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第十一章
11-25 心理的物件です…か?
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「ディートリヒはダンジョンに行かなくても良いのか?」
「私はカズ様の傍に控えることが仕事です。
依頼されれば行きますが、それ以外はずっとお傍におります。」
メリアさん、ナズナ、ベリル、ニコル、カレンはダンジョン19階層に行った。
レルネさんは、スピネル、ミリー、ローザさん、エリアナさんで研究室に籠り錬成を行うとの事。
習うより慣れろというのが、レルネさんのポリシーのようだ。
ディートリヒと二人でカルムさんの店に行く。
ボディーガードさんもすぐに奥に通してくれる。顔パスになってしまった…。
「ニノマエ様、お待ち申し上げておりましたよ。」
「すまないね。いろいろバタバタしててね。」
「それで、あの二人を購入されるという事でよろしいのですか?」
「あぁ。そのつもりで、ここに来た。それと、家事とかメイドの仕事ができる女性奴隷は居る?」
「そうですね…、何人ほどご使用になられますか?」
「2名で十分だ。」
「では、数人連れてきます。」
カルムさんが部屋を出ていく。
「ディートリヒ、ヒトの本質を引き出すスキルってあるのかな?」
「そういったスキルは無いと思います。」
「それじゃ、一人目を俺が決めるから、二人目を君が選んで欲しい。」
「それは難しいです。それに前回の事もありますので。」
「あれは、容姿だけを見ていたからね。今回の着眼点は何だと思う?」
「全身の線と話術、それと笑顔でしょうか。」
「うん。大正解だよ。」
ディートリヒの頭を撫でてあげる。
すごく可愛い笑顔になる。
「ディートリヒ、今の笑顔を忘れないで。買おうとする奴隷さんもいつかはディートリヒの今の笑顔になれるように考えながら話をすると、奴隷さんの本質も見えてくると思う。
多分、今は卑屈になっているか、あわよくばカルムさんの店から買ってもらいたい一心でいろいろと言ってくるとは思うけど、それを真に受けるんじゃなく、違う観点から見てみると良いよ。」
「カズ様、凄く難しい問題ですね。でも、やってみます。」
程なくして、カルムさんが3人の女性を連れてきた。
「お待たせしました。ニノマエ様のお眼鏡に留まるものはこれくらいですね。」
「皆、美人だけど、家事には必要は無いのではないかい?」
「いえいえ。ニノマエ様の店にいらっしゃる方々は、それぞれお美しいので。」
「で、みんな金銭奴隷という事でいいのか?」
「はい。それで問題はございません。」
一人目の子に話しかける。
「自分はニノマエ ハジメという冒険者で商人だ。
今家で家事を手伝ってくれる女性を探していてね。
もし君が家に来てくれるとしたら、何ができる?」
「はい。私は奴隷になる前は商人の娘でしたので、一通りの家事はできます。
それと算術も少したしなんでおりますので、店回りの事もできると思います。」
「そうか…、家事一通りって、例えばどんな事?」
「朝起き、朝食を作り、掃除をし、洗濯をします。昼食を作り、夕食の買い物もして夕食を作ります。」
及第点だ。当たり障りのない回答をしているが、おそらく彼女の中には掃除の大切さや食事の栄養などといった観点は無い。単に作れば良いという事しか考えていない。
「次の子からは、隣にいるディートリヒが質問するからね。」
「コホン。では、次の方から順に聞きますね。あなた方の特技は何ですか?」
「え?わ、私ですか…。私は…家事です…。」
「私は子守りです…。」
特技に家事って…、唐突な質問だったから慌てたかな?
「次にお三方に聞きます。奴隷を解放されるとしたら、何をしたいですか。」
「私は、街を歩きたいです。」
「私はいろいろな事を学びたいです。」
「私はいろんな所へ行ってみたいです。」
「最後の質問です。もしここに居るニノマエ社長が夜を共にしたいと仰られたら如何しますか。」
「え、わ、私は…、無理です。」
「私は、ディートリヒ様にご相談いたします。」
「私に選択権はございません…。」
「はい。ありがとうございました。カルムさん、一度皆を部屋に戻ってもらっていいかい?」
「分かりました。では、皆、自分の部屋に戻って。」
彼女たちが戻っていく。
カルムさんが興味深々で聞いてきた。
「ニノマエ様、今の質問は一体どういう事でしょうか。」
「多分、ディートリヒが答えてくれるよ。ね。」
「分かりました。
先ず、カズ様が一人目に当たり障りの無い質問をしましたので、他の2人は同じ質問が来ると思い回答を準備していたと思います。ですが意に反し、違う質問が来たので2人目の子が支離滅裂な回答をしてしまいました。それを見て、三番目の子が自分の経験をもとに回答したのでしょう。
次の質問は奴隷解放という将来的な事を聞きました。
一人目は街を歩きたいと、でも先の回答では買い物に行くと言ってましたので、脈絡はあまり無く、自分の思ったことを述べる女性であると感じました。
二人目は学びたいという意思があり、おそらくどこかの学問所で親さんの影響で仕送りが止まってしまい、家族の煽りもあり、自身も金銭奴隷になったのではないかと…。
そして三番目の子は子守りという経験から、おそらくどこかの家で雇われた奴隷の間に生まれた子であり、その親の金銭を支払うために奴隷となったのではと察しました。」
「ほう…、そこまで見抜かれているのですね。洞察力が素晴らしいですね。
ほぼ当たりですね。ただ一点、おそらく最初に落とすであろう一番目の奴隷は商店の娘ではなく、普通の子です。少し妄想癖があり、なかなか大変な子なんですよ…。」
「そこまでは読めなかったな。でも、ディートリヒ凄いね。3人中2人を当てるとは恐れ入ったよ。」
「カズ様にそのような事を言われますと、嬉しいです。」
あかん、クネクネし始めた。
「で、だれを買うんだい?」
「誰もおりません。」
「お!ディーさん、それは何故だい?てっきり2番目の子を選ぶと思ってたよ。」
「学ぶことを先に出してしまうと、家事ができませんし、学問はカズ様の思考と違います。」
「そう言う事か…。流石ディートリヒだ。感服いたしました。」
俺はディートリヒに向かって頭を下げる。
それを見てカルムさんが微笑んでいる。
「ディートリヒ様、良いご主人様に買われましたね…。」
「はい!自慢の伴侶です!」
三人で笑う。
でも、メイドさん兼下着の販売員を買わないといけないから、カルムさんに頼んで別棟を見せてもらう。
ほら、ちゃんと居るじゃないか。
きちんと受け答えが出来て、奴隷という身分に対して卑屈にもならず前向きな子が。
それも元冒険者のリーダーだよ。聞けば依頼に失敗し続け、かつ仲間にも裏切られ、一人で借金を抱えてしまったんだと…。一体どんなパーティーなんだ?
もう一人は、生粋のメイドさん。
前に働いていた貴族が没落したのは良いが、貴族の借金のかたに入れられたとか…。
働いているヒトにまで被害が及ぶのかと聞けば、普通の借金であれば雇用者にまでは至らないが、額が額なだけに…、と言葉を濁らせる。
彼女を買うことはしても、貴族を助けることはしないと了承させた。
しめて金貨20枚…。
どれだけの借金なんだろう…、と思うが、余計な詮索はしないようにしておく。
さて、今日のメインイベントだ。
「見た所親子のようだが、自分が君たちを買うことになるが、それでいいか?」
「はい。よろしくお願いします。」
母親の方が言葉を発する。
「詳しい話は購入した後に話してくれればいいが、奴隷紋を付ける際、普段の契約のほかにいくつか守ってもらう事があるが良いかい?」
「はい。構いません。」
「君たちのマナはヒトよりも多い。そのため、普通の仕事というよりも錬成魔法を使った業務に携わってもらう事となる。その際、自分の店で学んだ魔法やスキルなどは口外できない。勿論筆談などの文字による情報提供も不可能だ。さらにそれを破ろうとすると、奴隷紋の影響で苦痛や声が出なくなることもある。それでも良いか。」
「はい。構いません。」
「自分が購入した段階で、君たちは昔の関係者と断ち切ることとなる。
万が一、そのようなモノが接してきたら、正直に話してくれ。これを守らないと君たちの命も危ないと思ってくれ。」
「はい。かしこまりました。」
「それじゃ、ケガをした部分を治すから、目を閉じて欲しい。」
魔法をかけ、彼女たちを少し休ませる。
「カルムさん、彼女たちが回復したら、今日にでも連れて帰るよ。」
「分かりました。では、先ほどの部屋で待ちましょう。」
応接室でカルムさんに親子の奴隷の金額を払う。金貨3枚…、やはり胡散臭い…。
「なぁ、カルムさん、もし誰かがこの奴隷を買い戻すとしたらいくらになるんだ?」
「それは、ニノマエ様の“ヒーレス”の値段を加えて買い戻されるんでしょう。
なので、治療代が一人白金貨1枚ですから2人で白金貨2枚と金貨3枚ですね。」
「そうなるよな…。
さぁ、先様はどう出るかな?」
4人に服を着替えさせ、家路につく。
期待あふれる女性が2名と周囲に気を配りながら歩く親子は対照的だった。
「私はカズ様の傍に控えることが仕事です。
依頼されれば行きますが、それ以外はずっとお傍におります。」
メリアさん、ナズナ、ベリル、ニコル、カレンはダンジョン19階層に行った。
レルネさんは、スピネル、ミリー、ローザさん、エリアナさんで研究室に籠り錬成を行うとの事。
習うより慣れろというのが、レルネさんのポリシーのようだ。
ディートリヒと二人でカルムさんの店に行く。
ボディーガードさんもすぐに奥に通してくれる。顔パスになってしまった…。
「ニノマエ様、お待ち申し上げておりましたよ。」
「すまないね。いろいろバタバタしててね。」
「それで、あの二人を購入されるという事でよろしいのですか?」
「あぁ。そのつもりで、ここに来た。それと、家事とかメイドの仕事ができる女性奴隷は居る?」
「そうですね…、何人ほどご使用になられますか?」
「2名で十分だ。」
「では、数人連れてきます。」
カルムさんが部屋を出ていく。
「ディートリヒ、ヒトの本質を引き出すスキルってあるのかな?」
「そういったスキルは無いと思います。」
「それじゃ、一人目を俺が決めるから、二人目を君が選んで欲しい。」
「それは難しいです。それに前回の事もありますので。」
「あれは、容姿だけを見ていたからね。今回の着眼点は何だと思う?」
「全身の線と話術、それと笑顔でしょうか。」
「うん。大正解だよ。」
ディートリヒの頭を撫でてあげる。
すごく可愛い笑顔になる。
「ディートリヒ、今の笑顔を忘れないで。買おうとする奴隷さんもいつかはディートリヒの今の笑顔になれるように考えながら話をすると、奴隷さんの本質も見えてくると思う。
多分、今は卑屈になっているか、あわよくばカルムさんの店から買ってもらいたい一心でいろいろと言ってくるとは思うけど、それを真に受けるんじゃなく、違う観点から見てみると良いよ。」
「カズ様、凄く難しい問題ですね。でも、やってみます。」
程なくして、カルムさんが3人の女性を連れてきた。
「お待たせしました。ニノマエ様のお眼鏡に留まるものはこれくらいですね。」
「皆、美人だけど、家事には必要は無いのではないかい?」
「いえいえ。ニノマエ様の店にいらっしゃる方々は、それぞれお美しいので。」
「で、みんな金銭奴隷という事でいいのか?」
「はい。それで問題はございません。」
一人目の子に話しかける。
「自分はニノマエ ハジメという冒険者で商人だ。
今家で家事を手伝ってくれる女性を探していてね。
もし君が家に来てくれるとしたら、何ができる?」
「はい。私は奴隷になる前は商人の娘でしたので、一通りの家事はできます。
それと算術も少したしなんでおりますので、店回りの事もできると思います。」
「そうか…、家事一通りって、例えばどんな事?」
「朝起き、朝食を作り、掃除をし、洗濯をします。昼食を作り、夕食の買い物もして夕食を作ります。」
及第点だ。当たり障りのない回答をしているが、おそらく彼女の中には掃除の大切さや食事の栄養などといった観点は無い。単に作れば良いという事しか考えていない。
「次の子からは、隣にいるディートリヒが質問するからね。」
「コホン。では、次の方から順に聞きますね。あなた方の特技は何ですか?」
「え?わ、私ですか…。私は…家事です…。」
「私は子守りです…。」
特技に家事って…、唐突な質問だったから慌てたかな?
