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第十二章

12-3 クローヌ復興計画

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 食事が終わり、恒例の報告会だ。
雇員さんと奴隷さんはお風呂に行ってもらっている。
そして念のために防音魔法をかけておく。

「レルネさん、4人の錬成とマナの使い方はどう?」
「今のところ問題はないぞ。マナの練り方がまだまだじゃが、あと数日で習得するじゃろう。」
「あの二人は?」
「熱心に修練しとるの。」
「ナズナ、何か動きはあった?」
「はい、一度だけ。昼食をとった後、部屋に戻り窓から白い布を吊るしてしましたね。」
「一般人は店には入れるけど、奥には入れないから、目印でもつけたのかな?
 その目印を見てた人は居た?」
「はい。三下ばかりでした。」
「で、それをネーナさんが調べていた…と。そんな感じかな?」
「旦那様、その通りです。やつらは街の酒場をねぐらにしている悪党ですね。」
「悪い事してるんだ。」
「いろいろとやっていますね。」
「そいつらを操っている元締めはいるの?」
「この街には居ないようですね。リーダーのような奴が指示をしていましたが、時より親分が、親分がと言ってましたので。」
「その辺りはサーシャさんが帰ってきたら始めるとするかね?」
「サーシャなら、そろそろ戻ってきます。」
「あ、フロートか…。そう言えばフロートを覚えていないのは?」
「儂とスピネルとアイナじゃ。」
「アイナのマナの量で飛べるかな…。」
「社長~何事もやってみないと分かりませんよ。
 それに『空飛ぶドワっ子アイナちゃん!』なんて言われたら恰好よくて、嬉しくて。」

何か変な方向に進んでいるが、まぁいいか。

「んじゃ、ミリー3人に教えてあげることはできるかな?」
「ニノ様、大丈夫です!あのグラビティをお見舞いしてあげるのです!」

多分、レルネさんにかけると倍以上で跳ね返ってくるぞ…。

「それじゃ、あそこのスペースでやってもらうこととして…、あ、2倍以上かけちゃだめだからね。」
「え~面白くありません。」
「床が抜けちゃいますよ…。」

「さて、全員がグラビティ…じゃなかった、フロートが使えるようになれば、こことクロ―ヌとの移動時間も考えなくて済むから楽になる。それにオーネだっけ?そこまでも馬車で行くよりも早くなるから、いざという時はいつものメンバーで乗り込むが、その前に証拠となるものをさっきの3人に押収してきてもらいたいんだよね。」
「動かぬ証拠というものですね。」
「ああ、この世界では写真とか録音機とかは無いから、書面が頼りだからね。」
「写真や録音機というモノが何かは分かりませんが、いつかカズ様が使えるようにしてくださいますから、先ずは書面の押収ですね。」
「運よく見つかれば良いんだけどね。流石にホールワーズもそんな馬鹿なことはしないと思うけど。
 あとは、皆が戻ってきてからもう一度決めるとしよう。
 明日は今日と同じような感じで進めて欲しい。それじゃ、お風呂入ろうか。」
「主殿、あそこで浮いている3名はどうしますか?」

見ると、3人が漂っている。

「もう少し、練習が必要だね…。このまま学ばせておくのが良いかな…。」

しばらくして、ミリーを入れた3人もお風呂に入って来た。
フローをマスターしたようで、アイナは楽しいのか、お風呂の中でもフヨフヨと浮かんでる。
アイナよ…、丸見えだぞ…。

「明日も、メリアさんとディートリヒとでクローヌに行ってくるから、店の事は任せるね。」
「大丈夫じゃ。それに何かあれば飛んでいけるしの。」
「社長~これ便利ですね~。こんな魔法覚えても馬車は作るんですか?」
「あぁ。あれは公的に動く日の為に必要だからな。あ、それとクローヌでは馬を飼うことになると思うが、アイナは問題ないか?」
「はいな。ただ名前はシルバーとロシナンテで!」
「アイナさん、ダメです!オグリンとナリタンなのです!」

 向こうの方でアイナとニコルがいつもの名前争いしてるわ…。
放置しておこっと。

マッサージも終わり風呂を出ると、服の後ろを掴んでるナズナが居る。
うん、今日はナズナなんだね…。

 ナズナとは仕事以外の話をいっぱいした。
これから面倒な仕事も多くなるけど頼むよ、って言うと目をうるうるさせながら抱き着いてくる。
精神的にもきついんだろう。やさしく抱きしめると、落ち着いたのかスヤスヤ寝息を立てて寝始めた。
 彼女たちにこれ以上精神的苦痛を与え続けるのも考えものだな。
早めに向こうが動いてくれると嬉しいんだが…。





 明朝、クローヌの館まで飛ぶ。
ゴッツさんに資材をしこたま渡した後、館の道を下りていき、街全貌が見えるところまで来る。

「今の街の風情は残したまま、街と隣接するように公共浴場を作ろうと思うんだけど。」
「街の風情?あの街に風情があるとは思えんが、まぁニノマエさんが言うんだ、何か目的があるんだろ。」
「お風呂に入って、寂れた街を歩くってのに趣を感じるんだ。だから、今回作る公共浴場も外見は同じような色にしてもらいたいんだ。」
「そりゃ、その方が簡単だから俺たちにとっては良いんだけど、公共浴場ってニノマエさんのところの風呂のように、男風呂と女風呂を作るだけだろ?」
「いや、お風呂というか浴槽はそれでいい。だが、他にもいろんなお風呂を作りたいんだよ。」
「例えば?」
「岩盤浴と言って、床にお湯を流してそこに寝転がってるだけのものとか、サウナ…あ、蒸し風呂とか、下から気泡がでるジャグジーとか。」
「おいおい、風呂にもそんなに種類があるのか?」
「あぁ。他にも水着を着れば誰でも入ることができる少し深めの浴槽…、プールみたいなものも作る。
 それで、公共浴場の前には、前回お願いしてた遊戯を設置するんだ。
 そうすると家族で遊びに来てくれるだろ。」
「そこに酒場もあるといいんだがな…。」
「風呂に入った後で食事や酒を飲む場所も作る。
 そこには、街のヒトにも手伝ってもらって公共浴場を運営していくんだ。」
「ほう、街の奴らも働く場所ができるのか?」
「あぁ。そうすれば宿泊するヒトも増えるだろ?街の宿屋も食堂も儲かる。
 それに、もう一つ、ここで作りたいものがあるんだよ。」
「そりゃ、何だ?」
「ゴッツさんの仲間で手先が器用な人…4人くらい居ないか?そのヒト達でメリアドール様やデイートリヒが付けているアクセを作って欲しいんだよ。これが試作品だ。」

ゴッツさんが手に取ってまじまじと見る。

「ほう…、こりゃ、手の込んだ細工だな。で、誰が作ったんだ?」
「自分だけど…。」
「は?そりゃ、ニノマエさんが作れば良いじゃないか。」
「そうしたいけど、時間がない。だから任せたいんだよ。」
「そうか…。じゃ、かかぁに聞いてみるか。」

そう話しながら、街中を散策する。
どこも営業しているのか分からないような状況ではあるが、ゴッツさんと弟子の気配りで、商業ギルドに街の相談役4名と婦人会の代表2名と商業ギルドの職員に同席してもらう。

 自己紹介をし、この地を管理することになったこと、そのお目付け役としてアドフォード家からメリアドール様が来られていることを話すと、皆硬直してる…、流石王家の親族、こういった事で利用するならどんどんしたいものだ。
 現状を相談役から聞く。
やはり寂れている。なら、という事で街の復興のため公共浴場を作る計画、そして出資は“繚乱”がする事。
勿論街のヒトにも働いてもらうことを言うと、皆、半信半疑だ。
では、という事で、ディートリヒに白金貨を出してもらい、本当にこの地に公共施設を作る意思を伝えると信じてくれた。やはり現ナマは強い!
 相談役にはまず工事に携わる人選をお願いし、婦人会には食事の提供と施設完成後の食堂の運営、ギルドには町の食事処、宿屋への説明と改修予算に関する無利子の貸付制度の設立などを検討、土木工事の専門家が居ないって言うので、界隈の整備と上下水道の整備をしてもらう業者を連れてくることを了承してもらった。
 念のため、この計画は商業ギルドで進捗管理してもらうことを了承してもらう。

 その後ゴッツさんの奥さんと会い、細工のできる人選をお願いすると、女で良いのかと聞かれたので、女性目線で作ってもらった方が良いモノができる事を伝えると、近所で職にあぶれた女性がいるので、その者に優先的にやらせたいと言ってた。
 取り敢えずということで、ゴッツさんにアクセを作る道具を5セット作ってもらうと同時に、必要な金属類を置いてきた。出てくる金属を見て、皆唖然としている。
できれば、販売もお願いしたいことを伝えると、そりゃ喜んでた。

 よし、ここまでは順調。次はノーオに行き、ザックさんのところの土木班にこの地に来てもらい、街の整備をお願いしよう。

 3人でノーオまで飛ぶことにした。
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