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ひとつひとつ
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日永とつきあって一週間以上がたった。
互いに忙しいからそんなに会えるわけでもない。このまえのような濃密な時間を取るには余裕がなさ過ぎた。
まあそのうち会えるかと思っていたらあっという間に時間が過ぎていった。
それにもうひとつ重要な問題がある。
日永のアレ問題だ。
この前は手だけで気持ちよくなってしまったけど、多分、この先もっと進むんだろう。恭介だって触れたい。同じ男同志の身体なのに日永の身体は恭介の憧れでもあり、欲望の対象になってしまった。
だからといってアレはちょっと。
仕事帰りのスーパーで野菜を選びながらふと足を止める。
そこには艶と張りがあるさつまいもが山となって売られていた。横のケースには「石焼き芋」と書かれ、ホカホカな芋が包まれている。
確かにこの季節に欲しくなるぬくもりだ。
だが恭介の目を引いているのはそれではない。
太さと言い長さと言い、日永の凶器のように見えてしまって思わず手に取ってしまった。
ずっしりと重く、皺のよった皮が血管が浮き出たアレそのもののようで「いやー」と首を傾げる。コレをどうこうってやっぱ無理じゃないか。
その隣には山芋が。
性的な事にそんなに興味がなかったのに最近考えるのはそのことばかりだ。
「あらっ?」っと声をかけられたのは、サツマイモを手にして思い悩んでいた時だ。
「恭介さん?」
聞き覚えのある声に顔を上げるとそこには見知らぬ男が立っていた。坊主頭にサングラスをかけかなりイカツイお兄さんがこちらを見ている。ファッションもなかなか攻めている。フワッフワのファーがついた革ジャンに細身のパンツ。
関わったらヤバそうな雰囲気の男がじっと恭介を見ている。
こんな知り合いいませんけど。
聞き違いかと思って無視をすると、その男は近づいてきてひょいっと恭介の手元を覗き込んだ。
「やっだー。オイモ握ってやらしい」
「はっ?」
「アレに似てるの見つけたわね~」
グフフフと口元を抑えた笑い声はジョセフィーヌのものだった。
「ジョセ」と言いかけた恭介の口を押えて「ノン」と言う。
「この格好をしている時はJoeよ」
「じょ、ジョー?」
「発音が違う。Joe 」
大して変わんない発音をして見せるジョセフィーヌに呆れつつ、自分もイモを手に何をやってるんだと情けなくなった。こんな大切な食材をいやらしい目で見てしまってごめんなさい。
温もってしまったサツマイモを責任をもって購入しようとカゴに入れると「じゃ」とあいさつをしてその場を去ろうとした。だけどJoeが後をついてくる。
「何の用?」
「特に用はないんだけど~。ちょうど恭介さんがいるのが見えたのよ。何やら難しい顔をしていたけどお悩み?」
ゴッツイ見た目にオネエ的しゃべり方をするジョセ、いやJoeにすれ違う客たちがギョッとしたような視線を向ける。そもそも彼の格好自体がヤバイ男認定されていてできれば離れたい。
だけどJoeはまったく気にしないようで、鼻歌交じりに恭介の買い物に付き添ってくる。
「今日はお店は?」
「用事があって遅れたの。これから行くわよ」
「じゃあ急いだほうがいいんじゃないの?」
「アタシがいなくても大丈夫よ~」
それより♡ とJoeは耳に口を寄せた。
「オイモ持って悩むなんて水臭いわよ~相談してよ」
「何をだよ」
「ウフフッ」っとJoeは楽しそうな声をあげた。
「デイジーちゃんとそういう事するときに立ちはだかるわよね~アノ問題。あの子のちょっとやばいもの」
まるで全部お見通しだと言わんばかりのセリフに慌てて振り返った。もしかしてあの時のことをしゃべったのか?
