2 / 119
第一章 First love
2
しおりを挟む
何だこの人、というのが最初の印象だった。
いい大人の男が受け持ちの生徒の名前を呼んで「おいしそう」とは。変態教師かよ! と心の中で顔をしかめる。
だけど周防はすぐに次の生徒の名前を呼び、気にした蜜の方がなんとなく恥ずかしくなった。
深い意味はなく、彼はただ名前の響きに思いつきで言っただけなのだろう。ずいぶんスイートな名前だな、と。
短いホームルームが終わるとすぐさま入学式で、名前の順に整列した。
しっかり名前を呼ばれたせいで、クラスに「さとうみつ」というふざけた名前はしっかりと認識されたらしい。
前後の奴らに「佐藤蜜ってマジで?」と笑われた。
「そう、ふざけてるけどマジ」と答える。
「なんかいいね。覚えやすくて」
「しかもおいしそうだし」
また「おいしそう」だ。
確かに「佐藤」も「蜜」も甘そうだ。甘すぎて胸焼けしそうになる。蜜自身は辛党だから甘さに用はないというのに。
「つーか両親のセンス面白いね」
「うん、なんか似合ってるし」
そう言いながら盛り上がっているのは、前に並ぶ後藤裕二と後ろの鈴木太一。
ふたりともからかうつもりはないらしい。
カラっと乾いた笑いに一緒に乗っかっていたらどうでもいいかって気分になってきた。気持ちが明るくなる。
こういう時、まあ、話題つくりになっていいのかなって少しだけ思う。
担任はちょっとアレな感じだけど滑り出しは良好。
なんとか高校でもやっていけそうな気がする。
裕二と太一とはすぐに仲良くなれた。
三人ともタイプは違うのに話は合って、聞く音楽も似ていて話題に事欠かない。
全員出身中学が違ったのもよかったのかもしれない。変にグループでつるんだり、昔の話題を出さなくて済むから。
あれってなんなんだろうな。
環境が変わったのに「おれ知ってるんだけど~」って変なプライドを見せているようで憐れみさえ感じる。
裕二も太一も同じ考えらしく、昔のことは昔。今は今で楽しむというスタンスなのがすごくよかった。
だから部活の後や休みの日にも一緒に過ごすことが多くなっていった。
いい大人の男が受け持ちの生徒の名前を呼んで「おいしそう」とは。変態教師かよ! と心の中で顔をしかめる。
だけど周防はすぐに次の生徒の名前を呼び、気にした蜜の方がなんとなく恥ずかしくなった。
深い意味はなく、彼はただ名前の響きに思いつきで言っただけなのだろう。ずいぶんスイートな名前だな、と。
短いホームルームが終わるとすぐさま入学式で、名前の順に整列した。
しっかり名前を呼ばれたせいで、クラスに「さとうみつ」というふざけた名前はしっかりと認識されたらしい。
前後の奴らに「佐藤蜜ってマジで?」と笑われた。
「そう、ふざけてるけどマジ」と答える。
「なんかいいね。覚えやすくて」
「しかもおいしそうだし」
また「おいしそう」だ。
確かに「佐藤」も「蜜」も甘そうだ。甘すぎて胸焼けしそうになる。蜜自身は辛党だから甘さに用はないというのに。
「つーか両親のセンス面白いね」
「うん、なんか似合ってるし」
そう言いながら盛り上がっているのは、前に並ぶ後藤裕二と後ろの鈴木太一。
ふたりともからかうつもりはないらしい。
カラっと乾いた笑いに一緒に乗っかっていたらどうでもいいかって気分になってきた。気持ちが明るくなる。
こういう時、まあ、話題つくりになっていいのかなって少しだけ思う。
担任はちょっとアレな感じだけど滑り出しは良好。
なんとか高校でもやっていけそうな気がする。
裕二と太一とはすぐに仲良くなれた。
三人ともタイプは違うのに話は合って、聞く音楽も似ていて話題に事欠かない。
全員出身中学が違ったのもよかったのかもしれない。変にグループでつるんだり、昔の話題を出さなくて済むから。
あれってなんなんだろうな。
環境が変わったのに「おれ知ってるんだけど~」って変なプライドを見せているようで憐れみさえ感じる。
裕二も太一も同じ考えらしく、昔のことは昔。今は今で楽しむというスタンスなのがすごくよかった。
だから部活の後や休みの日にも一緒に過ごすことが多くなっていった。
6
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
Sweet☆Sweet~蜂蜜よりも甘い彼氏ができました
葉月めいこ
BL
紳士系ヤクザ×ツンデレ大学生の年の差ラブストーリー
最悪な展開からの運命的な出会い
年の瀬――あとひと月もすれば今年も終わる。
そんな時、新庄天希(しんじょうあまき)はなぜかヤクザの車に乗せられていた。
人生最悪の展開、と思ったけれど。
思いがけずに運命的な出会いをしました。
没落貴族の愛され方
シオ
BL
魔法が衰退し、科学技術が躍進を続ける現代に似た世界観です。没落貴族のセナが、勝ち組貴族のラーフに溺愛されつつも、それに気付かない物語です。
※攻めの女性との絡みが一話のみあります。苦手な方はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる