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第一章 First love
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何だこの人、というのが最初の印象だった。
いい大人の男が受け持ちの生徒の名前を呼んで「おいしそう」とは。変態教師かよ! と心の中で顔をしかめる。
だけど周防はすぐに次の生徒の名前を呼び、気にした蜜の方がなんとなく恥ずかしくなった。
深い意味はなく、彼はただ名前の響きに思いつきで言っただけなのだろう。ずいぶんスイートな名前だな、と。
短いホームルームが終わるとすぐさま入学式で、名前の順に整列した。
しっかり名前を呼ばれたせいで、クラスに「さとうみつ」というふざけた名前はしっかりと認識されたらしい。
前後の奴らに「佐藤蜜ってマジで?」と笑われた。
「そう、ふざけてるけどマジ」と答える。
「なんかいいね。覚えやすくて」
「しかもおいしそうだし」
また「おいしそう」だ。
確かに「佐藤」も「蜜」も甘そうだ。甘すぎて胸焼けしそうになる。蜜自身は辛党だから甘さに用はないというのに。
「つーか両親のセンス面白いね」
「うん、なんか似合ってるし」
そう言いながら盛り上がっているのは、前に並ぶ後藤裕二と後ろの鈴木太一。
ふたりともからかうつもりはないらしい。
カラっと乾いた笑いに一緒に乗っかっていたらどうでもいいかって気分になってきた。気持ちが明るくなる。
こういう時、まあ、話題つくりになっていいのかなって少しだけ思う。
担任はちょっとアレな感じだけど滑り出しは良好。
なんとか高校でもやっていけそうな気がする。
裕二と太一とはすぐに仲良くなれた。
三人ともタイプは違うのに話は合って、聞く音楽も似ていて話題に事欠かない。
全員出身中学が違ったのもよかったのかもしれない。変にグループでつるんだり、昔の話題を出さなくて済むから。
あれってなんなんだろうな。
環境が変わったのに「おれ知ってるんだけど~」って変なプライドを見せているようで憐れみさえ感じる。
裕二も太一も同じ考えらしく、昔のことは昔。今は今で楽しむというスタンスなのがすごくよかった。
だから部活の後や休みの日にも一緒に過ごすことが多くなっていった。
いい大人の男が受け持ちの生徒の名前を呼んで「おいしそう」とは。変態教師かよ! と心の中で顔をしかめる。
だけど周防はすぐに次の生徒の名前を呼び、気にした蜜の方がなんとなく恥ずかしくなった。
深い意味はなく、彼はただ名前の響きに思いつきで言っただけなのだろう。ずいぶんスイートな名前だな、と。
短いホームルームが終わるとすぐさま入学式で、名前の順に整列した。
しっかり名前を呼ばれたせいで、クラスに「さとうみつ」というふざけた名前はしっかりと認識されたらしい。
前後の奴らに「佐藤蜜ってマジで?」と笑われた。
「そう、ふざけてるけどマジ」と答える。
「なんかいいね。覚えやすくて」
「しかもおいしそうだし」
また「おいしそう」だ。
確かに「佐藤」も「蜜」も甘そうだ。甘すぎて胸焼けしそうになる。蜜自身は辛党だから甘さに用はないというのに。
「つーか両親のセンス面白いね」
「うん、なんか似合ってるし」
そう言いながら盛り上がっているのは、前に並ぶ後藤裕二と後ろの鈴木太一。
ふたりともからかうつもりはないらしい。
カラっと乾いた笑いに一緒に乗っかっていたらどうでもいいかって気分になってきた。気持ちが明るくなる。
こういう時、まあ、話題つくりになっていいのかなって少しだけ思う。
担任はちょっとアレな感じだけど滑り出しは良好。
なんとか高校でもやっていけそうな気がする。
裕二と太一とはすぐに仲良くなれた。
三人ともタイプは違うのに話は合って、聞く音楽も似ていて話題に事欠かない。
全員出身中学が違ったのもよかったのかもしれない。変にグループでつるんだり、昔の話題を出さなくて済むから。
あれってなんなんだろうな。
環境が変わったのに「おれ知ってるんだけど~」って変なプライドを見せているようで憐れみさえ感じる。
裕二も太一も同じ考えらしく、昔のことは昔。今は今で楽しむというスタンスなのがすごくよかった。
だから部活の後や休みの日にも一緒に過ごすことが多くなっていった。
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