顔色を変える恭介にJoeは「ノンノン違うわよ~」と指を振る。
「あの子から何も聞いてないわ。でも恭介さんを見てピーンと来たの。クイーンは勘が鋭いのよ。なんでもお見通しってね♡ でも当たっていたでしょ?」
「……さあ」
「すっとぼけなくてもいいのよ~。相談に乗るってば。恭介さん男とそういうこと初めてでしょ? だったら色々わからないのも当然よ。アタシがいろいろレクチャーしてあげるけど、聞きたくない?」
確かに何もかもわからないことだらけだ。
そもそも今まで付き合ってきた女の子と体の構造も違うし、日永に流されるまま気持ちよくなってしまったけどこの先がまったく見えない。
「……別に困ってない」
「アラ~そうなの。じゃあそのオイモは練習用ってこと?」
「違う。アレだ、あの、焼き芋が食べたくなっただけだ」
「だったら焼いてるやつの方が良くない?」
ああ言えばこう言うで、うるさい!
「っていうか普通に買い物してるだけだから。ついてこないで。あと、ここ、外だから。あまり不適切な発言ばかりしていると通報しますよ」
「こわあい」
Joeはやっと諦めたのかパッと離れた。
「わかったわ。でもデイジーちゃんのはやばいわよ。初めて見た時になんて凶器を仕込んでるのかとびっくりしたもの。でも愛があれば大丈夫。いつでも教えてあげるわ」
やっぱりアレは尋常じゃないんだ。
チラリとカゴの中のイモに目を落とした。こんなものを相手に大丈夫なんだろうか。
Joeはサングラスをかけなおすと「じゃあ行くわ」と手を振った。優雅な動きはさすがクイーンだけある。
「今日はデイジーちゃんも出勤よ。よければ来てね」
「明日も早いから帰るよ」
「そう? でもオイモは入れちゃだめよ。危ないわ」
「ばか!」
思わず叫ぶと一斉に視線が集まった。
すみません、と謝る顔が赤く染まる。ほんとにもう勘弁してくれ。
ヒラヒラと踊るように出ていくJoeを見送ると、どっと疲労が襲ってきた。一日働いたよりあの人の相手の方がよっぽど疲れる。
※食べ物をそういう扱いしてごめんなさ~いm(__)m
互いに忙しいからそんなに会えるわけでもない。このまえのような濃密な時間を取るには余裕がなさ過ぎた。
まあそのうち会えるかと思っていたらあっという間に時間が過ぎていった。
それにもうひとつ重要な問題がある。
日永のアレ問題だ。
この前は手だけで気持ちよくなってしまったけど、多分、この先もっと進むんだろう。恭介だって触れたい。同じ男同志の身体なのに日永の身体は恭介の憧れでもあり、欲望の対象になってしまった。
だからといってアレはちょっと。
仕事帰りのスーパーで野菜を選びながらふと足を止める。
そこには艶と張りがあるさつまいもが山となって売られていた。横のケースには「石焼き芋」と書かれ、ホカホカな芋が包まれている。
確かにこの季節に欲しくなるぬくもりだ。
だが恭介の目を引いているのはそれではない。
太さと言い長さと言い、日永の凶器のように見えてしまって思わず手に取ってしまった。
ずっしりと重く、皺のよった皮が血管が浮き出たアレそのもののようで「いやー」と首を傾げる。コレをどうこうってやっぱ無理じゃないか。
その隣には山芋が。
性的な事にそんなに興味がなかったのに最近考えるのはそのことばかりだ。
「あらっ?」っと声をかけられたのは、サツマイモを手にして思い悩んでいた時だ。
「恭介さん?」
聞き覚えのある声に顔を上げるとそこには見知らぬ男が立っていた。坊主頭にサングラスをかけかなりイカツイお兄さんがこちらを見ている。ファッションもなかなか攻めている。フワッフワのファーがついた革ジャンに細身のパンツ。
関わったらヤバそうな雰囲気の男がじっと恭介を見ている。
こんな知り合いいませんけど。
聞き違いかと思って無視をすると、その男は近づいてきてひょいっと恭介の手元を覗き込んだ。
「やっだー。オイモ握ってやらしい」
「はっ?」
「アレに似てるの見つけたわね~」
グフフフと口元を抑えた笑い声はジョセフィーヌのものだった。
「ジョセ」と言いかけた恭介の口を押えて「ノン」と言う。
「この格好をしている時はJoeよ」
「じょ、ジョー?」
「発音が違う。Joe 」
大して変わんない発音をして見せるジョセフィーヌに呆れつつ、自分もイモを手に何をやってるんだと情けなくなった。こんな大切な食材をいやらしい目で見てしまってごめんなさい。
温もってしまったサツマイモを責任をもって購入しようとカゴに入れると「じゃ」とあいさつをしてその場を去ろうとした。だけどJoeが後をついてくる。
「何の用?」
「特に用はないんだけど~。ちょうど恭介さんがいるのが見えたのよ。何やら難しい顔をしていたけどお悩み?」
ゴッツイ見た目にオネエ的しゃべり方をするジョセ、いやJoeにすれ違う客たちがギョッとしたような視線を向ける。そもそも彼の格好自体がヤバイ男認定されていてできれば離れたい。
だけどJoeはまったく気にしないようで、鼻歌交じりに恭介の買い物に付き添ってくる。
「今日はお店は?」
「用事があって遅れたの。これから行くわよ」
「じゃあ急いだほうがいいんじゃないの?」
「アタシがいなくても大丈夫よ~」
それより♡ とJoeは耳に口を寄せた。
「オイモ持って悩むなんて水臭いわよ~相談してよ」
「何をだよ」
「ウフフッ」っとJoeは楽しそうな声をあげた。
「デイジーちゃんとそういう事するときに立ちはだかるわよね~アノ問題。あの子のちょっとやばいもの」
まるで全部お見通しだと言わんばかりのセリフに慌てて振り返った。もしかしてあの時のことをしゃべったのか?
顔色を変える恭介にJoeは「ノンノン違うわよ~」と指を振る。
「あの子から何も聞いてないわ。でも恭介さんを見てピーンと来たの。クイーンは勘が鋭いのよ。なんでもお見通しってね♡ でも当たっていたでしょ?」
「……さあ」
「すっとぼけなくてもいいのよ~。相談に乗るってば。恭介さん男とそういうこと初めてでしょ? だったら色々わからないのも当然よ。アタシがいろいろレクチャーしてあげるけど、聞きたくない?」
確かに何もかもわからないことだらけだ。
そもそも今まで付き合ってきた女の子と体の構造も違うし、日永に流されるまま気持ちよくなってしまったけどこの先がまったく見えない。
「……別に困ってない」
「アラ~そうなの。じゃあそのオイモは練習用ってこと?」
「違う。アレだ、あの、焼き芋が食べたくなっただけだ」
「だったら焼いてるやつの方が良くない?」
ああ言えばこう言うで、うるさい!
「っていうか普通に買い物してるだけだから。ついてこないで。あと、ここ、外だから。あまり不適切な発言ばかりしていると通報しますよ」
「こわあい」
Joeはやっと諦めたのかパッと離れた。
「わかったわ。でもデイジーちゃんのはやばいわよ。初めて見た時になんて凶器を仕込んでるのかとびっくりしたもの。でも愛があれば大丈夫。いつでも教えてあげるわ」
やっぱりアレは尋常じゃないんだ。
チラリとカゴの中のイモに目を落とした。こんなものを相手に大丈夫なんだろうか。
Joeはサングラスをかけなおすと「じゃあ行くわ」と手を振った。優雅な動きはさすがクイーンだけある。
「今日はデイジーちゃんも出勤よ。よければ来てね」
「明日も早いから帰るよ」
「そう? でもオイモは入れちゃだめよ。危ないわ」
「ばか!」
思わず叫ぶと一斉に視線が集まった。
すみません、と謝る顔が赤く染まる。ほんとにもう勘弁してくれ。
ヒラヒラと踊るように出ていくJoeを見送ると、どっと疲労が襲ってきた。一日働いたよりあの人の相手の方がよっぽど疲れる。
※食べ物をそういう扱いしてごめんなさ~いm(__)m
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