真っ赤な口紅の純情 ~ドラアグクイーンに惚れられたホテルマンが恋に落ちるまで!~

乃木のき

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日永と恭介

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夜も更けてようやく信者たちから解放される頃にデイジーとジョセフィーヌどちらもボロボロな姿で喧嘩は終わったらしかった。
恭介に言わせればどっちもどっちと言う感じだけれど、2人はまだ息も荒くにらみ合っている。

もう過去のことだからとやかく言うつもりはないけど、恭介と付き合うならそういう火遊びは止めてもらいたい。
メイクを落として日永に戻った彼はショボンとしながら恭介についてきた。

「もうしませんから」
「当たり前。遊びでも他の人に手を出したらそこで終わりね」
「絶対しません」

といいつつ、実はすっごくモテるんだろうなこの人、と思った。
「自分不器用ですから」という奴に限ってうまくやってるものだ。

「恭介さん、あの」
「なに?」

人通りの少なくなった道を並んで歩く。ネオンが消え始めてそろそろみんな寝床を求めてさまよう時間だ。日永はオズオズと、だけどしっかりと恭介の手を掴んだ。迷いを見せるそぶりで指を絡めてくるあたりプロなのか?

「慣れてるね」
「もう勘弁してください。アレはその、好きとかそういうんじゃなくて」
「体の関係って事ね?」
「……すみません」

もういいんだけど。
過去のことだから以下省略。だけどやっぱり面白くない。困らせたくてわざと唇をとがらせた。
それでも繋がれた手をそのままにタクシーを拾えるところまで並んで歩く。

「日永さんはさ、経験豊富だろうけど俺はそうじゃないからこれからも戸惑うよ。うまくやれないけど、そういうのも許せる?」
「当たり前じゃないですか! そういう恭介さんはとにかくピュアで愛らしくて萌えます」
「バカにしてる?」

自分は慣れてるからってさ。余裕な態度も気に入らない。

「まさか! 絶対それだけはありません。どんな恭介さんでもいいんです。大好きです」
「……そう」

大きな通りに出ると交通量が激しくて空いているタクシーを拾うのが大変そうだった。
流れていく光の線をぼんやりと追いつつ、くっと手を引いた。

「二台探す?」
「……叶うなら一台で」
「うん」

なんとか空車を見つけるとはやる気持ちで乗り込んだ。自宅の住所を告げるとシートに身体をもたれさせる。手は繋いだままだった。
2人とも何も話さないまま繋がった場所の体温を感じている。これからもっと深い場所で繋がることは暗黙の了解だった。

料金を払って降りるとマンションのエントランスを抜けた。コンシェルジュはもういなくなってる。しんとしたマンションのエレベーターの中も監視カメラがあるから大人しくしている。

だけど部屋の鍵を開けた瞬間待ちきれずにどちらからともなく唇を押しつけ合った。強く抱きしめて服がしわくちゃになる。
もたれるように靴を脱いで廊下をもつれながら突き進む。そのまま寝室にたどり着くとベッドに転がった。
一時たりとも離れたくない一心で絡まり合いながらキスを深めていく。
2人を隔てる服が邪魔くさくて、キスの合間にはぎとった。靴下を脱ぐ間も惜しい。

「恭介さんっ」

獣のように荒い呼吸が部屋の中に充満する。
日永だけじゃない。恭介も興奮して息が乱れている。こんなに誰かを欲する気持ちがあるなんて。

「早く来て」

重なると濡れた性器がこすれあってもどかしい。
どこもかしこも敏感で、相手の体温を欲している。触って欲しい。口づけて欲しい。口に含みたい。食べてしまいたい。
狂暴な熱情が体の内で灯って弾けてしまいそうだった。
気持ちと裏腹に日永は慎重に恭介に触れた。

「う、あっ」

平たい胸を揉まれて先端を擦られるだけで全身に電流が走ったように感じる。それは下腹部に直結していて、先端からこぼれていく。
さっき吸いついた場所をさらに強くいたぶって、愛された痕を残していく。ちゃんと服から見えない場所につける辺り余裕があるようで腹立たしい。
だから拙いなりに恭介もそれを真似をした。

これから覚えていくのだ。
日永の愛し方を。恭介の愛し方を。二人で作り上げていく。

「恭介さん……綺麗だ」

靴下だけをはいたかっこわるい姿なのに日永はうっとりと恭介を見ている。そういう日永の凶器は腹につくくらい育ちきって、狂暴な血管を浮かせている。これがこれから恭介の中から乱してくるんだと思うとゴクリと喉が鳴った。
恐怖からじゃない、強い欲望からだった。

いつかあの形を覚えるのだろう。
恭介を内側から変えていく。だけどもう怖くはない。

「いつでもこいよ」

挑発するように舌なめずりをすると、日永は見たこともない凶悪な笑みを浮かべた。くっと口角をゆがませて「知りませんよ」と言う。

「明日動けなくなっても」
「だったらお前が世話してよ。俺がいいっていうまでいう事聞いて」
「そんなのでいいなら喜んで」

もう何も飾らなくていい。いい人の顔をしなくていい。綺麗ぶらなくたって日永は恭介を愛する。だから素のままで向かっていく。
大きく足を開くと誘うように見せつけた。
目が離せないとばかりに日永は恭介の足の間、その奥を見つめる。もし視線だけで犯せるならばとっくに突き貫かれている。

「最高です、恭介さん」

日永は手慣れた様子でジェルを取るとたっぷりとぬりたくった。ゴムをつけた指を差し込むと一度しか触れたことがないくせにしっかりと覚えたそこを擦る。

「……んっ、」
「もう痛くないでしょう?」
「んなはずあるか。そりゃ痛いだろ」
「でも萎んでない」

言われた通り恭介の欲望もしっかりと主張している。こんなことくらいでいちいち怯まない。
指を増やされてさらに奥まで探られても漏れてくるのは甘い声だけだ。
ちゃんと覚えている。
日永と繋がることが怖くないって。ちゃんと気持ちよくなれるって信じてる。

時間をかけてたっぷりと解されるとようやく指が抜けていった。

「今日はもっと奥まで入れます」

そんな宣言をする日永はリミットを振り切ったような顔をしていた。

「まじか」
「この前は途中までで様子をみただけなので。今日は多分大丈夫です。できますよね?」
「当たり前。って言いたいけど、あまり無茶しないで」

この前だってギチギチだったのにまだ入りきってなかったって? そんなの聞いてない。
覆いかぶさってきた日永は恭介を強く抱きしめた。

「愛しています」

その言葉だけで絆されてしまう。恭介は覚悟を決めた。
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