62 / 66
4
しおりを挟む
ああもう完敗だ。
知らず涙がこぼれてきた。
こんなゆるぎない愛情を向けられてこれ以上逃げられない。もう覚悟を決める時なんだ。
「怖い奴」
「当たり前よ。恭介さんの事だけよアタシがこんなに真剣になるの。日永なんてビビりだからどうしていいかわかんなくて、でもアナタを前にすると理性がぶっ飛んで頭おかしくなってるわよ。可愛い男の純情だと思って許してね」
「そういうもんなの?」
「そう、アタシだってそうよ。今すぐ食べちゃいたくて仕方ないの。わかってる? さっきからアタナ可愛くて仕方ない事ばかり言ってるって。アタシの事そんなに好きなのねってビンビン伝わってきてるわ」
「そうなんだろうね」
いろんな言い訳をしながら逃げていたのはこの人を好きになりすぎておかしくなってる自分に気がついたから。人を好きになって怖いと思ったのは初めての感情だから。
自分が自分じゃなくなるなんて、フィクションかと思ってた。
まさか自分よりはるかに逞しい男でドラァグクイーンに恋するなんて。
恭介はデイジーの胸元を掴むと思い切り引き寄せて顔を寄せた。
ぷっくりと赤く塗られた唇に自分のそれを押しつける。まるで禁断の果実のように甘い香りがするのは外国の口紅だからなんだって。
そんなことさえ知らなかったのに。
「お前どうすんの? 俺のことこんなに変えちゃって」
品行方正の優等生を演じきっていた分厚い殻を力技で叩き割ってきたデイジー。なんでもソツなくこなせるはずがこいつの前では無力だった。
仮面の下にこんな純粋な気持ちを隠し持っていたなんて自分でも知らなかったよ。
「言ったでしょ。愛してるって。一生責任取るわよ」
「……重いな」
「ふふ。一緒に背負いましょ♡」
仕掛けたのは自分のはずなのにいつの間にか形勢は逆転してデイジーがのしかかってくる。その重みさえ慣れてきている自分に笑ってしまう。
グダグダと先延ばしにしてても結局受け入れる気は満々なんだ。
ほんの少し最後にダダをこねたかっただけ。
薄いオーガンジーの天蓋の中で何度もキスを交わし合った。
互いにピュアなアイドルみたいな恰好をしているくせに、はしたない欲望に満ち溢れている行為に陶然とする。
互いの萌した欲望を押し付け合った。
「恭介さん、ありがとう。思っていることを教えてくれて。アナタにガマンをして欲しくはないの。もしどうしても嫌なことがあったらすぐに言ってほしいわ。アタシはアナタが笑ってくれたらそれでいいの」
「じゃあ他の誰ともこういうことしないで」
「するはずがないじゃない」
「約束だよ?」
「ああっ♡ もうさっきから反則よ~可愛いが過ぎるわ♡」
デイジーは首筋に顔を寄せると強く吸いついた。
ちゅ、ちゅ、と軽い音を立てながらあちこちに赤い印をつけまくる。
「好きよ。大好き」
「うん……俺も、」
「恭介さん愛してる♡」
ソファの上に押し倒されてデイジーからの愛撫を受けた。甘い声がもれて、それを止める術がない。
「デイジー……」
「そ、こ、ま、で、よッ!!!」
シャーっと激しい音と共に天蓋が開けられ目の前にジョセフィーヌが仁王立ちしていた。顔がマジで怒りに歪んでいる。
「あのね、バトルをしなさいとは言ったけど! そっちのバトルを許可した覚えはありませーん」
まくられたスカートにチラリと視線を送ると大きな舌打ちを向けてくる。
「なんなのよ。そういうのが怖い~とかビビリなことを抜かしてたくせに、さっさと流されてさ。言っとくけどデイジーなんて百戦錬磨だからね。手当たり次第ヤリまくりのデイジーなんだからね、簡単に流されるんじゃないわよ」
「ちょっと聞き捨てならないわね。誰がヤリまくりよ、アンタと一緒にしないでッ!」
「うっさいわよ。アタシはいいのよ、可愛い子がいたら食べちゃいたいじゃないの。アンタなんて恭介さんラブのくせしてつまみ食いしすぎなのよ」
「キーーーーッ! 言っていい事と悪い事があるわ。そんなの嘘だからね、恭介さんこんな奴の言う事聞いちゃダメ!」
「今更純情ぶって笑わせるわッ」
そのうち二人はつかみ合いの喧嘩になり始めて、ついにキャットファイトがはじまってしまった。
呆気にとられる恭介は「ヤリまくりは事実だろうなあ」と遠い目をする。じゃなきゃあのテクニックは身につかないだろう。
初めてだっていうのにあんなにでっかいブツをスルリと上手に入れてくるとか、かなり実践を積んでいるのはわかった。面白くないけど。……かなり不愉快だけど。
それも全部わかって好きになったんだから仕方がない。
「さ、帰るか」
すっかり冷めた気持ちで天蓋の中から出ていくと、ワクワクとした客たちの視線を一身に浴びた。伝説のドラァグクイーンが再来しているとうわさが広がっていたようだ。
「エリザベス様~」と信者たちが群がってくる。
「お美しい~~ぜひ今日も蔑んでくださいませ~~~」
え、ナニコレ。どういう結末?
キャットファイトをする二人を尻目にエリザベスは今日も多額の売り上げを立てることとなった。
知らず涙がこぼれてきた。
こんなゆるぎない愛情を向けられてこれ以上逃げられない。もう覚悟を決める時なんだ。
「怖い奴」
「当たり前よ。恭介さんの事だけよアタシがこんなに真剣になるの。日永なんてビビりだからどうしていいかわかんなくて、でもアナタを前にすると理性がぶっ飛んで頭おかしくなってるわよ。可愛い男の純情だと思って許してね」
「そういうもんなの?」
「そう、アタシだってそうよ。今すぐ食べちゃいたくて仕方ないの。わかってる? さっきからアタナ可愛くて仕方ない事ばかり言ってるって。アタシの事そんなに好きなのねってビンビン伝わってきてるわ」
「そうなんだろうね」
いろんな言い訳をしながら逃げていたのはこの人を好きになりすぎておかしくなってる自分に気がついたから。人を好きになって怖いと思ったのは初めての感情だから。
自分が自分じゃなくなるなんて、フィクションかと思ってた。
まさか自分よりはるかに逞しい男でドラァグクイーンに恋するなんて。
恭介はデイジーの胸元を掴むと思い切り引き寄せて顔を寄せた。
ぷっくりと赤く塗られた唇に自分のそれを押しつける。まるで禁断の果実のように甘い香りがするのは外国の口紅だからなんだって。
そんなことさえ知らなかったのに。
「お前どうすんの? 俺のことこんなに変えちゃって」
品行方正の優等生を演じきっていた分厚い殻を力技で叩き割ってきたデイジー。なんでもソツなくこなせるはずがこいつの前では無力だった。
仮面の下にこんな純粋な気持ちを隠し持っていたなんて自分でも知らなかったよ。
「言ったでしょ。愛してるって。一生責任取るわよ」
「……重いな」
「ふふ。一緒に背負いましょ♡」
仕掛けたのは自分のはずなのにいつの間にか形勢は逆転してデイジーがのしかかってくる。その重みさえ慣れてきている自分に笑ってしまう。
グダグダと先延ばしにしてても結局受け入れる気は満々なんだ。
ほんの少し最後にダダをこねたかっただけ。
薄いオーガンジーの天蓋の中で何度もキスを交わし合った。
互いにピュアなアイドルみたいな恰好をしているくせに、はしたない欲望に満ち溢れている行為に陶然とする。
互いの萌した欲望を押し付け合った。
「恭介さん、ありがとう。思っていることを教えてくれて。アナタにガマンをして欲しくはないの。もしどうしても嫌なことがあったらすぐに言ってほしいわ。アタシはアナタが笑ってくれたらそれでいいの」
「じゃあ他の誰ともこういうことしないで」
「するはずがないじゃない」
「約束だよ?」
「ああっ♡ もうさっきから反則よ~可愛いが過ぎるわ♡」
デイジーは首筋に顔を寄せると強く吸いついた。
ちゅ、ちゅ、と軽い音を立てながらあちこちに赤い印をつけまくる。
「好きよ。大好き」
「うん……俺も、」
「恭介さん愛してる♡」
ソファの上に押し倒されてデイジーからの愛撫を受けた。甘い声がもれて、それを止める術がない。
「デイジー……」
「そ、こ、ま、で、よッ!!!」
シャーっと激しい音と共に天蓋が開けられ目の前にジョセフィーヌが仁王立ちしていた。顔がマジで怒りに歪んでいる。
「あのね、バトルをしなさいとは言ったけど! そっちのバトルを許可した覚えはありませーん」
まくられたスカートにチラリと視線を送ると大きな舌打ちを向けてくる。
「なんなのよ。そういうのが怖い~とかビビリなことを抜かしてたくせに、さっさと流されてさ。言っとくけどデイジーなんて百戦錬磨だからね。手当たり次第ヤリまくりのデイジーなんだからね、簡単に流されるんじゃないわよ」
「ちょっと聞き捨てならないわね。誰がヤリまくりよ、アンタと一緒にしないでッ!」
「うっさいわよ。アタシはいいのよ、可愛い子がいたら食べちゃいたいじゃないの。アンタなんて恭介さんラブのくせしてつまみ食いしすぎなのよ」
「キーーーーッ! 言っていい事と悪い事があるわ。そんなの嘘だからね、恭介さんこんな奴の言う事聞いちゃダメ!」
「今更純情ぶって笑わせるわッ」
そのうち二人はつかみ合いの喧嘩になり始めて、ついにキャットファイトがはじまってしまった。
呆気にとられる恭介は「ヤリまくりは事実だろうなあ」と遠い目をする。じゃなきゃあのテクニックは身につかないだろう。
初めてだっていうのにあんなにでっかいブツをスルリと上手に入れてくるとか、かなり実践を積んでいるのはわかった。面白くないけど。……かなり不愉快だけど。
それも全部わかって好きになったんだから仕方がない。
「さ、帰るか」
すっかり冷めた気持ちで天蓋の中から出ていくと、ワクワクとした客たちの視線を一身に浴びた。伝説のドラァグクイーンが再来しているとうわさが広がっていたようだ。
「エリザベス様~」と信者たちが群がってくる。
「お美しい~~ぜひ今日も蔑んでくださいませ~~~」
え、ナニコレ。どういう結末?
キャットファイトをする二人を尻目にエリザベスは今日も多額の売り上げを立てることとなった。
11
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;
【完結】嘘はBLの始まり
紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。
突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった!
衝撃のBLドラマと現実が同時進行!
俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡
※番外編を追加しました!(1/3)
4話追加しますのでよろしくお願いします。
エデンの住処
社菘
BL
親の再婚で義兄弟になった弟と、ある日二人で過ちを犯した。
それ以来逃げるように実家を出た椿由利は実家や弟との接触を避けて8年が経ち、モデルとして自立した道を進んでいた。
ある雑誌の専属モデルに抜擢された由利は今をときめく若手の売れっ子カメラマン・YURIと出会い、最悪な過去が蘇る。
『彼』と出会ったことで由利の楽園は脅かされ、地獄へと変わると思ったのだが……。
「兄さん、僕のオメガになって」
由利とYURI、義兄と義弟。
重すぎる義弟の愛に振り回される由利の運命の行く末は――
執着系義弟α×不憫系義兄α
義弟の愛は、楽園にも似た俺の住処になるのだろうか?
◎表紙は装丁cafe様より︎︎𓂃⟡.·
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
Sweet☆Sweet~蜂蜜よりも甘い彼氏ができました
葉月めいこ
BL
紳士系ヤクザ×ツンデレ大学生の年の差ラブストーリー
最悪な展開からの運命的な出会い
年の瀬――あとひと月もすれば今年も終わる。
そんな時、新庄天希(しんじょうあまき)はなぜかヤクザの車に乗せられていた。
人生最悪の展開、と思ったけれど。
思いがけずに運命的な出会いをしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる