と、不貞腐れたり現金なことを言い出す裕二は3人の中では一番しっかりものだ。
きりっと涼やかな顔つきに短髪で爽やかなのは、ずっと野球をやってきたからだろう。今もほとんど毎日暗くなるまで練習に励んでいる。
たまの休みはこうやって一緒に出掛けるけれど、だいたいいつも忙しそうにしていて、彼女どころではないのかもしれない。
でも絶対もてると思う。
そして蜜はといえば。
実はまだ恋をしたことがない。
告白は何度かされたことはあるけれど、「好き」という感情がまだわからない。
そういうと二人はものすごく驚いた顔をして「もったいねー!」と叫んだ。
「ええ! なーにー蜜くんってば初恋もまだ?!」
「っていうか、そんな綺麗な顔をしててもったいない。よりどりみどりじゃん」
昔から綺麗な子とは言われてきた。
すっきりと整った顔立ち。サラサラで色素の薄めの髪。スラリとした体つきで王子様然とした雰囲気は女子に大人気だったらしい。自分ではあまりよくわからないけど。
そして何故か一部の男子にも、もてた。
でも「好き」という生々しい感情をぶつけられても困るだけだった。
自分勝手に盛り上がり押しつけられる感情をどうしろというのか。何を求めて赤裸々な気持ちを打ち明けるのか。
蜜にはどうしてもわからなかった。
同じ気持ちを返してあげれない。
断るたびに泣く女の子とそれを責める友達の姿に途方に暮れた。
だからどこか冷めた心の痛みが『恋』というもののイメージになった。
6
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
【完結】嘘はBLの始まり
紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。
突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった!
衝撃のBLドラマと現実が同時進行!
俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡
※番外編を追加しました!(1/3)
4話追加しますのでよろしくお願いします。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…
まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。
5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。
相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。
一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。
唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。
それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。
そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。
そこへ社会人となっていた澄と再会する。
果たして5年越しの恋は、動き出すのか?
表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる