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今までの恋愛をかえりみる。
付きあった子は何人かいるけどそれの全ては相手から好きだと言われていいよと答えたパターンだ。
もちろん付き合っている時は可愛いと思うし大切にしていたと思う。
だけど性的な事にあまりがっつくタイプでもなく、なんとなく流れるままに身体を重ねて、それもシンプルにスマートに行うという感じだった。
日永が恭介に向けるような熱烈な情熱も欲しくてたまらないという欲望を感じたことがない。
きっと別れを告げていった子たちはそんな恭介の体温の低さに呆れたんだろう。最後には「わたしのこと好きじゃなかった?」と聞かれてしまうから。
セックスが愛情とイコールとは思わない。
それがなくても一緒にいるだけで楽しいとか、そういうのもアリだと思っていた。
日永から向けられる愛情はそれとは全く違って強く深く結びつきたいと思われているのが伝わる。それに応えることができない自分も、応えてしまったらどうなるのかわからない不安もある。
こんなこと日永に言えばきっと傷つくのだろう。
「だからってアタシにいう事~?」
日永が遅い時間までレストラン勤務な時を狙ってバーに行くと、ジョセフィーヌを捕まえて相談に乗ってもらうことにした。
日永のことは嫌いじゃない。
好ましくは思っている。
だけど二人の熱量があまりにも違いすぎて戸惑うのだ。
1人で抱えていてもいい結果にはならなさそうで、ついジョセフィーヌを頼ってしまったんだけど、よく考えたらこんなことを相談するってけっこうヤバいヤツじゃないか。
「やっぱごめん、いいや。忘れて」
「忘れるはずないでしょ。っていうかアンタ達まだそんなところでモダモダしてたの? ヤリまくって楽しい頃合いでしょうに。なにやってんのかしら」
「ヤリまくりって、やっぱそういうもの?」
「は~? 純情ぶるのもいい加減にしなさいよ~?」
ジョセフィーヌは他にあまり客がいないことを言いことに恭介におしぼりを投げつけてきた。
「可愛いのはね、フリーの子だけ! 相手がいる男に優しくして何が楽しいのよ」
「割り切りがすごいね」
「あったりまえよ、見込みのない子に優しくしてどーなるっていうのよ。それともあの子よりアタシを選ぶ? それなら話は変わるわよ♡」
本気か冗談かわからないことを言いながらジョセフィーヌはねっとりとした笑みを向けてきた。
「それはない」ときっぱり断ると「つまんねーの」と口が悪い。
「っていうかね、恭介さんは何が怖いのよ? いいじゃないあの子の重た~~~い愛。しつこいわよ~きっと、それに絶対逃さないって呪詛ね。もう覚悟なさいな」
言いえて妙。
その通りだ。
日永の愛は重たい。それこそ全身全霊でぶつかってくる。それに押しつぶされそうなのも事実だ。
「なんかさ、あの人すごく男らしいじゃない。体も仕上がってるし仕事もできるし、かっこいいし、いかにも男って感じで」
「は~? ノロケならあっちでやって」
「そうじゃなくて。だから、同性にこんなに愛されたら俺が男じゃなくなりそうって言うか……何かを失いそうなんだよ」
「バックバージン失ってるくせに何言ってんの?」
身もふたもない。
「それは! 置いといて!」
「これ以上何を失うって言うのよ。そんなに突っ込まれたくないなら恭介さんが入れてみたら? あの子多分平気よ」
あの大きな体を恭介が組み敷いて、やられたことをやり返すって言うのはどうも想像できない。多分無理。
「も~なんなのよ。アレも嫌コレも嫌って。だったら女の子と付き合いなさいよ」
結局そうなるんだ。
恭介自身、日永の相手が自分でいいのかわからないでいる。男性を愛せるタイプじゃなかったし、あの熱量に返せる自信がないから。
「あのね。恭介さん。男も女もないのよ。好きならぶつかっていく。真正面から向き合う。好きなら好き。無理なら終わり。それだけよ」
そんな簡単なものなんだろうか。
未来もないのに。
この前のお店の光景を思い出すたび、ジクリとするものがある。
見た目より子供好きそうな日永。ロボットだって言われても子供に愛される日永。
でも恭介と付き合っている限り子供は産めないし、家族を持つこともできない。
ゲイだって言っていたからそんなことは覚悟なのかもしれないけれど。
「も~そんなね、アタシにウダウダ言ってないで二人で話し合いなさいよ。でも確かに日永の時のあの子はポンコツだわ。そういうのはデイジーと話し合いなさい。それに恭介さんも男の姿だからうまく言えないのかもしれないわ。そうだ、またエリザベスになればいいのよ。デイジーVSエリザベス。……待っていい案ね。いつやる?」
「人を見世物のようにして」
「見世物よ。アタシ達はみ~んなそうなの。現実をうまく回すためにドラアグクイーンはひと時の夢を見させて踊らせるのよ」
ほら、来なさい、と引きずるように恭介をバックヤードへと連れて行き、有無を言わせずメイクを始めた。
「そういうつもりじゃない!」
「どういうつもりだろうがここはそういうお店。いいからいう事を聞くのよ」
テキパキとメイクをされればあっという間にエリザベスの完成だ。
「あとはあの子を呼びつけるだけね♡」
というが早いか速攻連絡を入れている。とんでもない展開になってしまった。
付きあった子は何人かいるけどそれの全ては相手から好きだと言われていいよと答えたパターンだ。
もちろん付き合っている時は可愛いと思うし大切にしていたと思う。
だけど性的な事にあまりがっつくタイプでもなく、なんとなく流れるままに身体を重ねて、それもシンプルにスマートに行うという感じだった。
日永が恭介に向けるような熱烈な情熱も欲しくてたまらないという欲望を感じたことがない。
きっと別れを告げていった子たちはそんな恭介の体温の低さに呆れたんだろう。最後には「わたしのこと好きじゃなかった?」と聞かれてしまうから。
セックスが愛情とイコールとは思わない。
それがなくても一緒にいるだけで楽しいとか、そういうのもアリだと思っていた。
日永から向けられる愛情はそれとは全く違って強く深く結びつきたいと思われているのが伝わる。それに応えることができない自分も、応えてしまったらどうなるのかわからない不安もある。
こんなこと日永に言えばきっと傷つくのだろう。
「だからってアタシにいう事~?」
日永が遅い時間までレストラン勤務な時を狙ってバーに行くと、ジョセフィーヌを捕まえて相談に乗ってもらうことにした。
日永のことは嫌いじゃない。
好ましくは思っている。
だけど二人の熱量があまりにも違いすぎて戸惑うのだ。
1人で抱えていてもいい結果にはならなさそうで、ついジョセフィーヌを頼ってしまったんだけど、よく考えたらこんなことを相談するってけっこうヤバいヤツじゃないか。
「やっぱごめん、いいや。忘れて」
「忘れるはずないでしょ。っていうかアンタ達まだそんなところでモダモダしてたの? ヤリまくって楽しい頃合いでしょうに。なにやってんのかしら」
「ヤリまくりって、やっぱそういうもの?」
「は~? 純情ぶるのもいい加減にしなさいよ~?」
ジョセフィーヌは他にあまり客がいないことを言いことに恭介におしぼりを投げつけてきた。
「可愛いのはね、フリーの子だけ! 相手がいる男に優しくして何が楽しいのよ」
「割り切りがすごいね」
「あったりまえよ、見込みのない子に優しくしてどーなるっていうのよ。それともあの子よりアタシを選ぶ? それなら話は変わるわよ♡」
本気か冗談かわからないことを言いながらジョセフィーヌはねっとりとした笑みを向けてきた。
「それはない」ときっぱり断ると「つまんねーの」と口が悪い。
「っていうかね、恭介さんは何が怖いのよ? いいじゃないあの子の重た~~~い愛。しつこいわよ~きっと、それに絶対逃さないって呪詛ね。もう覚悟なさいな」
言いえて妙。
その通りだ。
日永の愛は重たい。それこそ全身全霊でぶつかってくる。それに押しつぶされそうなのも事実だ。
「なんかさ、あの人すごく男らしいじゃない。体も仕上がってるし仕事もできるし、かっこいいし、いかにも男って感じで」
「は~? ノロケならあっちでやって」
「そうじゃなくて。だから、同性にこんなに愛されたら俺が男じゃなくなりそうって言うか……何かを失いそうなんだよ」
「バックバージン失ってるくせに何言ってんの?」
身もふたもない。
「それは! 置いといて!」
「これ以上何を失うって言うのよ。そんなに突っ込まれたくないなら恭介さんが入れてみたら? あの子多分平気よ」
あの大きな体を恭介が組み敷いて、やられたことをやり返すって言うのはどうも想像できない。多分無理。
「も~なんなのよ。アレも嫌コレも嫌って。だったら女の子と付き合いなさいよ」
結局そうなるんだ。
恭介自身、日永の相手が自分でいいのかわからないでいる。男性を愛せるタイプじゃなかったし、あの熱量に返せる自信がないから。
「あのね。恭介さん。男も女もないのよ。好きならぶつかっていく。真正面から向き合う。好きなら好き。無理なら終わり。それだけよ」
そんな簡単なものなんだろうか。
未来もないのに。
この前のお店の光景を思い出すたび、ジクリとするものがある。
見た目より子供好きそうな日永。ロボットだって言われても子供に愛される日永。
でも恭介と付き合っている限り子供は産めないし、家族を持つこともできない。
ゲイだって言っていたからそんなことは覚悟なのかもしれないけれど。
「も~そんなね、アタシにウダウダ言ってないで二人で話し合いなさいよ。でも確かに日永の時のあの子はポンコツだわ。そういうのはデイジーと話し合いなさい。それに恭介さんも男の姿だからうまく言えないのかもしれないわ。そうだ、またエリザベスになればいいのよ。デイジーVSエリザベス。……待っていい案ね。いつやる?」
「人を見世物のようにして」
「見世物よ。アタシ達はみ~んなそうなの。現実をうまく回すためにドラアグクイーンはひと時の夢を見させて踊らせるのよ」
ほら、来なさい、と引きずるように恭介をバックヤードへと連れて行き、有無を言わせずメイクを始めた。
「そういうつもりじゃない!」
「どういうつもりだろうがここはそういうお店。いいからいう事を聞くのよ」
テキパキとメイクをされればあっという間にエリザベスの完成だ。
「あとはあの子を呼びつけるだけね♡」
というが早いか速攻連絡を入れている。とんでもない展開になってしまった。
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