「次にお三方に聞きます。奴隷を解放されるとしたら、何をしたいですか。」
「私は、街を歩きたいです。」
「私はいろいろな事を学びたいです。」
「私はいろんな所へ行ってみたいです。」
「最後の質問です。もしここに居るニノマエ社長が夜を共にしたいと仰られたら如何しますか。」
「え、わ、私は…、無理です。」
「私は、ディートリヒ様にご相談いたします。」
「私に選択権はございません…。」
「はい。ありがとうございました。カルムさん、一度皆を部屋に戻ってもらっていいかい?」
「分かりました。では、皆、自分の部屋に戻って。」
彼女たちが戻っていく。
カルムさんが興味深々で聞いてきた。
「ニノマエ様、今の質問は一体どういう事でしょうか。」
「多分、ディートリヒが答えてくれるよ。ね。」
「分かりました。
先ず、カズ様が一人目に当たり障りの無い質問をしましたので、他の2人は同じ質問が来ると思い回答を準備していたと思います。ですが意に反し、違う質問が来たので2人目の子が支離滅裂な回答をしてしまいました。それを見て、三番目の子が自分の経験をもとに回答したのでしょう。
次の質問は奴隷解放という将来的な事を聞きました。
一人目は街を歩きたいと、でも先の回答では買い物に行くと言ってましたので、脈絡はあまり無く、自分の思ったことを述べる女性であると感じました。
二人目は学びたいという意思があり、おそらくどこかの学問所で親さんの影響で仕送りが止まってしまい、家族の煽りもあり、自身も金銭奴隷になったのではないかと…。
そして三番目の子は子守りという経験から、おそらくどこかの家で雇われた奴隷の間に生まれた子であり、その親の金銭を支払うために奴隷となったのではと察しました。」
「ほう…、そこまで見抜かれているのですね。洞察力が素晴らしいですね。
ほぼ当たりですね。ただ一点、おそらく最初に落とすであろう一番目の奴隷は商店の娘ではなく、普通の子です。少し妄想癖があり、なかなか大変な子なんですよ…。」
「そこまでは読めなかったな。でも、ディートリヒ凄いね。3人中2人を当てるとは恐れ入ったよ。」
「カズ様にそのような事を言われますと、嬉しいです。」
あかん、クネクネし始めた。
「で、だれを買うんだい?」
「誰もおりません。」
「お!ディーさん、それは何故だい?てっきり2番目の子を選ぶと思ってたよ。」
「学ぶことを先に出してしまうと、家事ができませんし、学問はカズ様の思考と違います。」
「そう言う事か…。流石ディートリヒだ。感服いたしました。」
俺はディートリヒに向かって頭を下げる。
それを見てカルムさんが微笑んでいる。
「ディートリヒ様、良いご主人様に買われましたね…。」
「はい!自慢の伴侶です!」
三人で笑う。
でも、メイドさん兼下着の販売員を買わないといけないから、カルムさんに頼んで別棟を見せてもらう。
ほら、ちゃんと居るじゃないか。
きちんと受け答えが出来て、奴隷という身分に対して卑屈にもならず前向きな子が。
それも元冒険者のリーダーだよ。聞けば依頼に失敗し続け、かつ仲間にも裏切られ、一人で借金を抱えてしまったんだと…。一体どんなパーティーなんだ?
もう一人は、生粋のメイドさん。
前に働いていた貴族が没落したのは良いが、貴族の借金のかたに入れられたとか…。
働いているヒトにまで被害が及ぶのかと聞けば、普通の借金であれば雇用者にまでは至らないが、額が額なだけに…、と言葉を濁らせる。
彼女を買うことはしても、貴族を助けることはしないと了承させた。
しめて金貨20枚…。
どれだけの借金なんだろう…、と思うが、余計な詮索はしないようにしておく。
さて、今日のメインイベントだ。
「見た所親子のようだが、自分が君たちを買うことになるが、それでいいか?」
「はい。よろしくお願いします。」
母親の方が言葉を発する。
「詳しい話は購入した後に話してくれればいいが、奴隷紋を付ける際、普段の契約のほかにいくつか守ってもらう事があるが良いかい?」
「はい。構いません。」
「君たちのマナはヒトよりも多い。そのため、普通の仕事というよりも錬成魔法を使った業務に携わってもらう事となる。その際、自分の店で学んだ魔法やスキルなどは口外できない。勿論筆談などの文字による情報提供も不可能だ。さらにそれを破ろうとすると、奴隷紋の影響で苦痛や声が出なくなることもある。それでも良いか。」
「はい。構いません。」
「自分が購入した段階で、君たちは昔の関係者と断ち切ることとなる。
万が一、そのようなモノが接してきたら、正直に話してくれ。これを守らないと君たちの命も危ないと思ってくれ。」
「はい。かしこまりました。」
「それじゃ、ケガをした部分を治すから、目を閉じて欲しい。」
魔法をかけ、彼女たちを少し休ませる。
「カルムさん、彼女たちが回復したら、今日にでも連れて帰るよ。」
「分かりました。では、先ほどの部屋で待ちましょう。」
応接室でカルムさんに親子の奴隷の金額を払う。金貨3枚…、やはり胡散臭い…。
「なぁ、カルムさん、もし誰かがこの奴隷を買い戻すとしたらいくらになるんだ?」
「それは、ニノマエ様の“ヒーレス”の値段を加えて買い戻されるんでしょう。
なので、治療代が一人白金貨1枚ですから2人で白金貨2枚と金貨3枚ですね。」
「そうなるよな…。
さぁ、先様はどう出るかな?」
4人に服を着替えさせ、家路につく。
期待あふれる女性が2名と周囲に気を配りながら歩く親子は対照的だった。
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